見出し画像

プログラマが司法書士試験に合格した(備忘録)


令和5年度の司法書士試験の筆記試験に合格しました。法学部出身ではありませんが、運がいいことに、受験回数は1回、勉強期間1年2か月(2022年5月~2023年6月)、総勉強時間は1300時間から1400時間程です。
社会人で、仕事の予定が見通せなかったので独学でやっていました。
この試験を受験するにあたって、意識したことを備忘録としてまとめておきます。
とても長い記事になりました。よかったらいいねとコメント、質問等をお願いします。
※思い出しながら書いているので、修正する可能性あり


司法書士試験の受験勉強を開始するまで

自分は普段、IT企業でシステムの実装やサーバーの保守をやっています。学生時代もプログラミングを主体とした工学系の勉強をしていました。法律に関しては薄く興味がありましたが、大変そうで、勉強する気は起きませんでした。ですが、社会人になってひょんなことから裁判傍聴をするようになり、高い位置で法律を勉強をしてみたいと思うようになり、司法書士試験に挑戦することになりました。

受験勉強をするにあたって

裁判傍聴をきっかけに法律をもっと知りたいとやる気だけは120%ありましたが、司法書士試験に求められる知識量と、普通にある残業に頭を抱えていました。そもそも法律とは何なのか全く知りません。そこで知識はふわふわしていてもいいので、全体像の把握に努めつつ、徐々に知識を濃くしていく流れにしていくととしました。

使用教材と勉強スケジュールについて

最終的な使用教材と勉強スケジュールと記載します。
独学するうえでオートマの評判が良かったので、それを軸としました。あとは勉強していくうえで必要になると感じた部分について補えるように教材を買い足して言った形です。

使用テキスト

仕事の業務量、体力面等を考慮して、平日は1H,休日は8Hを目安として、週21H=1日平均3Hを勉強時間として設定しました。これを1年2か月続けたので勉強時間は大体1300Hになるかと思います。1Hだと記述は1問解いただけで終わってしまうので、平日は択一に絞り、休日に記述をしっかりやることとしました。

勉強スケジュール

基本方針、避けた勉強法など

ネットや学習塾の情報を漁れば、様々な勉強方法が転がっています。自分は失敗談を中心に勉強の基本方針を固めていきました。個人的な意見も含めて記載していきます。

■一番初めに過去問を見る

試験勉強を行う前、一番最初に過去問を見ました。もちろん何にも解けません。でもここで民法と不登法、会社法と商登法で全体の8割ということを把握し、記述も登記の申請書を書く問題で形式は決まっていることを把握します。また択一は2つ正しいものが何かを、5つの肢から選ぶ形式が主体であることを把握し、すべての選択肢の判別できなくても、答えにたどり着けることを把握しました。このようにあらかじめ、問題形式を把握することで、これからの勉強の目的がより明確になったと感じます。

■テキストや問題集を変えない

司法書士試験の範囲はとても広く、使用する教材をころころ変えていくとその分、必要なインプットの量も増えてしまいます。正答率が伸びず、色々と考えてしまう時期もありますが、基本的にテキストを作成している方を全面的に信頼します。テキストや問題集が合う、合わないもありますが、まずは自分から合わせに行く気持ちでいきました。

■ノートを作成しない

書く作業は基本的に時間を多く消費します。せっかく塾の先生がまとめているものを再度まとめ直すのは、効率が悪いです。もうノートは出来上がっているとみていいでしょう。

■六法を使用しない

法律の勉強では六法を使用するイメージがありますが、効率を求めるのであれば使用しないほうが良いと思います。
六法は条文が書いてあるだけで、語句の意味とか、法律制定の意味とかが載っていないのでイメージがしづらく、知識として定着しないと思います。

また、1条ずつ素読する方もいますが、これでは試験範囲でないところも拾ってしまいますし、すべての章を均等に勉強していくことになります。しかし司法書士は登記を主にする仕事で、民法では物権とか担保物権、会社法では機関とか株式が重要です。重要なところを多く勉強するという点では無駄なところがあります。

さらに、そもそも法律の勉強は条文をすべて勉強すれば足りるわけでなく、条文と判例が組み合わさって構成されていますし、借地借家法といった別の法律も組み合わさっていきます。条文だけで満足してしまいますと点が取れませんし、判例は無限にあるため、結局のところテキストだけ読むのが一番効率が良いと考えます。

■無理に覚えようとしない

司法書士試験は量が膨大で、かつ高い正答率が求められます。気持ちが焦って暗記しようという気持ちが強くなってしまいますが、これでは疲れるだけでした。人間は意味のない情報は頭の中に入りづらく、記憶しづらいと言われています。なので、まずは理解に集中し、知識を柔らかくしてから、頭の中に入れる→暗記するというプロセスを踏み、ストレスを小さく勉強を行いました。

