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上司は『怒る』ことより、『怒られる』ことが仕事である。

はじめに

♠️上司視点…部下が何を考えているのか分からない

♣️部下視点…上司の言うことは一貫性がなく振り回される

 こういったことはどこの会社でも起こっているようです。上司にしろ部下にしろ『人間』なので、意思の疎通がうまくいくこともあれば、まったく噛み合わないこともあるでしょう。そこを少しづつ『すり合わせていく』のが面白くもあり、難しくもありますね。
 ここで、よくある【上司から部下への要求】と【部下から上司への願望】を見てみましょう。

♠︎上司♠︎
【矛盾する2つの要求】
「私の言った通りにしろ」 ∞ 「自分自身の頭で考えろ」

 ♣︎部下♣︎
【矛盾する2つの願望】
「ちゃんと指示を出してほしい」 ∞ 「自分の好きなようにやらせてほしい」

 こんなことを思ったりした経験がある人も多いと思います。ではなぜ、矛盾する要求や願望は生まれるのでしょうか。上司でも部下でも、『違う人』が言っているのなら分かるのですが、『同じ人』が言っていたりしますね。
 ここでちょっと【視点】を変えてみましょう。上司視点と部下視点だったものを、【自分本位視点】と【他人本位視点】に切り変えてみます。つまり、視点を『上司か部下か』ではなく、【自分か他人か】にして考えてみましょう。



I. 自分本位と他人本位

 ▲自分本位..自分が主軸にあり、中心として自分、側面として他人がいる
 ▼他人本位..他人が主軸にあり、中心として他人、側面として自分がいる

 前述の上司視点と部下視点のそれぞれ2つの矛盾は、【自分本位視点】で考えているときのものでしょうか? それとも【他人本位視点】で考えているときのものでしょうか? 1つ1つ見ていきましょう。

A. 「私の言った通りにしろ」と言う上司
 命令に従わせ、上司の思っている通りに行動させることにより、支配していると
捉えることができるが、まだ自己判断では行動できない部下の「行き先」を示していると捉えることもできる。
 前者は自分の欲求のためなので「自分本位」と言えるが、後者は部下を導く目的があるので「他人本位」と言える。

B. 「自分自身の頭で考えろ」と言う上司
 部下が必要としている指示を出さないので、上司の義務を放棄しているように見えることがあるが、部下が自己判断で行動できるように成長を促していると見ることもできる。
 前者は自分の都合のためなので「自分本位」と言えるが、後者は部下を育てる目的があるので「他人本位」と言える。

α. 「ちゃんと指示を出してほしい」と言う部下
 指示に従うことが部下の仕事なので、仕事をしっかりやろうとしていると言えるが、いつも上司に指示を仰ぐクセがついてしまうと、自己判断で行動できないままになってしまうことがある。
 前者は上司に対し従順なので「他人本位」と言えるが、後者は言われないとできない子供のようなので「自分本位」と言える。

β. 「自分の好きなようにやらせてほしい」と言う部下
 自分の行動を自分で決める自己判断力があると言えるが、右も左も分からない状態からそれをやってしまうと、判断を間違えることが多い。ただ、自分の意思で主体的に仕事に取り組もうとする姿勢がある。
 前者は自分勝手な我儘なので「自分本位」と言えるが、後者は自分の力でやって
早く自立すれば、上司の負担が減るので「他人本位」と言える。

 ここまで見てみると、上司も部下も『自分本位』と『他人本位』のうち、自分はどちらの視点から言っているか、どちらの視点から言っているように相手に写っているのか、が大事だと思われます。

A. 「私の言った通りにしろ」と言う上司は、【支配】と【支援】
B. 「自分自身の頭で考えろ」と言う上司は、【放任】と【促進】

 α. 「ちゃんと指示を出してほしい」と言う部下は、【服従】と【依存】
 β. 「自分の好きなようにやらせてほしい」と言う部下は、【反抗】と【独立】

 このようにまとめてもいいかもしれません。そして、

♠︎上司の、支配と放任は【自分本位】、支援と促進は【他人本位】

♣︎部下の、服従と独立は【他人本位】、依存と反抗は【自分本位】

となります。
 ではここで、【相性】ではどんな組み合わせが良いのか、軋轢が生まれるのはどんな組み合わせなのか、【自分の頭】で考えてみてください。あるいは、自分の今までの経験を振り返ってみてください。自分はどうだったのか、相手はどうだったのか…?


