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【詩小説】青空とイワシ雲

朝晩の風が少し涼やかになってきた初秋

スーツが汚れることも気にせず
原っぱに寝転ぶ


空を見上げりゃ
青空とイワシ雲


ぼーっと雲が流れゆくのを
眺めていた


広い広い
空の大海原(おおうなばら)

一匹のイワシが
パシャンっと跳ね
水しぶきを あげた


「どうしたの??
皆んなといるのが
ちょっと、しんどくなったのかい??」

空は イワシに優しく
そう言った


イワシは何も言わずに
黙って、うつむいていた

空は イワシを抱きしめながら


「そんな時もあるさね」
    と優しく、そう言った


空を見上げりゃ
青空とイワシ雲


皆(みな)と居ることで
守られてはいる

皆(みな)が集まることで
ルールが生まれる

皆(みな)と居られることに
喜びを感じていたんだ

いつでも一緒
どこでも一緒…

いつしか、それを窮屈に感じるようになった…

皆(みな)に合わせられない自分は
オカシイ奴なのか…

自分とは、何なのか…


空を見上げりゃ
青空とイワシ雲


つーっと涙も雲も流れゆく


イワシは、青空の海を 

何からも縛られず

何も気にすることなく

自由に 生き生きと泳ぎ

やがて、皆(みな)の元に戻って行った


ヨイショっ!と
少し大きめに言いながら起き上がり
スーツについた草を払(はら)った

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