■条文の条数を覚えない

基本的に条文に書いてある第○○条と書いてある数は覚えてもあまり意味がありません。大事なのは中身なので、何が何条目に書いてあるかはあまり気にしないようにしました。どうせ改正で変わってしまいますし。ただし、登記を申請するうえで条数を記載しなければいけないことがあります。それは覚えましたが。

■復習を意識して入れる

試験範囲が膨大なため、テキストを先に進めることばかり考えていると、インプットから時間が空き、忘れてしまいます。一般的な資格試験であれば範囲が限られているため、テキスト読んだら問題集を解くという流れを繰り返していけば問題なかったのですが、この試験はテキストを読み終えるまで、かなりの時間がかかってしまうためです。なので、テキストが途中でも必ず毎日復習する時間をとりました。ただ復習の量も膨大になるため、まとめ本を活用して、せめて基本事項だけは忘れないようにすることを心掛けました。

■記述対策もちゃんとする

ネットの情報を見る中で、択一はめちゃめちゃできるのに記述があまりできなくて、不合格になるケースが一定数いることが分かってきました。そもそも択一で基準点を取るのも大変ですが、結局のところ、記述も基準点も取らないと合格にならないので、択一をやりつつ、記述もちゃんと牽制しておくこととしました。

■睡眠をしっかりとる

睡眠は試験勉強に限らず、すべての基本だと思います。
睡眠時間を削って、勉強することなど言語道断です。
たとえ、その日は徹夜して、たっぷり勉強できたとしても、翌日以降に響いて、プラマイゼロになります。
仕事の都合上、帰りがめっちゃ遅くなることもあります。そうなったら諦めて、さっさと寝ました。

テキストを読むしかない時期の勉強法(2022/5~2022/9)

ここからは勉強スケジュールについて、それぞれの時期について、その詳細を書いていくことにします。

まず、勉強を始めるうえで自分は法律について何も知りませんし、普段本や新聞を読む習慣もありません。そんなわけでハードルを下げて、行政書士の勉強から始めてみることにしました。
ただし、行政法はあまり個人的に面白くなく、逆に民法はある程度、興味を持てたので、思い切って、司法書士の勉強に切り替えることにしました。
ただ、まだ文章を読むことに抵抗感があり、初めはケータイ司法書士を利用して民法の勉強をすることにしました。
テキストを読む上で、一貫して大事にしていたことは、どうせ一発で覚えられないから、丁寧に読んでもしょうがないし、また何回も読むことにしよう。質より量と考えていたことでした。そのため、覚えるというよりは理解することを意識していきました。

ケータイ司法書士で民法はネットの力も借りて、理解することがある程度できました。しかし不登法に関しては、ネットに情報がなく理解することも厳しくなったため、おとなしくテキストで学習することにしました。以降はオートマで勉強することになります。

オートマテキストは非常にわかりやすく、自分にとって理解しやすい物でした。ただし、量が膨大なため、ハイペースで進めていかなければと思い、平日でも20~30P、休日は100~150Pを読んでいました。しんどいとか辛いとか考えずとにかく、1Pでも前に進むことだけ考えました。

途中もうどうしようもなく、疲労して、何も手につかない時期がありましたが、何とか2022年8月までにテキストを1周しました。

司法書士試験11科目の絡み

テキストを1周したため、試験科目の11科目の関連がつかめるようになりました。民法を軸に不登法や民訴系や供託があり、これらの勉強が関連科目の復習にもつながることを感じました。会社法と商登法の関係も同様です。憲法と刑法、司法書士法はあまり関連がなく、独立しているなと感じました。

ここで気になるようになってきたのが、一度読んだ論点の復習です。どこかで復習を挟まないとただただ忘れていってしまうと感じました。そのため、スマホで論点ごとにまとめられている過去問集でスキマ時間に確認したり、ケータイ司法書士で記憶を呼び起こしたりしました。なるべくインターバルが開かないように心掛けました。

2022年9月からは記述の勉強を開始しました。とにかく最初は何も分からないので、問題を見て、すぐ答えを見るようにして、記述の解き方の流れだけでも把握するようにしました。

問題集を主体にやる時期(2022/10~2022/12)

テキストを一周したわけなので、問題集を解きまくるフェーズになりました。問題集はでるとこ一問一答を使用していました。テキストを読んでいく中で、理解が簡単な個所や難しい箇所が分かれてくると思います。そういうのを問題集を解く中で把握し、理解がキツイところを重点的にテキストに返ることにしました。

