見出し画像

【エッセイ】もう一度だけ会いたい

アナタは、もう一度だけ会いたい人はいますか?

初恋の人だったり
優しかった おじいちゃん、おばあちゃんなのかもしれませんね

ワタシは…いません

ワタシはね
人が怖かったりするから…

だからワタシは人間ではなく
今は天国にいる愛犬や
泣く泣く別れた愛犬

それと…もう一人って言うのか…
一匹って言うのか…居るんですよね


アレに会ったのは 高校 1年の冬だったと思います
風邪をこじらせて3日間ほど学校を休みました
その時の出来事です

当時ワタシは、2階の部屋に妹と一緒に寝ていました
2日目の夜には熱が下がり
昼間 寝ている為なかなか寝付けずにいました

たしかあれは夜中2時過ぎのことだったと思います

階段を登ってくる音がするんです

…ギシッ

…ギシッ

とってもゆっくり
一歩一歩 確認するかのように
ゆっくりと…


…ギシッ

…ギシッ


階段のなかほどまで近づいて来ると
なぜか金縛りにあいました

階段がわの引き扉の方を向いて
目は開けたまま…

ワタシは、父が心配して様子を見に来たんだと思っていました

体重が重い人が階段を登ると
軋(きし)む音が大きくなるでしょ?
あんな感じに、ちょっと重い感じの音がしたんですよ

家族の中で一番 体重があるのが父だったので [お父さん優しいな]って思ってました


…ギシッ

…ギシッ


扉の前で、しばらく立ち止まったまま、なかなか扉を ひらかない…
でも扉の向こうにいる気配はするんです

[なんで すぐ開けないんだろう…]
そう思っていたら


すーっ


扉が ゆっくり ゆっくり ひらかれました

ですが20センチほどで止まりました

そこに居た父は……
闇より真っ黒で
とってもデカくて
まるで真っ黒い壁のようでした

目はキツネのように細く吊り上がり
黄色く輝いているのです
口は 無かったように思います

ワタシは、なぜか ちっとも怖くなかったんですよね
かなりビビりのワタシなのに…

真っ黒いソレを見ても
父だと ずっと信じきっていたんです

すると [大丈夫か?]って言ってきたんです

口が無いから、ワタシの頭に直接言ってくるような
声じゃなくて文字だけのイメージ画のような
そんな感じだったと思います

ワタシは 金縛りにあったままなので
[大丈夫だよ!ありがとう]って言いたかったけど声が出ないんです

出る言葉は「カッ」とか「はっ」とか掠(かす)れた声しか出なくて
だから目で念じるようにして言いました

するとソレは
ゆっくり頷(うなず)き
扉を ゆっくり閉め
階段を降りて行きました

すると金縛りはとけ
あんなに寝付けなかったのに
すぐ眠りにつけたんですよね

翌朝、父に「夜中、様子を見に来てくれたんでしょ?」と尋(たず)ねました

すると父は「行ってないよ。酔っ払って寝てた」って言うんですよ

なんど聞いてもそう言うし…
母や祖母に聞いても「2階には行ってない」って言うし…

その時、急に怖くなってきたんです
[ワタシが見たアレはなんだったんだ]と…

でも、その出来事が怖かっただけでアレ自体は不思議と怖くなかったんですよね

アレが現れたのも金縛りも 
その一度っきりです


もう一度だけ会えるならアレに会って、お礼を言いたい

そして アレに尋ねたい
「アナタは、なんですか!?」と…

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?