 さて次に、人の【成長】という視点から見てみましょう。人間は常に成長していくものです。加齢による身体の老化は止められませんが、精神はいつまでも成長し続けることができます。ですので、成長するのは若い部下だけではありません。上司だって成長することはできます。
 では、人の成長と、上司と部下の相性はどんな関係があるのでしょうか。



II. 成長と相性

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 自分の頭で考えて行動してほしいと思っている上司からすると、指示がないと動けない部下に対してはやきもきしてしまいますが、どうすれば「部下が自分の頭で考えて行動するようになるのか?」という『課題』を解こうとしていると思えれば、また違った捉え方ができるようになります。そして、部下からすれば、自分の頭で考えて行動できるようになれば【成長】と言えるでしょう。

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 「指示が欲しい」部下からすれば、指示を出さない上司にはイライラしたりするかもしれませんが、例えばサッカーの試合中、監督にいちいち指示を出してもらい、その通りに動いている選手なんていません。試合中の選手はあくまで「自己判断」で行動します。仕事もそれと同じだと考えれば、指示を待つことがいかにバカバカしい行為かが分かるでしょう。いつまでも指示がなければ動けないようだと、【成長】は止まっています。

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 指示通りに動いてほしいと思っている上司からすると、自分勝手に動く部下に対しては苛立たしいことが多いと思いますが、どうすれば「部下の行動を制御できるようになるのか?」という『課題』を解こうとしていると思えれば、対応の仕方が違ってきます。ここで大事なことは「支配」ではなく「制御」です。
 英語の『control』には支配という意味が含まれていますが、『management』には支配の意味はありません。あくまで「制御」という意味です。そして、上司のことを「マネージャー」と呼ぶことも多いと思います。
 自分勝手に動く部下の行動は、上司から見ているとまだまだ「危なっかしい」ものです。うまく「制御」してあげてください。こういう部下は、ある程度放ったらかしにしておくこともできますが、その分【教える機会】が減るので、上司自身の【教える能力】が上達することがありません。上司の【成長】は止まってしまいますね。

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 自己判断で動きたい部下からすれば、いちいち行動を制限される指示を出してくる上司は鬱陶しいこともありますね。しかし、前述の通り、上司の出す指示には「支配」と「制御」の2通りの意味があります。自分の上司が出してくる指示はどちらなのか? それを見極めることが大切です。そして、見極められるようになることは【成長】と言えます。命令されずとも自分の判断で行うことが、そのまま上司の望むことになっているようになれたら、評価されると思いますよ。


 このように視点を【成長】にしてみると、相性が良いから成長も良いというわけにはいかないことがあるのです。もちろん、上司も部下も同じ『人間』ですので【気が合う】ことが大切な要素にはなってきますが、ストレスのかかる相性が悪い組み合わせでも、それぞれの捉え方1つで変わってくるものがありますね。

 それぞれの思惑を俯瞰してみると、根底には「失敗したくない」「失敗しても構わない」「失敗させたくない」「失敗させてはならない」など、【失敗】というキーワードが浮かび上がってきます。
 では最後に、成長に必要不可欠な【失敗】の視点から見てみましょう。



III. 失敗と不足

A. ミスは私がなんとかするから、やってみろ。
B. 尻拭いするのは私なんだから、ミスはするな。

α. いつまでも上司に謝ってもらってちゃダメだな。
β. 上司が謝ってくれるから、このままでいいや。

 さて、さっそく4つの心情を見てもらいましたが、これらを見てあなたはどう感じますか。それぞれの心情を持つ上司や部下は、【どんな】上司や部下なのでしょうか?

