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元ハマっ子が海なし県移住を真面目に検討する。

個人の主観からくる偏った表現が全体的に散見されますが、なにを否定しているわけでもない旨、お含み置きください。

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先日、海なし県居住が3年目を迎えた。転勤を言い渡された際は時期的に色々あって泣いて抵抗したのだが、住めば都とはよく言ったもので、今じゃすっかり「首都圏なんて無理。半端な近郊都市よりこっちの方が絶対いい」と思っている。なお、“半端な近郊都市”には生まれ育った横浜も含まれる。

私だって24歳での転勤さえなければ一生横浜に住むと信じて疑わなかった。両親ともに首都圏育ちなこともあり、「田舎(地方)なんて住めない」と本気で思っていた。でも転勤生活も10年が過ぎ、すっかりハマっ子とは自称できなくなった今、横浜の実家に帰るたび感じるのは「人が多いことのストレス」である。どこもかしこも人だらけ。もう毎朝満員電車に乗る生活なんてとても耐えられないだろう。「みんなよくやってるな」と本気で思う。

住んでみれば分かるが、地方と言ったって県庁所在地レベルであれば生活の面で困ることは全くない。バスだって普通に通っているしデパートだってある。娯楽はまぁ少ないかもしれないけど、それだってそもそも毎日遊んでいるわけでもない。週末リフレッシュという意味では、渋滞を我慢してショッピングモールに出掛けるよりは県内の自然豊かな場所に出かけた方が良い。横浜に住んでいたら足を伸ばせて鎌倉か江ノ島か…箱根や熱海は遠いし混んでるし、あれは“自然”じゃない。都内に出たって今じゃどのグルメも似たり寄ったりで、まともな環境とサービスと食事内容を求めればまぁまぁの出費は必須だ。

いい、わかってる。それが都市の楽しさだから。でもそれって一生必要だろうか?

いま住んでいる県の1番良いところは「豊富な温泉」である。都内で温泉といえば「スーパー銭湯・岩盤浴」になるが、混んでるし高いし、何よりお湯からプールのような塩素のにおいがする。こっちは1,000円以下で行ける立派な源泉掛け流しの銭湯がそこかしこにある。確かに女子向けの最新化粧品を揃えた鏡台スペースはないが、ちゃんと最近流行りのサウナを完備している所も多い。安ければ500円しない入湯料なので、硫黄の香り立ち上る良質な銭湯通いはもはや日常である。しかもほぼ絶対空いている。洗い場を探して立ち尽くすということはない。そして週末リフレッシュしたくなれば、中心地から1時間も車を走らせれば緑豊かなワイナリーやさわやかな高原に到着する。当然人は少ない。

食の面でも全く不足はないどころか、生鮮食品は首都圏のスーパーより確実に充実している。農協の直売所を利用すれば、誇張抜きで「毎日がオイシックス」である。しかも安い。海なし県なので鮮魚はちょっと残念だが、以前住んでいた静岡・三重の鮮魚は本当に素晴らしかった。そして、最近は若い世代がおしゃれで本格的なカフェやカレーショップを開いたり、地元の食材を生かしたイタリアンを展開していたりと食事情もかなり変わりつつある。美味しいパン屋さんはふんだんにあるし、梅雨が明ければ桃や葡萄など豊かな実りの季節を迎える。繰り返すが、首都圏で購入するより新鮮で安い。桃は道端でザルに一山400円くらいで売っている。最近は友人や家族に旬のとうもろこしを送りまくっている。まぁまぁ詰め込まないと配送料の方が高くなってしまうくらい安い。そして信じられないくらい甘くて美味しい。ウーバーイーツはないが、別に必要ない。

衣食住でいうところの「食・住」についてはお分かりいただけたかと思う。「住」の要である家賃相場については、言うまでもないが首都圏の「足元にも及ばない」という表現をあえて使う。以前東京23区内・築10年程度・駅から徒歩20分弱・約30㎡の物件に12万円弱で住んでいたが、今は築5年程度・駅から徒歩10分・約40㎡の物件にほぼ半分の家賃で住んでいる。深夜に遠くから電車が走る音が聞こえるが、それ以外は本当に静かだ。窓の外には美しい山々が広がり、四季折々の表情を見せる。標高も高いので梅雨時のジメッとした感じがそこまでない。

「衣」については・・・ユニクロもイオンモールもちゃんとあるから大丈夫。なんの問題もない。むしろ最先端のファッション情報が目に入らないので、頑張って服に投資する必要がなくなる。

もちろん都会に住み続けている人しか分からない“最新”のファッションに身を包み、東京のタワマンに住んで夜景を見下ろす生活がステータスという世界があるのも分かるが、毎日『東京カレンダー』的生活を送りたいのでなければ、別に東京のど真ん中に頑張って住む必要もないのではないかと思う。私にとっては首都圏近郊で「快適」を得るためのコストがもはや高すぎるし、日常の豊かさは地方都市の生活に軍配が上がる。東京へは趣味の歌舞伎や落語を楽しむために月に1〜2回足を伸ばせれば、それで十分だ。

この1年で人間が密集することのリスクが明らかになった。地方では、都市部の方々が想像もできないくらい「ピリピリ感」がない。そしてそれが人間の普通の姿だと私は思う。「豊かさ」とは、みんなが東京とその近郊に住むことではないはずだ。オリンピックが決まって以降東京の下町もどんどん再開発が進み、多くは細長いマンションになっていると聞く。そうするとまた電車も道路も商業施設も混む。そんなに一極集中を進めて良いのだろうか。就労事情などで地方移住がそう簡単に叶わないことも想像するが、国や企業が一丸となって真剣にUターン施策を打つ時が来ているのではないかと強く感じている。

お読みいただきありがとうございました。今日が良い日でありますように。