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「首長のふるさと納税へのかかわり方」について(前編)

※top画像は、日経新聞さんから拝借しています。

もう3月も半ばになってしまいました。ここ数か月全然時間が無くて、これが2023年のnote第一弾になります。
今回は、昨年末に視察に来られた自治体さんからもご質問があったんですが、「首長さんのふるさと納税へのかかわり方」について触れたいと思います。
とても重要なことだと思っていて、講演では、かなり時間をとって話をさせてもらっています。なんだったら、これだけ喋って終わりの場合もあります。それくらいここは重要だと考えているので、ついつい熱が入って長くなったので前編・後編に分けています。
まず、前編では、私が実際に全国の首長さんのふるさと納税へのかかわり方を見て学んだことを中心に持論を展開します(笑)。後編では、昨年の11月、愛知県の町村の首長さん15人にお伝えした、「首長の皆様へ、9つのご提案」を中心に、その考え方をお伝えしたいと思います。
長くなりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、寄附を沢山集める自治体の首長は、ふるさと納税へのかかわり方が凄く上手です。その点、本市の千代松市長は、間違いなくトップクラスだと思います。だから、泉佐野市のふるさと納税が強いといっても言い過ぎではないと思っています。
「首長のふるさと納税へのかかわり方」は、取組みの方向性を決める段階では首長が中心的な存在になるので、重要なのは当然といえば当然なんですが、効率的に(私はよく「最短距離」と言います。「最短距離=回り道をしない」という意味です。)ふるさと納税を集めることにも関係しますし、取組みに欠かすことの出来ない担当職員のモチベーション(熱量)にも大きく影響すると思っていて、実は、「首長さんのふるさと納税のかかわり方」が一番重要なんじゃないかと思っている今日この頃です。

1.敵は外ではなく、内にいる

「敷居を跨げば七人の敵あり」と言いますが、ふるさと納税を推進しようとすると、ドラクエのようにつぎつぎに敵が出現します。
そもそも、ふるさと納税は、制度創設時から国が示している、ふるさと納税の理念の中の「ふるさと納税の三つの大きな意義」にもあるように、「自治体間の競争」が前提にあります。※以下、原文ママです。

“自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。”

他の自治体との戦いでもあるので、その敵は、他の自治体だったり、競合する返礼品とお考えになる方が多いのではないでしょうか。
もちろん、それも敵ではあるんですが、さらに強敵なのは、外でなく内にいると私は考えています。
その内の敵を最短で攻略できるのは、首長だと考えていて、なので「首長のふるさと納税へのかかわり方」が重要だと考えている次第です。

ふるさと納税は、新しい取組みだからこそ、役所の決まりごとにそぐわないことが多いと思います。
ポータルサイトの手数料は、今でこそ成果報酬が当たり前ですが、自治体で成果報酬でお金を支払うなんてことはこれまで無かったので、まずは「前例が無い」というアレルギーがありました。
あと、予算についても、寄附規模の大きな自治体では、経費も多くかかるため、どうしても機動的な予算が必要になることから、最近では「専決予算」で執行する自治体が増えましたが、これも先人が切り開いてくれた道であって、以前は「専決予算なんか、災害時など、緊急性のあるときだけ」という考え方で、なかなか認められませんでした。今でも認めてもらえてない自治体のほうが多いのではないでしょうか。
このように、旧態依然とした役所の体質だと、なかなか前に進まない問題があって、でもそれを解決していかないと、なかなか寄附を沢山集められないのも事実ということで、その狭間で担当職員は苦しんでいるのではないでしょうか。
例えば、以下のようなことです。
・ポータルサイトを増やしたいけど、財政課が予算を付けてくらなかったり、仕事が増えると上司が反対したり
・優良な中間事業者に委託したいから、プロポーザル方式で入札したいのにやらせてもらえず、入札だと価格優先になるので、安かろう悪かろうな事業者に委託せざるを得なかったり
・面白い取組みをしたいけど、同僚や上司が協力的で無い、縦割りで関係課が協力してくれない、上司が議会対応を嫌がったり

ふるさと納税を担当していると、このような経験をされた方は少なくはないはずです。こうなってしまうと、外の敵と戦うどころではなくて、内の敵にやられてしまって、戦う前に負けています。
なので、外の敵と戦う前に、まずは、内の敵を攻略する必要があるということですが、これを職員がやると本当に大変で、なかなか時間がかかりますし、逆にこれを突破することができない職員さんの方が多いのではないでしょうか。
それで、環境を整えることができないままに取組みを進めてしまい、やっぱりうまくいかず、モチベーションが下がってしまって、いつのまにやら中間事業者に任せっきりになっているという方もいらっしゃるんじゃないかと。

繰り返しになりますが、内の敵を最短で攻略できるのは、首長しかいないと思っていて、なので、「首長のふるさと納税へのかかわり方」が重要だと思っている次第です。
前置きが長くてすいません。笑

