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仕事の相方がいてくれたらなと思った日。


土曜にテレビで女芸人No.1決定戦『THE W』が放送されていた。人が人生をかけて何かに挑戦している姿を見るのが好きなわたしは、最初から最後まで胸を熱くしながら見た。皆さんのセンスと努力と度胸に感動した。

『THE W』は人数制限がないので、ひとりでも複数人でも出場できる。ピン芸人さんもコンビもカルテットも出てくる中でわたしはふと、複数人でやってる人、特にコンビの人がうらやましいと思った。


会社を辞めたとき、ひとりってなんて気楽なんだろう最高!と思い、「ひとり」と書いた紙を持って駆け回りたい気持ちだった。自分の好きな時間に仕事をしていい。人の雑談で手を止めなくていい。なんて自由、なんて気楽。わたしにはひとりが合っていたのだと確信した。

それが心細さに変わっていったのは、いつからだったか。

この文章、ちゃんと意味が伝わってるだろうか。どっちの言葉がいいだろうか。ずいぶん極端な主張になっていないだろうか。もっと全然違う角度のアイデアがないだろうか。何か大事なところを見落としているんじゃないか。めちゃくちゃすべってるんじゃないか。これで読者の心が動かせるだろうか――。

これを今すぐ、ふらっと相談できる相手が隣にいたらどんなにいいだろう、と思うようになった。仕事を依頼してくださるお取引先の担当者さんに相談することもできる。でも、確かに仕事のパートナーではあるが、同僚ではない。やはり距離感はちがうし、何でもかんでも聞くわけにはいかない。最近もやりとりの中で、「ああ、もっといろいろ言ってくださいいぃ」と感じるようなできごとがあった。オッケーと言ってくださってるのだからそれで終わりでいい、のだろうけどさ。夫は業界が遠いので、文章や言葉に関するあれこれは「わからな~い」と言う。

そんな状況だからか。『THE W』でコンビの芸人さんを見て、「いいなあ…」と声が出た。わたしが応援しているコンビ芸人さんが、「自分たちはすごく仲がいい」と普段から公言されている影響もある。「こういうネタをしようと思うけどどうすればもっとよくなるかな」と意見をぶつけあえる相手が、心臓が口から飛び出しそうな本番の舞台袖で「大丈夫、今まであれだけやってきたんだから」と手を握り合えるような相手がいること。それが、なんだかとてつもなくうらやましい。

とはいえひとりは好きで、組織は疲れるのでもう会社という場に戻ることは当分ないだろうけど。完全にひとりきりでもなく、組織でもなく、信頼し合えるコンビみたいな関係が築ける仕事の相方がいたら、それはたのしそうだなあと思う。わたしも聞きたいし、相手にもいろいろ聞いて欲しい。一緒になにかを作り上げたい。ふたり特有のむずかしさがあることも十分わかったうえで、それでもあこがれてみたりする。フリーになったら何でもひとりで片付けなきゃいけないと思い込んでいた。だけど、自分が心地よく力を発揮できる人間関係を築くこともまた仕事なのだと思う。

人を信じるのも頼るのもとことん苦手で、隅から隅まで自分でやらなきゃ気が済まなかったはずのわたしが、こんなことを考えるだなんて。やっぱり今、いろんな経験を経て、自分ひとりのちっぽけさも知って、わたしの目はすこし外を向くようになってきているんじゃないか。


おわり

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