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day 27|写真がアートに及ぼした影響

前回は、写真の誕生がアート界に与えた影響について触れてみました。

写真が誕生する以前は、現実世界を忠実に表現する "写実主義" がアート活動の主流でしたが、写真の登場により、そのトレンドに変化が起きました。現実世界の忠実な再現は写真によって代替されたため、アート側は現実世界の本質についての認識を改め、色彩・光・動きなどの表現にフォーカスをあてる "印象派" というアートスタイルの誕生につながりました。


印象派の誕生後、アートのトレンドがどのように変化していったのか書いてみたいと思います。


モダニズムにおける変化

20世紀の初頭、「従来の伝統や規範の打破」、「新しい表現形式や技法」、「アイデアの模索」を特徴とする "モダニズム" という文化・芸術運動が起こりました。その流れのなかで、"野獣派" や "表現主義" といったアートスタイルが誕生します。野獣派は、鮮やかで純粋な色彩、強烈な色の対比、簡潔な線と形を用いて、アーティストの芸術的感覚を表現するスタイルです。表現主義は、強烈な色彩、動的な筆触をもちいて感情や心理状態を表現します。このアートスタイルの変化によって、感情や環境を明確に伝える濃密で強烈な絵画が増えました。

The first was Fauvism, which represented real scenes and subjects using bright colors which usually did not correspond with reality.

最初のムーブメントはフォーヴィスム(野獣派)で、現実の風景や主題を、通常は現実とは一致しない鮮やかな色彩で表現した。

How Photography Pioneered a New Understanding of Art


20世紀前半、第一次世界大戦後は、グロテスクで暗い雰囲気のアートが増えました。感情に焦点をあて、社会を正確に描こうとすることで、写真では表現できないものを描いたのです。このモダニズムの流れのなかで代表的な動きとして "キュビズム" が挙げられます。キュビズムでは、従来のような立体的な表現を否定し、対象を二次元的に捉えかつ複数の視点から描くことが特徴的です。写真のような単なる視覚的現実を超越し、構造的・抽象的な物事の解釈を試みたものです。

Probably one of the most famous movements within Modernism is Cubism.

モダニズムの中で最も有名な運動のひとつは、おそらくキュビスムだろう。

How Photography Pioneered a New Understanding of Art


そして、1920年頃になると、シュルレアリスムという運動が生まれます。この芸術運動は、物理的な現実空間ではなく、夢や無意識の表現を探究しました。写真では到底およばない、「心理」の領域にアートが入り込んでいき、精神分析学の洞察からも影響を受けています。

As in other Modernist art movements, Surrealism is complementary to photography because it represents something well beyond its reach: the human mind and the dream world.

他のモダニズム芸術運動と同様、シュルレアリスムが写真と相補的な関係にあるのは、人間の心や夢の世界という、写真には到底及ばないものを表現しているからである。

How Photography Pioneered a New Understanding of Art


モダニズムが写真に与えた影響

モダニズムを手掛けるアーティストたちは写真を活用し、絵画の補助として用いたりしました。その過程で、新しい芸術形態として "フォトモンタージュ" が生まれます。これは、写真の断片を切り抜いて、それらを切り貼りして新しい画像をつくりあげる技法です。この技法も、写真と異なる表現として、非合理性や超現実的なコンセプトを伝える手段として確立しました。この技法は、現代でも広告やウェブデザインで用いられています。

Despite not being created with artistic purposes in mind, photography was quickly explored by artists.

アートを目的として作られたわけではないにもかかわらず、写真はすぐにアーティストたちによって探求された。

How Photography Pioneered a New Understanding of Art


以上のように、写真の誕生がアートにインパクトを与え、アートスタイルが変化していきました。現実世界の一瞬の切り取る "写真" というアートスタイルとの差別化として、現実の本質を絶え間ない動きとして捉える "印象派" が誕生し、さらに強烈な表現を用いる "野獣派"、現実ではなく心理や感情にフォーカスする "表現主義" が誕生します。そして、現実を複数の視点から捉える "キュビズム" 、夢や無意識の表現を探究する "シュルレアリスム" へとアートスタイルが移り変わります。最終的には、写真そのものを用いた ”フォトモンタージュ” という表現技法まで確立しました。

この「写真の誕生」を「画像生成の誕生」に置き換えてみると、画像生成AIが今後のアート活動に及ぼす影響や、その周辺で起きる変化について考えるきっかけになるのではないかなと思います。






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