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「農業は比較検証の連続。失敗も次につながる」 #7 根本有機農園根本洸一さん | haccobaをつくる人びと

こんにちは!福島県南相馬市の小高というまちで、新しく酒蔵を立ち上げ、酒づくりを始めたhaccoba(はっこうば)です。
現在、私たちは4人のチームで活動をしていますが、実はたくさんの「つくり手」たちが関わってくれています。

私たちのコンセプトでもある「みんなで育てる酒蔵」を、まさに一緒に育ててくれているクリエイターの方々を、ここではご紹介したいと思います。

”酒づくりをもっと自由に・さまざまな垣根を超えた自由研究”
というコンセプトで色々なコラボレーションに取り組んでいるhaccoba LAB_。
4本目となるhaccobaLAB_のお酒「十 -je-(じゅう)」で使わせていただいたのは、同じ小高で長年有機の米づくりをしている根本洸一さんのお米です。

震災後、2016年まで避難区域であった小高ですが、田んぼの可能性を信じて避難先から通い栽培を続けた根本さん。
根本さんの米づくりに対する思いなどをお伺いしました。


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根本さんが農業を始めたのはいつからですか?またどんなきっかけがあったのでしょうか?

農家の家に生まれたので、最初から百姓をやるもんだと思っていました。親の仕事を継ぐのが当たり前の時代でもあったので、他の仕事やるということなど頭になかったです。
なので、学校の勉強も、物理や数学などは農業に関係があると思うと自然と頭に入ってきました。その代わり、英語や歴史などは全然でした(笑)。
私が通った「小高農業高等学校」は、当時出来たばかりの新しい学校でした。伝統こそなかったですが、斬新な発想をもった素晴らしい先生がたくさんいて、良い影響を受けたのを覚えています。

有機農業はいつごろからはじめたのですか?

そもそも、農業は昔はみんな「有機」でした。米ぬかや大豆かすなどを肥料にしていましたから。私が高等学校を卒業したころに化成肥料が出来てきて、そこから農薬や除草剤などいろいろな化学薬品をつかった農業のやり方が広がっていきました。効率的にはなるけれど、人体に対しての影響も大きなと。農薬を使うと頭が痛くなったりしてね。農薬で亡くなる人もいました。こんなものを使って作物を育ててはいけないと思いました。
これまでも、なるべく農薬は使わず育てていましたが、より安全なものを作りたいとの思いが強くなり、平成12年に有機JASの認証を取りました。環境と人体に対する「安心・安全」が一番大切だと思っています。

震災後2012年より、まだ避難区域だった小高で農業を再開したのはどういう思いからですか?

一番は、「とにかく作りたくてしょうがなかった。」という気持ちが強いですね。農業は作物が相手。生きているものなので日々変化があります。そんなちょっとした変化は、やはり長年の勘で気付けたりするもの。休んでしまってその感覚が鈍ってしまうのが嫌でした。
また、二本松にある有機農業研究会が、研究者の方々の見解に基づき、1年間試験栽培を実施。その結果から、小高でも作れるんじゃないかと思いました。ようやく立ち入りが許可された2012年の4月、許可をもらって自分の土地に戻ってみると、あたり一面枯れ草だったことに衝撃を受けました。とにかく、「このままではだめになる。もとの状態に戻したい」その一心で再開を決心しました。
最初の数年は、食べることができず収穫してもただ捨てるしかなかったですが、それでもこの土地を守っていくために続けました。

根本さんのお話を聞いていると、科学的な知見に基づき取り組んでいる印象ですが、農業をやるうえで意識されていることはありますか?

基本は、本を読んだり研究者の先生方のお話を聞いたりして、新しい情報を入れるようにしています。
農家はただ農作業をしていれば良いわけではありません。常に比較検証することが大事。「これをやったらどうなるだろう?」「この方法ではどうだろう?」と今よりさらに良くなるにはどうすればいいのだろう、といつも考えています。失敗することもありますが、それも必要なこと。その失敗からまた検証すれば良いのですから。

これからどのような農業をしていきたいなど、夢はありますか?

昨年から田んぼ一枚だけですが、自然栽培での米づくりも始めました。
一般のお米に比べると収量は2割〜3割ぐらい少ないですが、やり方は色々考えられるかなと思っています。作物は、どんどんその土地に適合していくから面白いですね。虫や雑草と言われる他の植物なども含めて不要なものはない。自然と共生し、安心安全なものを作ることを一番大事にしています。
昔は人生50年ぐらいでしたけど、今は100年の時代。そう考えるとまだまだですね(笑)。身体は昔のようにはいかなので家族は心配してますけどね。
でも、お酒が好きな人は死ぬまでお酒を呑むでしょう?それと一緒。死ぬまで百姓を続けていきたいですね。

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御年84歳の根本さんですが、常に新しい情報を取り入れてチャレンジをし続ける姿は、本当に敬服いたします。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉通り、何年、何十年とやっていても十分ということはなく、謙虚に学び続けることの大切さを改めて教えていただきました。

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根本洸一(ねもとこういち) 根本有機農園
南相馬市小高区桃内の農家の家に生まれ、高校卒業と同時に農業を営み、米や野菜を栽培している。平成12年より有機JAS認証を取得し「安心・安全」な米づくりを実践。
東北地方では大変珍しい、酒米の品種 ”雄町” の有機栽培も行っている。
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