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日常の豊かさを教えてくれた茶道|ひかり

まだ始めて3年ほどではあるが、茶道を習っている。
始められたきっかけは偶然でもあるし、必然でもあったように思う。

5年前に生まれ育った場所から九州へ移住をした。
現在は宮崎に住んでいるが、その前に九州に来て最初の土地、鹿児島で暮らしていた。
茶道とは、その鹿児島での出会いだ。

もともと鹿児島へ移る時に、茶道を始めることは決めていた。
引っ越して生活が落ち着いたら、お稽古場を探して、始められるようにしようと考えていたのだが、なんと貸りたお家の大家さんが茶道の先生だった。
とはいえ、内見時に造りのあちこちに茶道をしていた形跡を見たので、その家に決めたのだけれど。
後から聞くと、昔に先生が住居兼簡易的なお茶室として建てた家だった。

先生の第一印象はとにかく元気な方という印象だった。いつも畑用の作業着を着て朝から晩までユンボを乗り回し、木を切ったり、草を刈ったりしていて、子供のような顔をして笑っている。
(この印象は今も変わらないけれど、元気さは当時の印象を遥かに超えるパワフルさだった・・・!)
そして、良いことも悪いことも包み隠さず伝えてくださるので、厳しいけれどその根本には深い愛情をありありと感じることができる方。

そんな出会いがあり、夫と二人の超少人数お稽古が始められることになった。

週に一回、初心者二人の下手の見せ合いのお稽古は難航したけれど、それでも茶道の静謐な空気というのは感じられた。

釜から立ち上がる湯気のゆらめく美しさに体を撫でられたような落ち着きを感じる。

具合良く沸くお湯が起てるやわらかい音が部屋中を満たし、心地よい緊張感が生まれる。

部屋の外の音がいつもより鮮明に聴こえ、鳥のさえずり方から感情までもがわかるよう。

雨の日には、雨音の強弱に合わせて蛙が歓声を上げ、全てがリズムになる。

茶道を始めたら、日常の中で当たり前に慣れていたものの細部が見えたり、聴こえるようになって世界の輪郭が大きく広がっていった。

それから、お点前に大切なことは、手先、足先の使い方、姿勢、いかにリラックスした気持ちでいられるか。
言葉や態度ではなく、醸し出される空気の中でもてなすこと。

先生がお稽古の度に仰っていた。
茶道には道が付くでしょう。これは一生続く学びの道、終わることはありません。
何かの為にやるのではなく、己の為に学び続けなさい。

今は引越して、片道1時間半の場所ではあるが通えずに、先生のお稽古は中断してしまっている。
しかし、教えていただいたことは、日常の暮らしの中でいつも生きている。
自分との対峙、小さな喜びを大きな喜びと感じられる心の豊かさと、当たり前にあるものに感謝を忘れずに、日々を重ねていきたい。

目を留めてくださり、ありがとうございます。 いただいたお気持ちから、自分たちを顧みることができ、とても励みになります! また、皆さまに還元できますよう日々に向き合ってまいります。