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特設サイトってどうなん?開設すべきか、しないべきかという話

なぜ、私がnoteを書くのかは、ネタ的には面白くないでしょうから、一旦お休みにして、今回は、よくあるご質問シリーズで、「特設サイトってどうなん?開設すべきか、しないべきか」というお話をしたいと思います。

特設サイトとは、自治体が独自で開設し運営している、ふるさと納税サイトのことを言います。本市でも、「さのちょく」という特設サイトを運営しています。
ちなみに、本市のはシフトプラスさんで作ってもらっていて、管理システムの「レジホーム」と連携しています。

1.特設サイトのパイオニアは、鳥取県米子市?

さて、すこしだけ、私の好きな「昔話」にお付き合いください。
特設サイトですが、一番初めに作ったのは、鳥取県米子市だったと思います。2012年には既にあったと記憶しています(※米子市さんに確認したところ、2011年にオープンとのことです)。当時は、まだふるさとチョイスさえなかったので、とても衝撃を受けた記憶があります。
さらに余談ですが、2014年、長崎県平戸市は、市のポイント制の特設サイトとふるさとチョイスを連携させたことで日本一になったのは有名ですが、当時の担当、黒瀬啓介氏(現:なんとかブリッジという会社の社長)に聞いたのですが、彼も米子市のふるさと納税に大きな影響を受けたそうです。
ちなみに本市は、初期のふるさと納税は、米子市さんと、境港市さんを参考にさせていただきました。
今では、中国地方は、ふるさと納税発展途上?地域ですが、米子市、境港市、浜田市、鳥取県など、以前は先進自治体が沢山あったんです。

2.特設サイトを開設すべきか、するべきでないか

さて、本題に戻しまして、「特設サイトってどうなん?開設すべきか、しないべきか」については、初noteでお伝えしたポータルサイトとの連携数と近い考え方になると思っています。

結論から申し上げると、ほとんどの自治体には必要無いと思います。
これは、シフトプラスの中尾さんとも議論したことがあるんですが、彼もまったく同じ意見です。
シフトプラスでも、レジホームと連携している特設サイトは、本市も含めていくつか作ってるんですが、「自治体が強く望まれると作るけど、オススメはしていない」とのことです。ほんと、彼は商売っけが無い人です。笑

さて、なぜ必要無いかというと、特設サイトからは、ほとんど寄附が入ってこないからです。だって、民間ポータルさんでも、後発のものは、なかなか寄附が集まらないのに、自治体が開設した、ましてや一つの自治体の返礼品しか掲載していないサイトに集客できるわけがないですよね。
といっても事例をあげないとなかなか伝わらないと思うので、例をあげると、ある自治体では、寄付総額約10億円のうち、特設サイトからの寄附は600万円程度でした。わずか、0.6%です。ここが特例ではなく、ほとんどがこんなもんです。
なので、聞かれてたら、「絶対つくらないほうがいい」って言います。でも、だいたいはそれでも作ってしまって、結果を聞くと、「いう通りでした。すいません。」と返ってくることがほとんどです。

では、なぜ集客できないのかというと、ほとんどの自治体は、特設サイトを作って、返礼品を掲載するだけで終わってしまいます。自治体の多くは、webマーケティングの知識も、技術も、予算も無い中ですが、頑張って、市のHPにリンクを張ったり、チラシを配布したり、中には広告を打ったりなど、ある程度は努力されますが、ほとんどの場合、その努力は報われません。そして、ほぼほぼ放りっぱなしになります。

掲載するだけでは、誰も見つけてくれないのは当然ですよね。
これ、我々も反省すべきところだと思うんですが、いかに民間ポータルさんが日々頑張ってくれているかという証拠だと思うんですよね。ほんと。
彼らがCMやったり、広告出したり、ポイント還元やキャンペーンをやってくれるから、我々のところにも寄附が回ってくるんですよ。
もちろん、お金は払ってますし、彼らの儲けになるからですけど。
でも、その知見、技術、コスト、そして頑張りには、敬意を表したいと思います。いつも、ありがとうございます!
民間ポータルサイトがあるから、ふるさと納税もここまで育ったんです。

話を戻して、じゃ、プロを雇って、手間暇かけてプロモーションすれば良いのではという意見もあると思いますが、それは、以前にお伝えした、「ポータルサイトがいくついるか?」の話のように「優先順位」のお話になると思います。
今は、そもそも四大サイトという存在があって、これらが90%以上のシェアを持っています。また、残りの10%は、20~30の民間ポータルサイトがしのぎを削っている状況です。ここに割って入って集客できるかというと、なかなか難しいと思います。
正直、「さのちょく」でも、かなり苦戦しており、多い年でも10%にも満たない程度です。
ですので、民間ポータルサイトを増やすかどうするかの判断と同様で、優先順位の問題であり、特設サイトの開設については、それが極めて低いということかと思います。

3.特設サイトは、寄附集めだけのツールではないという考え方

しかし、これは、特設サイトを寄附集めのツールとして考えた時の判断になります。特設サイトに対して、それ以外の目的をもって開設することもあろうかと思います。
例えば、民間ポータルでは、なかなか出来ずらい個別の返礼品の深掘りしたPRであったり、ファンづくり、シティプロモーションなど、特設サイトに求める役割は、寄附集めだけでなく、さまざま有ると思います。こういったことを目的にするのであれば、特設サイトは、アリだと思います。
本市でも、シティプロモーションなど、「さのちょく」を上記のような役割で活用はしています。

