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続・書くも、喋るも、雨のちハレ〜私の職務経歴2023年版

コロナ禍真っ只中だった2020年に、珍しく自分のことを書き残した『書くも、喋るも、雨のちハレ』の続編です。2023年になって、このコロナ禍を経験して働き方や人生観を見つめ直した人はいたかと思いますが、僕も同様でした。ですので、アップデート版として残しておこうと思います。

「七つの顔を持つ人」は続いているのか?

2011年、あの東日本大震災の年に僕は「七つの顔を持つ人になる」と決めました。決めただけであって、その七つの具体性はゼロではありましたが、それまでサラリーマン生活にどっぷりと浸かっていた僕に、ひとつの仕事に依存するリスクの高さに気がつかせてくれたのが、東日本大震災という外的要因でした。

最近は副業は前提の話のようになり、僕が12年ほど前に感じた「ひとつの仕事に依存するリスクの高さ」を痛感した人もいると思いますし、ひとつのクライアントに依存する経営、ひとつの収入に依存する暮らし、ひとつの投資先、などなど、外的な要因で人生が傾いてしまわないように、「七つの顔」という分散するリスクヘッジが変化の激しい時代を乗り切るアイデアになることを、12年前に実践していたことになります。偶然ですが….

では、2023年1月現在、「七つの顔」が個人事業主と会社代表という2つの顔に分類され、さらにその中でどう細分化しているのか整理してみたいと思います。


個人事業主として

■スポーツジャーナリスト・スポーツライター

トレランやランニング界隈で繋がりのある人は、僕の職業をこう認識していると思います。つい先日、トレランコミュニティが集まってフットサル大会が開催されました。その時に"今ごろ?"と思わず言ってしまった記事2つが話題になっていました。

1つが「最高強度を持った仏教の行者×スポーツ」という荒業の話にまとめた『1300年で2人のみ! 千日回峰行満行の大阿闍梨 ~塩沼亮潤さん~』。2014年公開の記事ですが、取材自体は10年前の2013年でした。なつい!

「めっちゃいい!」「やっと、ヒロシに追いついたよ」「10年前は全く興味なかったんだけどね」なんて言われながら、記事が10年経っても劣化せずに伝わっていることを実感できて嬉しかったです。

もう一つが、『鎌倉のトレイルラン騒動を徹底追跡。ランナーと非ランナー、共存の道は?』

これも2014年の記事ですが、取材は2013年から断続的に行われ、雑誌に寄稿してからWeb化したものでした。そう、トレランが新規のスポーツとして世に参入し始めたことで、さまざまな軋轢を起こしていた、「山の暴走族」とも五大新聞に書かれたほど瞬間最大風速を記録した時代、鎌倉で起こった騒動をまとめたものでした。

年が明けてから、なぜかこの記事がSNSで回覧・シェアされ、「この記事って山田さんだったんだ!」「こんなことあったなんて知らなかった」「新規参入って大変ね」などと感想をDMでもらったりしたのが、つい最近の出来事です。正直"なぜ、今ごろ?"しかありません(笑)。

ギア・ハウツー・レースが鉄板ネタのDoスポーツにあって、これら三種の神器をあまり取り扱わないライターなのですが(不得意なわけではありませんよ!むしろ、書けますよ!)、「スポーツ×社会」「スポーツ×歴史」「スポーツ×土木」みたいに、何かと掛けわせた新しい切り口を模索し、10年後でも読める記事というのが当時の意気込みでした。

その通りになれたんだな、と嬉しい2023年1月でした。

■広告系デザイン会社のプロデューサー

2011年までのサラリーマン時代、皮革メーカーの企画やマーケティングという名の商品開発といった"物づくり畑"を歩んでいた、その延長線上にあると思い込んでいるのがこの仕事になります。

グラフィックを中心にした紙もの全般(カタログとか)から、リニューアル系のWebもの、SNSと連動させたキャンペーン企画、そのために必要な動画やスチールの撮影、そもそものSNS運用やら、データ分析などなど、広告に関わるクリエイティブ周りであれば、プロデューサーという肩書きだと偉そうだけど、平たくと言うと企画営業みたいな考えで立ち回っております。