2.指令!首長の爆走を止めよ!(笑)

首長の果たす役割が重要性は、先ほど述べた通りですが、だからこそ、首長がかかわり方を間違った時は、逆にとても厄介な存在になります。
つまり、首長さんは “役割を間違えないで欲しい” というお話です。

しかしながら、結構な確率で役割を間違ってしまう首長さんが出現してしまうのがふるさと納税です。ただ少し擁護すると、首長さんは政治家なので致し方がないところもあると思いますし、一生懸命だからこそという部分もありますので、全てを否定する訳ではありません。
しかしながら、私が言う「最短距離で取組む(=回り道をしない取り組み)」という観点でいうと、これほど厄介なものは無いとうのが正直なところです。
一度ボタンを掛け違えると、首長さんが一生懸命になればなるほど、その圧に押されて事務方は何も言えなくなって、意見が対立していることにすら気づかない状況になります。こうなってしまうと、双方とも一生懸命ふるさと納税を取組みたいというベクトルは同じなのにうまくいかなくなって、非常にもったないと思います。
もちろんそうなったとしても、首長さんの意向を踏まえつつ、折衷案でも最終的にはうまくいくこともあると思いますが、遠回りになってしまい、手間もコストも余計にかかってしまうことになります。

全てでは無いですが、私が相談を受ける自治体さんのほとんどは、担当職員の方がちゃんと現状分析もできていて、課題も把握している場合が多く、一方で、首長さんが持つ情報は、断片的というか、メディアで見聞きした情報などを頼りにしていますし、「J●Bは、旅行商材に強い」とか、「レッ●ホーズ大手だからよくやってくれる」というようなイメージが先行しているようにも思います。
メディアなんか良いようにしか報道しないですし、どこの自治体でも同じ取組みが上手くいくわけではありません。また、イメージは単なるイメージであって、それが事実であるかどうかはちゃんと取り組んでいる自治体さんに確認する必要があります。
私も優れた取組みをしているという報道を見ると、よく直接電話をして担当者に確認するのですが、報道では出ないウラ話が有る場合が多くて、実はうまくいってなかったりなど、報道をストレートに受け取るのは危険です。
あと、自治体によって資源や環境が違いますので、果たしてその取り組みが別の自治体がやってうまくいくかどうなのか、という問題もあります。このように職員は、しっかりと裏取りをします。
でも、それを職員が首長さんに報告すると、信頼関係があれば納得されますが、関係ができてないと、「提案に反対する」とか、「やりたくないから、やらない為の言い訳ばかりを探している」というふうに受け取られてしまい、さらに信頼を失ってしまい、これがこじれると暴走を加速させてしまうことにもなりかねません。

市長と一緒にお伺いしたある自治体さんでこういうことがありました。
その自治体は、関西空港からヘリコプターだと15~20分ほどの距離なので、本市のりんくうタウン(関西空港の対岸エリア)からその町までヘリコプターで行って、花火大会を上空から見るという体験型の返礼品をやってはどうかという提案が首長さんからありました。確か、寄附額は、数百万円とのことでした。
お話のしやすい気さくな首長さんだったので、「花火大会は年に一回ですよね。世の中には物好きな方いらっしゃるでしょうから申し込みは有るかもしれません。例え数百万円いただけたとしても、1件だけなら話題性はあっても大きな寄附は見込めませんよね。それを実現するには、様々な調整など結構な労力がかかるでしょうから、それだったら、返礼品を10個増やす方が、手間もかからないですし、数百万円以上の効果が期待できるのではないですか。」と正直なところを申し上げました。
その首長さんには、ご理解いただき、ヘリ花火の話は無くなり、お陰で遠回りをせずに済みました。これは、本市が遠回りしなくて済んだだけでなく、その自治体さんも遠回りせずに済んだのではないかと思います。
ただ、その首長さんも良かれと思って一生懸命考えてくれたでしょうから、申し上げるのは少し心苦しかったですが・・・。

私は、ある程度経験という部分があるので、少々説得力もありますし、首長さんに嫌われても何の影響も無いので、少し気を使うものの、反論することができますが、その自治体の職員さんだとそうはいかないと思います。
そもそも公務員は働かないという印象も強いので、首長さんから職員が絶対的に信頼されているということは、普通は無いと思います。
今でこそウチのボスも私たちのことを信頼してくれていますが、以前はそこまでの信頼はなかったと思います。私も今ほど正直なことが言えてたかというと、そうでなかったかも知れません。
先ほどのようなことが、一生懸命頑張ろうとしている自治体では日常で起きているのではないかと想像します。実際、そういう自治体を沢山見て来ました。
そのような首長の暴走(=役割を間違う)を止めるのも私の役割では無いかと考えていて、冒頭お伝えしたとおり、首長さんにお話を聞いていただく機会をいただけたら、首長さんが間違ったかかわり方、頑張りをされないよう、できるだけ職員に任せてくださいと、お願いをさせていただいています。
そんなことを言っても、なぜか皆さん暴走してしまうので、もっと具体的にお伝えしなければ記憶に残らないと考え作成したのが、「首長の皆様へ、9つのご提案」でした。

