「おいしいボタニカル・アート」展に行ってきた
広島県立美術館の「おいしいボタニカル・アート」展に行ってきた。
この企画展はコンセプトがとても面白い。絵画や食器などを「植物」というくくりで集め、英国の食と芸術にまつわる歴史や文化を紹介しているのだ。
美術鑑賞としてだけでなく、植物図鑑を眺めるような気分で精密な植物画を眺めることもできるし、英国の食文化やその歴史背景も学べるのだ。ひとつの企画展でここまでいろいろな要素が味わえる企画展はなかなかないだろう。
内容は英国キュー王立植物園が所有する野菜や果物、ハーブ、スパイスを細密に描いた植物画の展示を中心に、ウエッジウッドなどの英国を代表する陶磁器の展示、19世紀英国のレシピ本の展示など盛りだくさんだ。
私は植物をモチーフにしたテキスタイルデザインが好きなうえに、食文化や歴史雑学的なものがとても好きだ。
学生時代は「ヴィクトリア朝の人々の暮らし」や「英国の紅茶文化の成り立ち」といったような社会科資料集のコラムページを授業中に読みふけっていたほどだ。
個人的な感想だけれども、そういった文化史が好きな方にはかなり刺さる企画展だと思う。もちろん、私も刺さった。
食文化や文化史をテーマにした企画展というものは珍しく、めいっぱい満喫した。
リンゴの絵画がたくさん展示されているコーナーでは、リンゴがヨーロッパで身近な果物であると同時に文学や絵画によく登場することが解説されており、社会科資料集のコラムを実際に目で見ているようでとても興味深かった。
特に19世紀英国で実際に使われていたレシピ本の展示や当時のテーブルセッティングの再現コーナーは見ごたえがあった。
ビートン夫人の家政読本というレシピ本は当時の人々の家事マニュアルだったらしい。レシピからテーブルセッティングなどのおもてなしのマナー、さらには冠婚葬祭のマナーや家庭の医学まで幅広いジャンルが掲載されている。辞書くらいの厚みがあるけれど、ところどころに挿絵もある。
挿絵と一文の抜粋が展示されてあったので撮影。
企画展のグッズ販売所では今回も図録を購入した。
企画展ではほぼ毎回図録を購入している。企画展のすばらしさを思い返して楽しむという目的が大きいが、今回は食文化や文化史というピンポイントに自分の好きなジャンルの社会科資料集としても楽しめる。家に帰ってさっそく読み返したし、この先何度も読み返したり、資料として役立てることだろう。
今回の企画展も満足度が高く、行ってよかった。
私のような文化史好きにはたまらない企画展なので、学生時代に世界史の資料集のコラムを読むのが好きだった人にはぜひおすすめしたいと思う。
広島県立美術館では11月26日まで開催しているので気になる方はぜひ。