初めは、問題集を1P目から順に解いていきましたが、途中で中だるみしてしまうなどがあり、ムラができてしまうと感じました。そこで解くページを乱数を使って、抽出し、同じ論点を長くやらないようにして飽きないようにしました。
個人的に解くページを乱数で抽出するのはいろいろなメリットがありました。飽きないことに加えて、問題集を速く回せるので、1週間で質は落ちますが、ほぼすべての科目と論点に触れることができました。また、順番に問題を解き続けることで答えを覚えてしまうということもないので、純粋な力がつきました。

ここまで、問題集を主体にやっている旨を記載しましたが、これと並行して、お昼休みには毎日過去問を解いていました。過去問.comからランダムに解くを選択し、一日10~15問を解いていました。

記述対策はオートマ記述式を使用していました。非常にわかりやすい本で、ひな形集もいらないのではないかと感じるほどでした。ただし、問題を解いていく中で、別紙を読んでいくうちに頭がぐちゃぐちゃになっていくことが課題として感じてきました。そこでリアリスティック記述式を利用し、整理する術を身に着けていくことにしました。リアリスティック記述式についている問題は解かず、ノウハウだけ拝借して、基本はオートマ記述式の問題を解いていました。

過去問を主体にやる時期(2023/1~2023/3)

問題集も回しまくっているため、問題集はほぼ解けるようになっていきました。ただし、過去問をやっていく中で、選択肢が長文だった時に正答率が低いことに気づき、長文対策のため、オートマ過去問を利用して、長文の問題にも慣れていくようにしました。またオートマ記述式は、組織再編の登記があまり載っていません。また回答の形式が最近のものに対応していない部分がありました。そのため、パーフェクト過去問の記述式で対応するようにしました。この時期にオートマひな形集も参照して、登記の網羅度をあげるようにしました。
ここでもやる問題はまず1周した後は、基本的に乱数で抽出しました。
記述にも慣れてきたので、解く問題数を増やすために、一旦、解く時間とか正しい文章は一旦置いといて、略して書いていました。(例えば原因日付は数字とひらがなだけで書くとか、添付書面も頭文字しか書かないとか、権利者義務者とかの記載も頭文字しか書かないとか)

総まとめの時期(2023/4~2023/6)

ここまでくると、問題集も過去問も記述式も大体解けるようになっていました。この時期では毎月市販の模試を解き、時間配分を意識したり(記述もちゃんとフルで書く)、問題集と過去問の知識をより強固にしていくことを行いました(やることは変わらない)。
ここにきて、解消されていない課題がありました。改正論点の対策です。どのように対応するか悩みでした。最悪放置でもいいかとも思っていました。しかし、ここでオートマ一問一答が毎年、法改正に合わせて改訂されていることに着目し、これを利用しました、具体的にはオートマ一問一答を買いなおし、目次を確認し、ずれているページを確認しました。ずれているページが改正論点なわけです。この部分を何回か解いて、改正論点の対策としました。

試験1か月前になって、緊張とプレッシャーが来るようになりました。何せ、1年間フルで頑張ってきた試験勉強です。ドキドキする中でとにかく体調管理だけは気にしました。直前で体調を崩して、勉強期間が開くのは最悪です。

以下、試験の感想です。

試験当日(2023/7)

とにかく、コンディションは万全にしようとしました。長野から新宿に前日に前泊し、しっかり寝ていこうと思いました。ですが、現実は緊張で勉強もあまりできず、眠れませんでした。それでも試験当日は体調は万全で、いい緊張感でした。早稲田駅を降りた瞬間から塾の関係者でごった返していて、とんでもないところに来てしまったと思いました。試験会場の教室では他の受験生が塾のレジュメを読んでいたり、六法を読んでいたりしていました。ただ自分は今までやってきたことをやるしかないとでるとこ一問一答の最終確認をしました。
手ごたえは悪くありませんでしたが、合格しているという安心は全くありませんでした。帰りの新幹線は抜け殻のようになり、当分法律は見たくないと感じていたことが思い出されます。

基準点発表(2023/8)

8/14に司法書士試験の基準点が発表されました。昨年よりも低く、かつ記述は昨年より難しいうわさがありました。ワンチャンあるのではと感じるようになりました。

筆記試験試験合格発表(2023/10)

筆記試験の合格発表はこれだけの思いれのある試験ですから、東京法務局まで見に行くことにしました。そして不合格だった場合は、自分にそれなりのショックを与えて、諦めさせるようにしようと思いました。
最寄り駅の九段下駅から足の感覚がありませんでした。が結果は合格。はしゃぎました。少しずつ人生が変わりつつあることを感じ始めていくようでした。

おわり。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?