なお、ここに書かれていることは、首長さんだけでなく、議員さんや担当部署の管理職の方々にも流用し、活用していただけると考えています。
自身は一生懸命取組みを応援しているつもりだけど、知らない間に取組みの進度を落としてしまう原因になっているということがあると思います。もし少しでも心当たりがあれば、後編で紹介する9つのご提案を是非お読みいただき、実践してもらえればと思います。

3.「首長の皆様へ、9つのご提案」、さわりだけ・・・

「首長の皆様へ、9つのご提案」ですが、中身は次回として、前段でお伝えしたことを踏まえ、その考え方だけお伝えしておきたいと思います。

私は、ふるさと納税を取組む為に重要なのは、「環境」だと思っています。つまり、ふるさと納税の担当者が一生懸命取り組むことができる「環境」が用意されているのか、そして、これの熟度というか練度というか、その度合いがふるさと納税の寄附額に比例すると考えています。

もちろん、ふるさと納税で寄附額を沢山集めるには、返礼品(地場産品)の優劣、その供給量が重要なことは言うまでもありません。しかし、それらを持ち合わせているにも関わらず成功できていない自治体が沢山あります。
では、何が違うのかというと、関わる人々の「熱量(=モチベーション)」だと思っています。
首長さんはもちろんですが、担当者、返礼品事業者、中間事業者など、ふるさと納税を取組みに直接関係のある人もそうですが、議員、市民など、間接的にかかわっている方々の取組みへの理解、応援や支援が無ければ、直接かかわる者のモチベーションも上がらないので、そういった方々の「熱量」も大切だと私は考えています。
そして、この「熱量」を全て足したものの大小がふるさと納税の寄附金額に大きく関係していて、その熱を発する人々の集合体が「環境」になると考えています。つまり、「環境」とは、ふるさと納税の担当者や担当部署を取り巻く人々のことで、それらの方々の大きな「熱量」が取組みには不可欠だと考えている次第です。

「熱量」は、人々が発するもの、つまり「やる気」ですので、基本的にお金はかからないと思います。返礼品の資源が少ないのも、財政状況が厳しいのも関係ありません。
先ほども触れたように、もちろん資源や財政は、沢山寄附を集めようとすると関係はしてきますが、まず大事なのは、いま与えられた資源の中で、ポテンシャルを限界まで引き出せてるかだと思います。「ウチは、資源が少ないので」、「ウチは、お金が無いので」って、何も取り組まないうちにあきらめていませんか、ということです。
あと、「事業者があまり力を入れてくれない」というご相談も多いですが、これも自分たちの熱量が足りないから、事業者さんも一生懸命になってくれないのではないでしょうか。いきなり全部の事業者のモチベーションを上げるのは無理でしょうから、始めは、一つの事業者に集中して信頼関係を作り、一つでも成功することができれば、他の事業者も「我も我も」になるのではないでしょうか。そうなればこっちのもので、その輪はどんどん広がっていくと思います。実際、本市の場合は、そうでした。

庁内も同じだと思います。初めは、担当一人でも、同僚を巻き込み、上司を巻き込み、首長も巻き込めば、取り組む環境は変わっていくはずです。
手前みそで恐縮ですが、本市は、この環境が完全に整っていると思います。市長は、どんな時(裁判になろうと)も先頭でふるさと納税推進の旗を掲げてくれ、市職員も皆協力してくれます。
市議会もふるさと納税の取組みには賛同してくださっていますし、市民の皆様も理解をしてくださり、どんな時も頑張れと言ってくれます。
また、事業者のモチベーションは高く、役所が何も言わなくても、どんどん新しい返礼品を生み出してくれます。
日本広しといえども、これだけふるさと納税に理解があり協力してくれる環境のある自治体は他に無いと思います。それが、本市の強さの秘密です。

ふるさと納税の取組みは、特別に有利な条件や事情(愛知県幸田町のエアウィーヴや、兵庫県加西市のアラジンなど)が無い限り一足飛びには成功しません。順を追って段階的に進めていく必要があります。
そして、ふるさと納税の取組みに必要な「環境」を最短で整えることができるのは、首長さんであり、だからこそ首長さんには、この環境づくりに専念いただきたいと考えています。
その環境づくりについて、具体的に列挙したものが、「首長の皆様へ、9つのご提案」になります。

それでは、次回、「後編」では、
「首長の皆様へ、9つのご提案」を中心にお伝えさせていただければと思います。
有難うございました。

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