人によってプロデューサー論なるものはたくさんあるのだけど、「仕事を作り、利益を生む役割」というのがシンプルな僕の解釈です。なので、僕はクリエイティブな作業はほぼやりません。あったとしても、少々、ディレクションする程度です。第一、僕のPCにはフォトショもイラレもXDも入っていませんしね(笑)。

コロナ禍のこの数年、世の企業は広告費を大削減しました。最近になってエンジンをかけ直してきていますが、コロナ前に比べるとまだまだ水準は戻ってきていません。社会活動に大きな影響を与えたパンデミックは、プロデューサー業務にも多大な影響を与え、新規開拓は全くままならず、既存のクライアントに寄り添いながら、時代感を捉えた新しいアイデアを創出・実装する日々でした。

幸い、皮革メーカーという"物づくり畑"のスキルから、アウトドアメーカー、スポーツメーカー、ホイールメーカーなど、"物づくり"のクライアントとの共創を続けることができていて、どう売るか?という出口戦略とそれに伴うクリエティブを提案することは大の得意分野と言えます。

■編集者

スポーツライターを通じて様々な編集者とお仕事をご一緒していくと、その業務を理解することにつながっていました。ライターより俯瞰した立場で、ライターだけでなく、カメラマンやデザイナ-など、制作に携わる関係者に制作の方向性を示し、企画したものを作り上げていくのが編集者だと解釈しています。チームを作り、まとめる司令塔のようなお仕事ですね。

具体的には、企画を立て、仕事を依頼し、収支を計算し、依頼した文章や写真・デザインなどを確認して校了させます。また、デザインや宣伝用コピーのアイデアを練り、商品ができ上がったら、それを売るための戦略も考えます。これはデザイン会社のプロデューサー業務に内包されている”仕事の近さ”を感じます。

■ライター/宇宙ライター

ライターは与えられたテーマを文章(テキスト)という形で成果物にする仕事です。WEBであればSEOやらキーワード選択に気を使い、「タイトルと最初の100文字が命」と言われるWEBコンテンツの特性を理解して仕上げる、いわば職人のような仕事と理解しています。

スポーツは競技だけでなく、その裏側にドラマがあり、表には見えないネタの宝庫です。また、チームスポーツになれば、コーチングの要素やチームビルディング、人材育成といった側面もあり、他の分野への応用が効きます。

企業HPなどで経営者インタビューをする。なんてものから、開発秘話を紐解く的なものも分野問わず得意な領域で、テック系やクリエイティブ系の分野も得意です。なぜかって? 今やスポーツも広告デザインもテクノロジーは不可欠ですし、多くのクリエイターと日々仕事してますから(笑)。

さまざまな分野のライティングをしている中で、ここ数年、宇宙に関わるライティングをよくさせてもらっています。米国の天文学者カール・セーガンが手がけたTV番組を子どもの頃に見て以来、宇宙は好きでした。いつか、宇宙に携わる仕事でもできたらなぁとおぼろげながらいたところ、宇宙の仕事が舞い込んできます。2021年9月に発売された雑誌ゲーテの「宇宙特集」です。

20ページほどの大特集の中で、10ページ近くを担当させてもらい、宇宙ベンチャーの経営者、投資家、メーカー、サイエンティスト、元JAXAの宇宙大好きおじさんなど、宇宙周りのいろんな方々にお話を伺う機会を得ました。

今でも、宇宙系企業のWEBコンテンツを手掛けさせて頂いていて、小さい頃の夢がひとつ叶った気持ちでいますが、「宇宙は広報が難しい」「宇宙ライターは人材不足」というお話をよく耳にします。

素粒子、物理学、工学、最新テクノロジーといった専門的かつ高度な知識を要することや、スケールが大きすぎて自分ごと化できなかったり、遠い世界の出来事だと一般に敬遠されがちなことが、宇宙広報の難しさであり、それを噛み砕いて言語化する広報スキルを持ち合わせた人材が決定的に不足しているそうです。

「山田さん、宇宙ライターと名乗ったら?」

何人もの方々にそう背中を押され(きっと冷やかされ)、すぐ付け上がる性格もあって「宇宙ライター」とときどき呼ばせてもらっています。宇宙系で何かありましたら、ぜひお声がけください!

