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016話 続・精神病棟

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 丸で何事も無かったかの様に、今迄と同じような入院生活が待っていた。

 唯一、違う点は、サオリが退院して、ほぼ毎日毎日、飽きもせず面会しに来る事だ。
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 今日の時間開放中、他の病棟のOT散歩の群と合流した。

 2南の患者、オヤカワとマサユキがOTスタッフのミドリさんに連れられて、歩いている後ろ姿を裕司が発見出来たからだ。

「オヤカワさんじゃないですかぁ?」

「おおーう、おお!」

 とても驚いて、とても喜んでる様子だ。

 マサユキのいつもの笑顔も嬉しそうに見える。

 ミドリさんは、相変わらず素敵な笑みで微笑んでくれた。

「あ、そこで珈琲タイムにしましょう?」

 裕司とサオリが愛用していた、小山。その麓にも有る2つの木製柄のベンチ。そこに1人と3人で座った。

 オヤカワのあまり聞き取れない難語を、ミドリさんは理解出来てる風に相槌を打つ。

・・・流石だっ。

 オヤカワが何かの話の流れで、艸楽さんの名を口にした。

・・・そ〜だ! 2南には裕司と友達って定になってくれた艸楽看護師が勤務して居るんだったぁ。

 ここぞとばかりに

「ミドリさ〜ん? 今日、艸楽さん居ますぅ?」

「居るよー。……私と同い年なんだよ」

・・・そこまで訊いてませ〜ん。

「え! じゃあ、20代なのぉ?」

「まったー。そんなに若く見えるー?」

・・・社交辞令ですっ。

「……『高橋が元気にしてるよ』って、伝えてくれますぅ?」

「かしこまりましたー」

「『珈琲、飲んで逃げたょ〜』って」

「逃げたって、ははっ」

 もっと伝えて欲しい事は有るけど「人を通して話す内容じゃない」と思い、自粛した。

 次に裕司が独りで向かった先は、簡素な3つ椅子場だ。クリーニングの女性と2度目のお喋りを期待してだが、現れず。

 代わりに3南のOT散歩の集団が横切った。

 作業療法士(OT)の研修生をしているカジキさんも居た。今日はマスクを顎までずらしていて、初めて鼻と口を確認出来た。

・・・何の問題も無〜し。

 即座に、裕司の恋愛リストに追加した。

 そして「もう今日は戻ろっか?」とアルコール病棟付近を通り過ぎ、主にアルコール患者が利用する喫煙所へ続く階段を登りかけた。

 その時! 変な所で、しゃがみこんでスマホを弄っている人が居た。

 裕司は、近付いて観る……。

・・・居た!!

 アルコール依存症者のカナコだ。

「わあ!!……居たぁ〜」

「見つかったー、ふふっ」

 久し振りだからか、更に凄く可愛く見える。

「歩きながら話そーか?」

「うんっ」

 茶色で真っ直ぐ長い髪が腰まで伸びている。

・・・これくらいの長ぁ〜い髪の方が、裕司の好みだなぁ。

「この間くれた手紙、凄く嬉しかったです」

「あ!…………」

 驚いて一瞬、止まってしまった。

・・・スッカリ忘れていたっ。

 カナコと結果的に最後となったアルコールの自助会で、異常な程の緊張と恥ずかしさの中、何とか勇気を振り絞って、手渡しした手紙の事を言っているのだろう。

「あの♡型、とても頑張って作ってくれてたね? でも、ちゃんとした折り方が有るから教えたくて、……ハイ! この通りに折ればいいんですよ」

「!! ……くれるのぉ? ……僕宛?」

「うん」

 綺麗に折られた♡型の手紙を受け取った。

「凄く嬉しぃ! アリガト〜。…ど〜やって折ったのぉ〜?」

「ふふっ。中学の時、よく折って遊んでた。……折り紙の折り方で有るんだよ!」

「へぇ〜、そ〜なんだぁ」

 もっともっと喋りたかったのに、裕司は戻らなきゃいけない時間で

「ゴメン、……また遭えるぅ?」

「また会お」

 そしてハイタッチを誘ってきた。

パチンッ

 一瞬、右手同士が触れ合っただけなのに、とてもとても幸せな気分になった。
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 3度目の外泊を許された裕司は、依存症施設にまた戻った。

