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(57)無重力リーダーシップ

例えば僕は、起業を目指す人に対するスクールをやっているのだがよく問い掛ける質問がある。「さぁ、目標を設定をしてみましょう。ご自由にどうぞ」と。すると、大抵の受講生は凍りつく。

「えっ、1年ですか?それとも3年?」

「知らん。ご自由にどうぞ」

「売り上げのことで?それとも社員数とか?」

「知らん。ご自由にどうぞ」

「目標っていつの時点で?」

「知らん。ご自由にどうぞ」

「・・・どうしたらいいんですか?」

「皆さん目標設定したことあります?起業したいんですよね?」

「はい!」

「じゃあどうぞ目標設定」

場は、再びシーンとなる。
そこで僕は言う。

「自由って大変ですよね。それが起業なんです。」

これは自由なものが、いかに不自由化を物語るわかりやすい例だと思う。

【「世界に1人の今のあなた」を形づくった大きな出来事は何か】

僕は20歳の夏に親友を亡くした。
高校時代、アメフト部で僕が主将、彼が副将だった。教室でグランドで、いつでもずっと一緒だった。お互いに競い合い、励ましあい、家族よりも誰よりも1番身近な存在だった。
その彼と突然の病気で二度と会えなくなってしまった。これは悲しいとか悔しいとか、そういうありきたりの言葉では言い表せない、衝撃的すぎる出来事だった。
しばらくの間、何も手につかず、何も考えられなかった。彼は、僕がお見舞いに行った翌日に亡くなったのだが、葬式の時、彼のお母さんにこう言われた。
「礒谷くんのことを、きっと待っていたのかもしれないね」
亡くなる前の彼の心拍数は、1分に150から160位をキープしていたと言う。これは常人であればずっと走っている位のレベルだ。
そして余命3ヶ月と言われていた状態から1年3ヶ月生きた。僕はずっと走り続け、そして走りきったあいつに頭が上がらない。

こう思えるようになったのは、彼のお母さんに言われた一言がきっかけだと思う。彼の生き様を教えてもらって、彼への気持ちが尊敬に変わった。そして自分の価値観が大きく変わり、それからすべての物事が大した事じゃないと思えるようになった。

【「あなたらしさ」を形成した人は?】

「意図を持つ」「意味が生まれる」というのは、無重力リーダーシップにおいて重要な要素だ。
あらゆる出来事は、意図を持てば、意味が変わる。
どんなに些細な出来事でも、意図を持てば、突風が吹いたかのような変化を生む。それが「ブラスト」だ。
そして、ブラストを起こすきっかけとなる人が「ブラスター」である。
「ブラスト」にerをつけて「きっかけとなる人」「火をつける人」という意味だ。

例えば、営業で成果が出ないメンバーがいたとしよう。けど、自分でアポを取ってクロージングして粗利500万円を達成した。今までできなかったことができるようになった。
この場合、何がブラストだったのかを時系列で整理してみる。もしかすると上司から言われた事かもしれないし、僕の言葉だったかもしれない。
それらが点としてつながり線になっていく。
すると「あ、これがブラストだったんだ!」と後でわかる。こんなふうに振り返って、自分にとってのブラストを理解する。

Q今あなたを形成している最も大きな出来事は、何かそれが今のあなたに、どうつながっているのか?


僕の場合、友人が亡くなったことかもしれないし、アメフトで日本一になったことかもしれない。
ひょっとすると、寒い冬の日に駅のホームへぶっ倒れて前歯がなくなったことかもしれない。ちなみにその治療費は80万円だった。僕は80万円という大金を取り返すために、必死に営業活動をした。

僕にとってはなくなった親友がブラスターだった。彼が亡くなって、それだけなら「ああ、悲しいなぁ」だけで終わったかもしれない。
でもお母さんの言葉によって彼の生き様を教えてもらった。そして「こいつすげえな」と単純に尊敬し始めた。
お母さんのあの言葉がなかったら、今の僕につながっていなかった。
彼の死という出来事に意味が生まれた。「俺はあいつみたいにずっと走り続けられるのか?」と考え始め「負けてられへんなぁ」と思った。僕は、彼のお母さんの言葉に意味を見出して頑張るきっかけになったけど、同じシチュエーションで同じ言葉を聞いてもそうならない人もいる。

その言葉が意図をもっていなければ何も響かず、意図を持っていたとしても、受け取り方が違えば意味は大きく変わる。

人間は一度病気になったり、周囲の人が病気になったりすると、健康の大切さがわかるようになる。現状は何も変わっていないのに、意図が変わって視界が変わる。これも意図の違いだ。

【ブラストを起こすにはどうすればいいか?】

営業でも同じだ。「受注してやる!」と肩に力を入れて突撃するより、「社長何に困っているんですか?」「どうしたいんですか?」とクライアントの本音と向き合っていく方がうまくいく。

人間、一生懸命になればなるほど、視野が狭くなる。
誰しも自分独自の「思考の癖」を持っていて、あたかも自分が正しいと言う世界にいるかのように思っている。「すべての物語は逆から見ると、真逆の世界が待っている」という言葉がある。
そのことに本人は気づけないが、視野が広がっていけばいくほど、多くのことに気づけるようになる。
無重力リーダーシップは、力を入れてもメンタムを生もうとするのではなく、ただ視野を広く持ち、リズムを作ってあげるだけで良い。
するとモメンタムを掴むことができる。だから、皆さんには力を抜く過程を理解してほしいし、無意識的に力が入っていることに気づいてほしい。力が入っていると、モメンタムに気づくことすらできないのだから。
ここでモメンタムを掴むヒントとなる問いをひとつ。

Qあなたの人生に良い流れを産むための習慣は何か?

気合いや根性だけで良い流れを掴もうとすると大変だが日々当たり前のように習慣化していくことによって良いリズムが出来上がり、モメンタムをつかめるようになる。
神社にお参りに行くとか、スタバでコーヒーとシュガードーナツを買って出勤するとかでもいい。あ、僕の場合は筋トレに行くことだ。


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