■アスリートマネジメント

ひょんなことから、2021年4月あたりから、プロアスリートのマネジメントをさせてもらっています。完全に黒子の役割ですので、表立って公表していませんし、知る人は関係各位のごく僅かです。

役割は至ってシンプルで、そのプロアスリートが叶えたいことを全力でサポートする。これに尽きます。サポート頂いている企業とのリレーション、新規サポート企業の獲得、SNSコンテンツの企画、メディア露出と戦略・折衝、ゲスト出演依頼への対応・交渉などなどです。

アスリート本人になぜ、僕だったのか?と聞いたところ、スポーツライターとして業界に詳しいからというより、広告系デザイン会社のプロデューサーというスキルに魅力を感じたからだったようです。企業や自治体と対等に話ができたり、日々、クリエイターと交わっているノウハウが活きると感じたからのようでした。


マーケティング会社の代表として

こうして、個人事業主として毎年青色申告を自分でこなしていたわけですが、公益性のある法人とお仕事をする機会がありました。ただし「個人ではなく、法人化してほしい」と言われ、急いで合同会社を作った経緯があります。2021年春のことです。

ずっとひとりで、個人事業主として生きてきて、法人にする気持ちがなかったので、仕方なく作った会社ですが、業務内容として、個人事業主と明確な違いを出した方が良いというアドバイスももらったことから「マーケティング業務」として法人登記をしました。

マーケティングって便利な言葉で、なんでも「マーケティングの一貫です」と幅を持たせることができるかなと、ただそれだけで、突貫工事のように作ったひとり親方の会社なんですが、不思議ですね、法人にすると仕事が増えていく…..

・実店舗への集客施策を立案してほしい
・放置していたECサイトを立て直したい
・SNSを活用した自社ECサイトへの流入施策を考えてほしい
・動画コンテンツを設計してほしい
・新規事業立ち上げのコンセプト立案から関わってほしい

僕の考えるマーケティング業務とは、建築家のような立ち位置かもしれません。計画段階では、クライアントのお悩みや課題、実現させたいことをヒアリングし、納期や予算を整理し、プランを設計し、実施段階になると、大工さんや左官屋さん、鳶さんや構造設計家、資材関連の業者など職人というクリエイターを束ねて成果物を制作すること。

とはいえ、ひとり親方の会社ですし、個人事業主としての仕事も継続してありますので、リモート前提の働き方で、コツコツとやらさせて頂いています。マーケティングでお悩みがあれば、お力になります!

二つの顔を通じた副産物

こうして、2011年に「七つの顔を持つ人になる」と宣言してから干支が一周した今、個人事業主と会社の代表という二つの大分類にアップデートされた僕ですが、税理士に頼らずに自分で青色申告書や決算書を作って税務署に提出しています。

個人事業主としては、税理士さんに頼むほどの規模じゃない!という理由で、クラウド型会計ソフト「MoneyForward」を使ってゼロから会計を学んだことで、財務にも明るくなってきました。毎月のように帳簿をつけていると、お金の流れがわかってきたり、売上予想から次の立ち回りを考えたり、勘定科目のこと、税金対策とかまで見渡せる視点を持つようになって、税理士や会計士のYoutubeチャンネルを見るようになりました。

法人を設立してからも、税理士さんに頼むほどの規模じゃないことから、もう一つのクラウド型会計ソフト「freee」を使って自分で会計処理を行なっています。個人の青色申告と法人の会計処理の違いにまだまだ戸惑いはありますが、「財務三表」と呼ばれる貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)の3つも読めるようになりました。

お金の教育が乏しい環境だったこともあって、最も知識が薄かった(関心がなかった)会計・財務分野へのスキルアップは、二つの顔を通じた大きな副産物です。個人事業主の目線とひとり親方の法人経営者の目線で、財務の相談とかきっとできると思います。インボイス制度はどうしたらいいの?とか、マイクロ法人って何?とか(笑)。

2008年のリーマンショックで勤めていた会社がガタつき、会社とともに沈んでしまうことを恐れて退職願いを出した直後の東日本大震災。転職市場はシャッター街と化し、自分じゃどうすることもできない外的な要因で人生が傾いてしまうのなら、いっそのこと、舵は自分で持ち、リスクヘッジの思考で、複数の仕事をこなす道を選んで12年。ま、なんとか生きています。

これからの5年、10年は今までよりもっと激しい変化の時代なのでしょうね。先のことが遠すぎて想像がつかない時は、目の前のことに邁進するのみです。ひとまず2023年をしっかり生き抜いていこうと思います。



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