☆ 他人本位で考える上司、成長を促す上司
★ 自分本位で考える上司、成長を邪魔する上司

☆ 他人本位で考える部下、成長を求める部下
★ 自分本位で考える部下、成長を拒絶する部下

どんな上司が、どう思っているのか。

どんな部下が、どう思っているのか。

 上司も部下も、失敗を恐れる人は【責任】に対して誤解をしているのではないかと思うことがあります。もちろん、失敗したら責任を取らなければならないのは当然です。どんな会社もそうなっています。そして、その責任には2つあります。

 ・上司でなければ負えない責任
 ・部下でも負える責任

 この2つがあります。そして、であるならば責任は【分割できる】のです。どちらか一方がまるごと背負うなんてことはあり得ません。なぜなら、上司と部下では責任の【種類が違う】からです。種類が違うから、2つに分割できるのです。
 それなのに、一方的にまるごと背負わなきゃいけないと思っている上司や部下がいます。いやいや、あり得ません。お互いがお互いの背負うべき責任を負っているからこそ、仕事の分担ができ、それぞれの役割がまっとうできるのです。

 部下の【失敗】は部下の責任です。そして、それによって生じた【不足】に対して上司が責任を負います。

⦿⦿部下の失敗⦿⦿
 失敗は部下の責任ですが、失敗の原因は、上司の指示が足りないこともあれば、部下が指示を間違って解釈してしまっていることもあります。
 上司はよく「これ、手が空いたらやっといて」とか「時間のある時で構わない」とか言いますが、そう言われた部下は「優先順位は最後でいいのか」と解釈することがあります。ですので、今、進めている仕事を止めてまで先にやる必要はないと考えますし、今の仕事が終わっても次の仕事があるので、上司に頼まれた仕事はどんどん後回しになります。
 そこへいきなり「さっき頼んだ仕事はどうなった?」と聞いてくるのですから、「まだやってません」と答えるしかありませんよね。それを聞いた上司がなんと言うかは分かる人も多いと思います。
 この場合は、最初の上司の頼み方が悪いのです。「今、進めてる仕事がまとまったらやって」や「悪いんだけど、まず先にこの仕事をやってくれるかな」などの伝え方をすれば、部下は「優先順位はこっちの方が高いのか」と捉えることができますので、「最後でいいか」なんて解釈をさせずにすみますね。
 部下の方からも、「最低でも何時までに欲しいかを言ってくれると助かります」や「この仕事の次に取りかかります」など、上司が予測できるように促す聞き方や伝え方がありますので、返事の仕方を工夫してみるとよいでしょう。

◉◉上司の不足◉◉
 不足は上司の責任ですが、そうなってしまった原因は、部下に伝えるべきことを伝えていなかったり、そもそも最初の計画(算段)が甘かったりします。
 行き当たりばったりの【思いつき】で指示を出してしまう人もいますが、この場合、朝令暮改になりやすいので、部下は余計な仕事に振り回され右往左往した挙句、意味のないミスをすることにもなり得ます。思いつきで指示を変えるのであれば、最初に出した指示は『上司のミス』と言えるはずです。それなのに、そのミスは棚に上げておいて、訳の分からないまま進めていく中で発生した部下のミスだけは糾弾する。これでは部下はまったく納得できないと思います。
 指示を変えるのであれば、まず「さっきの指示は私が間違っていたから、すまないがこっちに変えてくれないか」などの言い方をする方がいいかもしれません。つまり、自分のミスを認め、謝った上で、次の指示を出すことが大事だと考えます。
 朝令暮改になってしまう場合、『計画性がない』と言えるのですが、もう1つ
、『臨機応変』にやろうとしている時も、朝令暮改になりやすいのです。どちらにしろ振り回されるのは部下の方なので気持ちは分かりますが、はっきり言ってそんな時は受け身で指示を待つのではなく、【自己判断】でどんどんやってしまう方がいいのです。指示を聞いたところでどうせすぐ変わってしまうのですから、意味がありませんし、上司からしても『指示なんて出してるヒマはない』ときだってあるのです。そして、上司に何か言われたら「臨機応変に対応しました」と言えばいい
のです。たとえそれが失敗だったとしても『自分の頭で考えて動く練習が
できた』ので、いい練習になったのです。


 まとめると、失敗と不足の「責任はどちらにあるのか?」は、はっきりさせることができますが、『どちらに「原因」があるのか?』は、【そのときの状況次第】になります。だから、失敗と不足の責任を【混同してしまう】のです。