・・・そこしか帰る場所が無いから、渋々なんだけどぉ。

 帰る家が有るなら当然そっちに行くし、もし有るなら、とっくに退院しているだろう。

 そうじゃないから、この暖かい地の精神病院で3カ月にも迫る入院生活を送っているのだった。でも、施設での生活が嫌になった訳ではない。

 元々、東京での依存症施設にお世話になったのが初めてだ。

 そこでの暮らしは散々なモノだった。

・・・なんせ、人と話せなかったからなぁ……。

 それと言うのも、100% 裕司が悪い。ぃゃ、可笑しかった。

 恐怖心や恥かしさで自分の人生ずーっと、人と話さず、ずーっと関わりを持てなかった。

 親戚・親・兄弟は勿論、学校・職場、終いには元嫁にも心を閉ざしていた。

 唯一、全てを語れていた相手は、9歳の裕人・もうすぐ8歳の優芽・6歳の優花、たった3人の自分の子供だけだった。

・・・そんな無口な自分を変える事が出来たら、周りに居る依存症者達みたいに、楽しそ〜に笑えるのかなぁ。

・・・勇気を出す事が出来れば、ミーティングと言うプログラムでも、素直で正直な話が出来るのかもしれなぃ。

・・・そ〜なれば、裕司に与えられた不治の病『大麻依存症』も何とかなるのかもしれなぃ。

 そんな期待感が心に残っている事に気付き、再び施設の門を叩いたのだった。

「こんにちはぁ〜。今日から来ました。宜しくお願いしまぁ〜す」

 最上階の4階に有る入口までの階段を登り終え「まずは挨拶からだっ!」と思い、精一杯の声を出した。

 広々としたテラスで、煙草を吸ったりして居た見るからに病人、見るからに変人、見るからに元ヤ◯ザな人達に自分をアピール出来た。

 当時の裕司を様子を見ていた仲間が、後にこんな事を言ってくれた。

「ココに来たばかりの連中は、みんな死にそうな顔してたり、ヤル気なんて欠片も無い奴ばかりなのに、ハーシだけは満面の笑顔で驚いたのを、今でも憶えているよ」

 こう聞かせてくれた元ヤ◯ザのジョージさんとは、非常に良好な関係を築ける様になれている。

 あの平成29年12月18日から高橋 裕司の生き方が変わり初めたのだ。

 高橋 裕司から ハーシと言うアノニマス(匿名)に変更したあの時から、依存症がどうとかではなく、取り敢えず人として生きたかった。

 人とは何か? を学びたかった。

 人として楽しく生きるには、どうしたらいいのかを掴みたかった。

 約13ヵ月、施設暮らしをして『笑顔』『挨拶』『コミュニケーション』たったこれくらいだけど、裕司にとってはとんでもない大きな成果を上げれたのだ。

 そして、崩れた…………。
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 今回の2泊の外泊中では、自分の感情にはマニアックな一面が有る事に気付いた。

 今の施設で入寮しているハウスでは、水曜と土曜にレクレーションのプログラムが有り、その日は雨天の為、アラ◯ビーチではなく、図書館へ8人が乗るエルグランドで出掛けた。

 近場に有る図書館だった。

 図書館の入口のお庭にミドリガメが浮かんでいて、裕司の心を癒してくれた。

 何かのイベントの日だったのか、ただの土曜日でもいつもこんな感じなのか兎に角、子供の姿が多く目に映った。

・・・裕人は元気かなっ? 優芽は泣いていないかなぁ? 優花はぁ……甘えているだろ〜なぁ。

 自分の子供への想いを呼び覚まさられた。

 半ズボンと言うか、ショートパンツみたいなのを穿いている女の子ばかりが目に付く。

・・・10歳くらいかなぁ?

 既に胸元が膨らんでいるのを、Tシャツのデザインの歪みで確認が出来る。

・・・もぅ一人で、お風呂に入っているかなぁ? トイレで綺麗に拭けているかなぁ? …パパとママどっちと来ているのかなっ?

 裕司はポッケに煙草・プラズマライターと一緒に飴ちゃんが入っている事を確認した。

・・・「飴ちゃんあげよっか?」「ここで渡すとパパに見つかっちゃうからぁ、あっちに行こ?」こんなセリフを言えば、付いて来るかもっ?

 如何にも優秀な誘拐犯が使いそうな手口に思えて、自分にはそのセンスが有るようにも思う。

 女の子は無論、処女だろうし、躰も出来上がっていない。恥毛すら生え揃ってないだろうけど、そんなの関係ない。

 飴ちゃんを餌に人目に付かない所、障害者用のWCに連れ込む。

 あまり声を出されたくないので、布的な物を口の中に押し込む。

 両腕は邪魔臭いので脱がしたTシャツを使い、後ろで縛る。

 その下にスポーツプラ的な物を身に着けているならば、それも使用する。

・・・自らを縛ってもらう為の道具を、わざわざ持参してくれてるのねっ?

 そして、仕上げは『切断!』

・・・こ、れ、が、したい。死・手・見・隊。

・・・この醍醐味を無くして、幼女虐待は語れないぜぃ。

 声を張り上げられずに、痛がる姿を妄想して裕司はニヤニヤする。

・・・アレ? 僕はこ〜ゆ〜時、ドSなキャラに変身するのかも?

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