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染まってしまったわたし。


久々に短いエッセイを。
すこしまえに書いたものもあります。


夫からの熱い助言

何かを絞り出すように削り取られるように唸っているわたしに、夫が「本を一冊出すというのは、とても大変なことなんだなぁ」と言う。「実力が追いついてないのにやろうとしてるから余計に大変なんだよ」と返すと、「でも実力がなかったら、こんなチャンスはもらえないんじゃない?」。「運だよ。運がよかったから」わたしがそう言ったとき、夫は急に今から大事なことを言うよっという姿勢に変わり、「たしかに運もあるんだと思う。でも、スポーツに例えるなら、ベスト4くらいの力があるチームが運を味方につけて優勝することはあっても一回戦負けのチームが運で優勝することはあり得ない。実力が全くないってことは絶対にないはずだと思う。何か光るところがあったはず。編集さんや評価してくれた人の言葉を思い返してみたらいい」と熱弁しはじめた。なぜスポーツにたとえたんだろうと思いながら、そういえば運動部育ちだったわたしはなんだか妙にしっくりきて、ちょっと自信を持って唸りはじめる。

生まれ変わった我が家

しなきゃならないことがあるときに限って片付けをしたくなり、それも大規模な断捨離をしてしまおうと思い立った。5日間かけてすこしずつ進めて、ゴミ袋20個分くらいは捨てた。売れるものはほぼなく、シンプルにゴミだったので驚いた。これまでは「迷ったら残す」だったけれど「迷ったら捨てる」という方針に。家は見違えるようにすっきりとして、おまけに6万8000円が出てきた。内訳は、いつか誰かを祝うときのために新札両替をしたまま存在を忘れていた5万円、20代の頃海外旅行に行った名残りの韓国ウォン約1万5000円分、おなじくドル約1000円分、イオンのギフトカード残高約2000円である。わたしは大掃除をするたびに、お金を見つけているような気がする。でもこれだけ断捨離をして我が家は生まれ変わってしまったから、次の掃除ではもうお金は出てこないんじゃないか。それはそれでちょっと寂しい。


劇的ビフォーアフターの曲

断捨離をして掃除もしたので、リビングが史上最高にきれいになり、早く人に見てもらいたくて夫が仕事から帰ってくるのをうずうずしながら待った。「ただいまー」の声が聞こえた瞬間、『大改造!!劇的ビフォーアフター』の曲を歌いながらリビングの扉を開けた。部屋をきれいにしたとき、この曲を歌わねばならない、と体にプログラミングされている。そういう人、わたしだけじゃないと信じている。

染まってしまったわたし

夏場の夫は、冷凍庫にアイスを入れておきさえすればご機嫌で暮らしてくれるので、極力アイスを絶やさないようにしている。冷たくて甘ければなんでも喜んでくれるので、安くてたくさん入っている真ん中でまっぷたつに割って食べる棒アイスを買うことも多い。ところで、あのアイスの呼び名。わたしの父と母はあれを「ポッキンアイス」と呼ぶタイプの親だった。小学生の頃、仲良しのお友達の家におじゃますると、友達があれを「チューチューアイス」と言って食べ始めたので、こんなに近所に住んでいても文化には違いがあるのだなぁと衝撃を受けた。わたしはチューチューという響きがなんだか子どもながらに子どもっぽいと思って、「ポッキンアイス」のほうが洗練されていてよいと感じ、それからも「ポッキンアイス」呼びを貫くことにした。しかし先日、自分が夫に「チューペット買っといたよ」と話しかけていた。チューペット。あのとき子どもっぽいと心で笑った「チュー」を含む呼び名に変えていたのである。これは100%夫の影響だ。昔から、人の影響で、特に彼氏とか異性の影響で自分を変えるなんてねっと思っていたわたしが、夫の影響で「チューペット」。自分にうっすら動揺しながら、きっとほかにもあちこちが染まっているのだろうなぁと思う。



おわり

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