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#01 日本の未来はどうなるか。国家の衰亡について調べてみた

人口減少、高齢化、経済の低成長、円安

かつて経済同友会代表幹事の小林喜光氏は「平成は敗北の時代」といい、京大の藤井聡教授は「日本は衰退途上国」といった。はたして日本は衰退しているのだろうか。Chat-GPTに聞いてみると、「日本は一部の課題に直面しているものの、その文化や技術、国際的な地位を考慮すると、衰退していると一概に言える状況ではないと言えるでしょう」と、こちらはまだ衰退していない派だ。

経済成長率を見れば、1990年から30数年間、実質成長率は平均1%未満で、ほとんど成長していない。この間、経済の体温ともいうべき金利も下がり続け、最近は、ほぼゼロ%が続いている。

経済停滞の根本には、人口の減少・高齢化がある。日本の人口は2004年をピークに減少を始め、そのトレンドは今後も続く。高齢化も進む。そうなれば、日本全体の消費は減り、市場としての魅力が低下するから内外の投資も減る。経済成長が鈍化する道理である。

低出生率は、経済の問題以前に、将来、日本という国が存続できるのか、という問題をはらんでいる。国に絶対必要なのは、そこに住み暮らす国民であり、その数が減り続ければ、いずれその国は消滅する。

シンプルに考えて、人口が増えるには、夫婦から子どもが2人以上生まれるか、海外から日本に人が移り住んでくるかしかない。しかし、夫婦から生まれる子どもの数を示す出生率は2022年で1.26と2を大きく下回り、海外からの移住は、移民を認めていない日本では、人口動向を左右するような規模にならない。
 
出生率1.2とは、夫婦2人から平均1.2人が生まれるということだ。この出生率が続くとどうなるか。昨年(2022年)の出生数は78万人だが、この人たちが、仮に30年後に子どもを産むとすると、生れる子どもの数は約47万人(78万×1.2/2)。次の世代は今の世代の6割の人数になる計算だ。これが3世代続けば、出生数は17万人に、5世代続けば6万人になる。5世代後、つまり150年後には、今78万人の出生数は、たった6万人になる。
こども消滅の危機だ。

いやいや、出生率はどこかで回復する、という意見もあるだろう。しかし、ことはそう簡単ではない。少子化は今に始まったことではないからだ。1990年代以降、国は少子化を国家的課題と位置付け、1992年に国民生活白書で初めて「少子社会」ということばを使い、国民にメッセージを発した。2007年には少子化担当大臣を設置して、対策に取り組んできた。
 
しかし、国が30年以上取り組んできたにもかかわらず、出生率は変わらないどころか下降気味である。出生率回復はそれだけ難しい課題なのだ。

人口減少、高齢化、経済の低成長、さらに、近年は円安も進む。

日本はインフラが整備され、美しい自然に恵まれ、治安も良い。欧米に比べれば物価は安く、経済的格差もそこまで大きくはない。ロシアや中国と違って言論も自由だ。成熟し、安定した住みよい国との評価はあるだろう。

しかし、人口減、高齢化、経済低成長、通貨安という事実は、一般的には国の「衰退」を表していると言わざるを得ない。長期的に見れば「国の衰退」は避けられないのではないか、と不安が胸をよぎる。

そこで、国家の衰退とはどういうことなのか、有識者の衰退論をまとめてみた。黒木亮、高坂正尭、中西輝政、森嶋通夫の4氏である。

黒木亮氏がロンドンから見た「日本衰退」という現実

まずは、作家の黒木亮氏のインタビュー記事(ダイヤモンド・オンライン 2023.6.20配信)をご紹介する。黒木氏は金融を舞台とした小説やノンフィクションで知られる。30代から30年以上ロンドンに住んでおり、外から見た日本について、次のように語っている。

コロナ禍に対する日本とイギリスの対応の違い

「国家のリーダーシップが失われている。コロナ禍というのは世界各国が『同じ課題で力を試された』んだと思います。イギリスは見事でしたよ。ワクチンがまだ開発されないうちに、『マイルストーン・ペイメント』などベンチャーキャピタルの手法で開発費を支援して、完成したらワクチンを優先的にもらうという戦略を取った。

開発と同時並行で接種計画を策定して、ロジスティクスも全て整え、注射打ちのボランティアも1万人ぐらい養成しました。医療資格のない18~69歳の素人を訓練して注射打ちにしたのは、救命救急のNPOに所属する16歳の若者でした。そして先進国で一番早く、2020年の12月からワクチンの接種を始めた。片や日本は、接種は自治体と職域に丸投げ。マスクだけ一生懸命して、いくらか感染は抑えられたのかもしれないけれども、それほど素晴らしい結果を出したとも思えない。」

なぜ日本では国家のリーダーシップが失われたのか

「日本は政治家が萎縮しています。マスコミにばかにされたたかれたくないから、決断せずに選挙だけやり過ごす。すると現場が頑張るしかないから、日本は現場の仕事熱心さはピカイチ。でもリーダーシップがない。昔は、日本は金権政治であったとはいえ、リーダーシップはそれなりにあったんでしょうね。けれど政治家の資質が下がって、小泉・安倍政権で官僚の力もそがれてしまった。国家財政も借金を膨らませ、どうしようもないところまで来てしまった。」

「日本の政治家が劣化したから、その相手をする官僚も劣化した。今、優秀な人材は官僚にはならないでしょう。メディアがしっかりして、日本の問題点をきちんと指摘しなきゃいけないのに、その役割を放棄している。欧米メディアは政治家に対して追及が厳しいですよ。特に新聞は『社会の木鐸たれ』と言われるのに、日本のメディアは記者クラブによってがんじがらめにされていて、政治家に対して弱腰。政治家に敢然と物を言うのはフリーのジャーナリストたちで、既存の大手マスコミはメディアとしての役割を放棄している。」

政治の劣化は国民にも責任がある。政党の候補者選抜の仕組みも違う。

「政治の劣化は国民の責任でもありますよ。選挙が人気投票になってしまうのは自然の成り行きなので、イギリスでは各政党が候補者選抜をしっかりやって、おかしな人が出てこないようにしている。しかし日本では、自民も維新もタレント候補を連れてきて、有権者をばかにしているでしょう。なのにそれを選んでしまう有権者も愚かです。タレント候補に頼っているような政党はろくなことがない。」

世界からみると日本は二等国になった、と氏はいう。「今の日本は先進国の中では二等国ですよ。清潔で勤勉な国民性ではある。でも円が弱くなり、国力としてはすごく衰えて、インバウンドの隆盛以外、いいことは何にもないような気がします。」
 
「日本はまだ国際的に学力は高くて、今はむしろ若者にとってチャンス。本人次第かな。やっぱり自分がその仕事の場で可能な限りの、一番大きくて自分好みの絵を描くように努力したらいくらでもチャンスはありますよ。やっぱり、夢がない仕事って面白くないですね。夢は自分で持つものだと思うし。」

競争させない教育もおかしい

「今、日本は子どもを競争させないような教育をしているでしょう。順位を付けないなんて、おかしいですよ。競争に耐え得る人間にしないと、生き残れない。生きるって、競争ですよ。動物だって、懸命に自分を魅力的にして異性を引きつけて、自分の遺伝子を残そうとするでしょう。本来の動物のあり方を否定するような教育、おかしいんじゃないかな。子どもの能力をそぐような結果になっています。それは教育といえるんですかね」

黒木氏は、「海外にいると、日本で起こっていることが客観的に見える」という。日本にいると日本のことしか見えないから当たり前と思ってしまって、批判的な目線で見られないというのだ。

(次号に続く)


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