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【LD学会】発達性協調運動症のある子どもの書字困難の特徴と感覚統合の効果【機関誌】

 私は合同会社はびりSPOTのCOOですが日々児童発達支援&放課後等デイサービスで言語聴覚士・保育士として支援もしています。
 日々講習や書籍などで学んだことをアウトプットし、学ぶことの大切さや療育を全てのお子様に提供できたらと思いつつ、少しでも役立つ情報を発信できるよう書き綴っています。

引用元

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キーワード

LD学会 LD研究 第30巻1号 発達性協調運動症(DCD)書字障害(ディスグラフィア) 感覚統合療法(SIT)

まとめ

 感覚統合を行うとDCD症状の改善や書字困難(一部)への改善傾向がみられることがあるそうです

Introduction
啓発活動の一環として

 LD学会に所属している私宛には、毎年4回機関紙が届きます。
 最初に書いた通り、療育の情報発信の意味もありますが、学会員の一員として啓発活動も行おうと思い今回ここに書き連ねることに致しました。

Why?
この論文を選んだ理由

 機関紙の中からこの内容を選択したのは、当施設も感覚統合療法を学んでおり、経験の中で自閉スペクトラム症(ASD)と呼ばれる診断の中にある感覚の偏りに対して支援を行う場面を見ることが多かったので、LDの中の一つにある書字障害に対してどのように結びつけるのか気になったからです。 

Subject
どんな人が役に立つ情報なの?

 クリニックで行った実践報告のようなので、感覚統合療法を行っている作業療法士の先生や、LDへの治療を行っている言語聴覚士の先生には何か身になる部分があるのではないかと思います。
 多種多様な評価方法を用いているので、支援を行うにあたり、どのような評価をすればいいのか悩んでいる方にはヒントになるかもしれません。

Point
最終産物 書字困難 効果

 最終産物・・・感覚統合(SI)を学んだことがある人なら聞き覚えがある言葉かもしれません。
 感覚統合は感覚にアプローチをしているものだと思われがち(私だけ?)ですが、段階的に積み上げていき最終的なゴールの一つとして学習があるようです。
 下図のような積み木を積み上げている図を見たことはないでしょうか?

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 感覚が育ってくると、姿勢を保つことやバランスを取ることができるようになり、体が安定してくると様々な動作(粗大運動)がしやすくなります。
 動作の種類が増えてくると次の段階として巧緻動作と呼ばれる動作の組み合わせや目と手の協応といった機能に繋がってくるそうな。
 そして最終的に感覚が統合され体(目や耳も含む)の使い方を覚えると社会的に必要な学習(読み書きなど)を学ぶ段階に進むと考えられていると聞きます。※高次の脳機能の一つに学習があるだけで他の要素もあります。
 論文の中に記載されていたプログラム内容は、姿勢保持、目と手の協応、体性感覚の情報処理、手先の巧緻性などに関係するとあり、一部例として、しがみついてスイングから落ちないように乗り続けるといったことや、ダーツやおもちゃのピストルなどを使った活動を行ったようです。
 どれも学校という環境下で書字の練習ではやらないであろう活動であるように思います。
 これらは遠回りに感じるかもしれませんが、書字困難といわれる字の乱雑さ、文章を枠内に書き写すこと、書字を行うのが辛いと感じることなどが改善したそうです。
 これらの支援でやりがちなのは、声掛けだけで「きれいにかこうね」ということや「はみ出さずにかこうね」と、誤った部分を指摘して直させることが多いのではないかと思います。
 これらは本人の自尊心を傷つける可能性がありますし、打たれ弱い子は「もう書かない」と言い出したり、その場から逃げ出したり、口論になったりと直接的な支援では解決しないことが多いように感じます。
 そんな中、書字とは別の切り口から楽しく取り組み更に書字の改善につながるなら言うことないですよね。
 筆者はSIに基づいた内容に関しては効果があるとしていますが、やはり別の問題に関しては効果は得られにくいように記載しています。
 例として視覚性記憶の問題や音韻-文字変換、文法などの問題は別ではないかと考えられているようです。
 どの療法にも言えますがSITも万能ではないので、しっかり評価したうえで問題点を把握しプログラムを組み立てる重要性を再認識しますね。

Last
研究の限界

 発達の実践研究をする上での問題点として、症例数の少なさを筆者は挙げられています。
 1施設で見れるお子様の数には限りがありますし、クリニックでもリハビリ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)で100人がいい所ではないかと思います。
 経験談になりますが、数が多くなければ一人一人に対しての密に訓練ができなくなり、効果を謳うことはできなくなります。
 逆に数が少なければデータの信頼性が落ちてしまうということがあり、少人数でできることの限界を感じる所ではあります。
 別の問題として発達というバイアスがあり、果たして今この子が伸びているのは発達のおかげなのか、訓練を行ったからなのか分からなくなる所があります。
 検査でデータを取ろうとするとお子さんのその時の気分でかなり変動しますし、体調や環境を揃えるのも困難だったりします。
 そんな事情がありまして、私も少ないながらも症例報告などをした経験などから発達に関係した実践研究を行う方には敬意を示しております。
 当施設でもLDを初めとした発達に関係する研究を行い、このような挑戦的な論文を出していけたらと思う次第です。

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