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新春の景色は列車から(part4)[2022.1 北海道&東日本パス⑦]


上野で蕎麦をすすると、旅の気分は最高潮に達する。北の玄関口でいただく立ち食い蕎麦は至高だ。

今日は上野東京ライン→中央快速線というルートを辿ってきたが、これからは常磐線へと歩を進める。
今回お世話になるのは、夕ラッシュ時に運行される高萩たかはぎ行き列車で、上野駅は高架ホームからの発車だ。

どの番線から出るかについては記憶を消失してしまっているが、前に発車した列車が出た直後から並び始めないと、席にありつくことは許されないような様相であるというのははっきりと覚えている。
もうひとつ新鮮に覚えているのを挙げるとすれば、乗車予定のが信号トラブルの影響を受けて、遅れてホームに滑り込んできたということだ。

乗務員の交代も乗客の乗車も慌ただしくおこなわれ、4分遅れに留めて発車をする。
さすがはラッシュ、と言いたいところだけれども、まだ学生がいない時期だから、満員電車と呼べるほどではないだろう。
そのような車内の様子である。当然、窓からの景色は見えるわけがなく、しかも陽も傾き始めており、個人的な楽しめる要素はひとつ程度しか無い。

千葉県や茨城県にある主要駅を踏みつつ、常磐線中距離列車の拠点駅である土浦つちうらに到着。
ここまで来ても、まだ立ち客が無くなることはなく、長距離通勤客の多さを思い知らされる。

駅間は田畑がメインに、駅が近づくと家々の明かりがメインになるのを繰り返していると、明かりがだんだんと眼前に迫ってくるような感覚に陥ってくる。茨城県庁がある水戸みとが近づいてきた証左だ。

水戸と勝田かつたの両駅では、上野から一緒に乗り合わせていた乗客がすべて降りてしまった。私が乗っている号車に限ってはの話ではあるが。

つまりは、高萩行きといえども、実際には水戸・勝田で乗客ががらりと変わっているといえよう。
もう、ラッシュとは到底いえないような時間になっており、真っ暗な車窓には自分の顔が大きく映っていた。
そのような調子で終着の高萩に到着。上野から3時間余りが経っていた。

高萩ではわずか5分での折り返しである。上野で4分遅れで出発したときには、終点手前の駅で乗り換えないといけないかと恐れおののいていたが、無事に遅れを取り戻していただいた。乗務員には感謝してもしきれない。

水戸では駅構内にあるコンビニで軽食を購入し、寒々としたホームのベンチでいただく。
申すのが大変遅くなったが、本日の目的地は宇都宮うつのみやだ。あとは水戸線と東北本線に乗るだけで長い長い一日も終わりを告げる。乗り始めのときは早く今日という一日が終わってほしい気持ちが前面に出てしまうが、夜が来るとそれが一転してしまう。まったく傍若無人な性格である。

水戸線の小山おやま行きは、貸切同然で出発。常磐線と別れる友部ともべで上野方面から来た乗客がぽつぽつと乗ってきたが、その人々も何駅か乗るだけで、また貸切になってしまう。
車内に賑やかさは全くなく、漆黒の車窓も相まって、怖いというよりは何か不思議な感覚に陥る。

小山の街明かりに照らされると、現世に戻ったような気分になり、乗客がチラホラと見られる東北本線の列車に乗れば、モノクロがカラーになったような安心感がある。
それも宇都宮で降りると、また水戸線の車内のような雰囲気になる。23時を過ぎた宇都宮駅の内外は完全に眠りのさなかだ。

なんと明日は始発で移動を開始しなければならない。一応、その列車がメインディッシュの位置づけであるから、逃すわけにはいかない。そのような思案をしながら、足早に宿泊先へと向かった。


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