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day23|AIとアート (2)

AIが生成するアートは、アートなのか?

この問いに対して、今回は、アート様式のひとつである "Abstract expressionism (抽象表現主義)" の観点からAIアートについて述べた記事に触れてみたいと思います。

参考: 抽象表現主義




Is AI the New Abstract Expressionist?

反抗的拒絶としてのアート様式

"抽象表現主義"というアート様式は、第二次世界大戦後に生み出されました。当時の伝統的慣習に対する反抗的な拒絶として、個性や自由を大胆かつ抽象的に表現するスタイルでした。

In the aftermath of World War II, abstract expressionism burst onto the art scene as a defiant rejection of traditional forms and conventions.
Artists like Jackson Pollock and Willem de Kooning embraced chaos, emotion, and spontaneity, eschewing realistic depictions for abstract, subjective experiences.
This movement was not just an artistic evolution; it was a bold statement of individuality and freedom, contrasting sharply with the state-controlled art of the Soviet Union and shaped by the Cold War.

第二次世界大戦後、抽象表現主義は、伝統的な形式や慣習に対する反抗的な拒絶として、アートシーンに登場した。
ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングのような芸術家たちは、混沌、感情、自発性を受け入れ、写実的な描写を避け、抽象的で主観的な体験を求めた。
このムーブメントは単なる芸術的進化ではなく、個性と自由を大胆に主張するものであり、ソビエト連邦の国家統制芸術とは対照的で、冷戦によって形成されたものだった。


創造的技術としてのアート様式

AIアートという様式は、デジタル時代の技術革新が生み出したものです。明確なメッセージというよりも、テクノロジーとどのように向き合うべきかという問いを与えてくれています。今後、社会や政治に対してどのようなストーリーを展開していくかについては、未知なるものです。

AI art, meanwhile, emerges in a world dominated by technology and data.
It represents the integration of human and machine, posing philosophical questions about the future of creativity and the role of technology in our lives.
Just as abstract expressionism was used as a tool of soft power and cultural diplomacy, AI art has the potential to become a medium for expressing and shaping societal and political narratives in the digital age.

一方、AIアートは、テクノロジーとデータに支配された世界に出現した。
AIアートは、人間と機械の融合を象徴し、創造性の未来と私たちの生活におけるテクノロジーの役割について哲学的な問いを投げかけている。
抽象表現主義がソフトパワーや文化外交の道具として使われたように、AIアートはデジタル時代の社会的・政治的物語を表現し、形成する媒体となる可能性を秘めている。


二つの様式の共通項

抽象表現主義とAIアートの共通項として、「予測不可能性」と「コントロールの欠如」が挙げられています。抽象表現主義においては、絵のなかで表現される自発性や混沌が不確実な作品をつくりあげています。AIアートについては、不確実性を伴うアルゴリズムによって思いがけない作品ができあがります。

Furthermore, both movements involve a degree of unpredictability and lack of control.
In abstract expressionism, this was seen in the spontaneous and often chaotic application of paint, where the final outcome was uncertain.
In AI art, the unpredictability lies in the algorithms that can create unexpected and novel artistic outputs, beyond the explicit intentions of their human programmers.

さらに、どちらの動きも、ある程度の予測不可能性とコントロールの欠如を伴う。
抽象表現主義では、最終的な結果が不確実な、自発的でしばしば混沌とした絵の具の塗布にそれが見られた。
AIアートでは、予測不可能性は、人間のプログラマーの明確な意図を超えて、予期せぬ斬新な芸術的アウトプットを生み出すことができるアルゴリズムにある。


認識の拡張

両方の様式とも、「アートとは何か」という認識を変えるきっかけを与えてくれるものです。人間的な感情に由来するのか、データやテクノロジーを基盤とするのかという違いはあれど、その時代の社会、テクノロジー、アートの相互作用を表現するという本質は同様であり、アートの可能性を押し広げるものとなり得ます。

At their core, both abstract expressionism and AI-generated art challenge our perceptions of what art can be.
They force us to question our definitions of creativity and the role of the artist.
While one is deeply human and emotional, and the other is rooted in technology and data, both serve as mirrors to their times, pushing the boundaries of artistic expression and reflecting the complex interplay between art, society, and technology.

その核心は、抽象表現主義もAI生成アートも、アートとは何かという私たちの認識に挑戦するものだ。
創造性の定義やアーティストの役割について、私たちに疑問を投げかけるのだ。
一方は深く人間的で感情的であり、もう一方はテクノロジーとデータに根ざしているが、どちらも時代を映す鏡として、芸術表現の限界を押し広げ、芸術、社会、テクノロジーの間の複雑な相互作用を反映している。


今回は、「抽象表現主義」の観点を取り入れつつ、AIアートについて述べている記事について触れてみました。抽象表現主義とAIアートという両者の様式の本質には、社会で起こる複雑な相互作用を映し出すという共通部分があり、アートの可能性を拡げるとともに、人間の認識をさらに更新させていくと考えられます。そういう意味で、AIアートもアート様式のひとつとして、社会に影響を与えていくかもしれません。


参考文献


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