 そして、そこがはっきりしないから、責任を一方的に背負ったり背負わせたりしてしまうのです。上司として、部下が失敗してしまった時こそ、この部分を話し合うべきでしょう。
 先ず、失敗の責任は部下にあること、その不足の責任は自分にあることを説明します。次に失敗の原因となったものは何なのか、不足している原因は何なのか、こういったことを話し合ってみてください。
 大事なところは『ヒト』について話し合うのではなく、『コト』について話し合うことです。『ヒト』について話し合いを始めると、失敗や不足の話なので、どうしても『人格否定』を避けられないことが多いのです。私個人としては、人格否定はそこまで悪いことだとは思っていないのですが、やはり、言われる方だけではなく、言う方も気持ちの良いものではありませんから。
 その面、『コト』について話すと、そこに人格はありませんので、淡々と修正することができます。つまり、

 『ヒト』を正すことで、『コト』の失敗や不足をなくしていくのではなく、
 『コト』を正すことで、『ヒト』の失敗や不足をなくしていく。

ということです。逆行・逆算ですね。
 『ヒト』とは【人格】です。その人格が『コト』を生み出します。
 『コト』とは【事象】です。その事象は『ヒト』に生み出されます。

 つまり、人格が【原因】であり、その【結果】が事象です。ですので、

  {『コト』を正すことで、『ヒト』の失敗や不足をなくしていく} とは、
【結果を理想の形に近づけることで、そこに向かっていく人格が自然に軌道修正されていく】ことです。

 時空が広がるから、電磁波が伝わる のではなく、
 電磁波が伝わるから、時空が広が-イヤそんな話はいいのです❖

 ただ、失敗にしろ不足にしろ、あくまで自分たちの話であって、クライアントには関係のない話です。だから、最終的には部下の失敗も上司の不足も、上司が謝らなければなりません。その【立場】なのですから。
 部下の失敗を叱責するだけではなく、失敗しないようになるためにはどうすればいいのか、そして、自分の不足をどう補えばいいのかを考えなければいけません。
 そして、上司だけに考えさせるのではなく、部下として、どんな風に仕事に向き合うべきなのかを自分なりに考えていく。

 上司も部下も、共に成長していける組織が、良い組織と言えるのではないでしょうか。



おわりに

 こうやって2つにはっきり分けて考えると、視界がクリアになって分かりやすくなるんやど、あんまりね〜、良くないとも思うのよな。というのも、はっきり分けると【分離】するやん。それが組織の【分断】にもつながってしまうのよね。
 ただ、やっぱ『分かりやすい』とは思う。んで、新人とか若い子にはこういう説明の方がいいかもしれんね。まだ、曖昧な言い方やとどうしたらいいか分からんくなることが多いと思うき。

 上の立場に一番必要なのは【誠実な態度】なんじゃないかな〜と。何事もフェアに誤魔化さず話すこと。やから、部下が気になってるようなことは、部下が分かるようにはっきりさせてあげるのがいいんやないかとね。
 曖昧な言い方やと「誤魔化してるんじゃないか」とか捉えられたりするやんか。そうなると信頼関係が築けんくなる。指揮者と演奏者が信頼しあってこそ、最高のアンサンブルになるわけやし。

 あと、ホントかどうか知らんけど、若い子の「読解力」が落ちてるって話もどっかで聞いたことあるし、自分の経験上でもそう思うことはあったし。まぁそれを言うなら「お前の文章力はどうなんや」って話にもなってしまうんやけど。

 足りないのは、部下の読解力か、上司の表現力か…やね。

 話変わるけど、俺は『左利き』なんやけど、脳内科医・加藤俊徳(かとう としのり)さんによれば、左利きは【「言葉を使って考えをまとめるのに時間がかかる」傾向がある】みたい。
 実際、俺も【話す】のは苦手なところがあって、返事をするのに、思考が頭の中をぐるぐる回って時間がかかったり、つっかえたりすることがあるのよね。やから【話す】より【書く】方が、考えをまとめる時間があるき楽やね。もし部下や上司に『左利き』がおったら、こういうことを知っとくといいかもね。
 とはいえ『文章力が高い』かどうかと言われると、それはまた別の話やと思いますです、はい。

 最後に、私の戦友・現場コンサルタントX氏には、事例の話で協力してもらいました。ありがとうございました。

 ではでは、今回はこの辺で。
 エンディングはこの曲🎵 「Craig David - All the way」


*事例協力*
 現場コンサルタント X氏

*参考記事*
 ・最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか? 加藤俊徳  DIAMOND online

*参考書籍*
 ・ホワイト企業創生論〜陽気発する処、金石も亦透る〜 山﨑大剛 アメージング出版


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