でも、上記のようなことを目的にしていたとしても、閲覧されないのであれば、結果は一緒ですので、そこは寄附集めと同様、しっかりとプロモーションをかける必要がありますが、往々にして自治体職員は、そのようなことは得意じゃありません。
じゃあ、どうするかというと、プロにお任せするしかないんですよね。でも、ふるさと納税の業務委託は、ほぼほぼ成果報酬なので、寄附が集まらない可能性が高い特設サイトの委託を受けるような奇特な事業者は少ないと思います。なので、放りっぱなしになるのであれば、絶対、特設サイトは作らない方が賢いと思います。

最近では、ふるらぶさんがやってる「ふるさとベーシック」というサービスがあって、特設サイトを作成してくれます。
また、聞くところによると、ちゃんとセールスプロモーションをしかけてくれるみたいなので、特設サイトを作るなら、独自でやるより、こちらの方がいいかも知れませんね。

「ふるさとBasic(ベーシック)」 →furusato-basic.com

4.「さのちょく」は、特別なんです

特設サイトのことを、寄附が集まらないとかクソミソに言っているので気になると思うのは、「では、なぜ、泉佐野市は、さのちょくを運営しているのか?」ということかと思います。
本市の「さのちょく」には、他の自治体には無い、特別な事情があります。

皆さんもご記憶にあると思いますが、本市は、法改正前の2019年の2月から5月にかけて、Amazonギフト券付ふるさと納税「100億円還元 閉店キャンペーン!」を実施しました。
このキャンペーンがどのようなものかというと、現在でも、人気の民間ポータルサイト「ふるなび」や「ふるさとプレミアム」、ABC朝日放送さんが運営する「ふるラボ」などでも実施されているもので、寄附金に応じて一定額をAmazonギフト券で還元しようというキャンペーンと同様のものです。

現在実施している「ふるなび」の年末キャンペーン

▶キャンペーンをやっているポータルサイト
・「ふるなび」→furunavi.jp
・「ふるさとプレミアム」→26p.jp
・「ふるラボ」→asahi.co.jp

違いは、プレゼントされるAmazonギフト券など、ポイントの経費がどこから出ているかくらいです。民間ポータルサイトでは、サイトの運営会社が経費を出していますが、特設サイトの「さのちょく」では、泉佐野市が経費をだすことになります。
とはいっても、民間ポータルであっても、そもそもポータルサイトの手数料は自治体が払っているので同じように思えますが、国としては、そこは考え方が違うみたいです。
ちなみに誤解の無いようお伝えしておきますが、法改正後は還元率の制限があるので、「さのちょく」において、ポイントを還元するようなキャンペーンは、一切やっておりません。

少し話を戻して、皆様さんご存じのとおり、このキャンペーンは、本市がふるさと納税から除外された原因になった伝説のキャンペーンです。

本キャンペーンですが、本市特設サイトの「さのちょく」で実施しました。なお、R元年5月に本市を含めた四団体(静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町、大阪府泉佐野市)が制度から除外されることになりますが、本市以外の自治体は、Amazonギフト券自体を返礼品にしておりましたが、本市は、直営サイトの「さのちょく」において、キャンペーンのプレゼントとして活用したのみで、返礼品としての提供を行っておりません。
よく誤解されるので、申し添えいたします。
Amazonギフト券なんか返礼品にしても、地元は全然潤わないですもんね。

Amazonキャンペーンで報道が過熱していた頃(今でもですが)、他の三団体と一緒のように報道されていたのは、国がそのようにメディアを操作していたからです。先頭切って国のスピーカーになってたのは、NHKで、NHKが報道すると、それにならって民放も報道するという流れで、ほんと国の発信力は凄いなーと思いました。
本市としても取材があるとちゃんと対応し、事実異なることはしっかり否定していましたが、国が発信したとおりに報道するという状況が続きました。国が言った通り報道するのなら国にだけ取材すればいいと東京のNHKとは喧嘩し、出入り禁止にしたこともありました。
潮目が変わったのは、最高裁での勝訴の可能性が高くなった口頭弁論の頃(R2年6月初旬)ですので、その頃には、国の真実を捻じ曲げた発信のせいで、既に泉佐野市の悪名は全国の津々浦々まで轟いており、現在もそのイメージが残っていると思います。

さて、キャンペーンの話に戻りますが、目的は、事業者の救済でした。
国が、R元年5月に地方税法を改正し、「返礼品は地場産品のみ」に規制するという方針が出されたため、市内事業者の半数以上が法改正以降のふるさと納税には参画できないという事態に陥ったため、事業者救済のために行ったのが、Amazonギフト券のキャンペーンでした。
ふるさと納税では、通常、返礼品は早く受け取りたいというニーズが高いですが、このキャンペーンでは、事業者をソフトランディングさせるため、1年先まで予約販売のような形で受注を取るため、インセンティブとして付与したのがAmazonギフト券でした。

泉佐野市が実施した「Amazonキャンペーン」のバナー 

このキャンペーンで得た寄附額は、H30年度の寄附額497億円の内うち約200億円、H31年度の寄附額185億円については、全額キャンペーンによるものです。ちなみに、この185億円の寄附ですが、4-5月のわずか2か月間でいただいたものでした。それくらい、キャンペーンのインパクトは絶大でした。
また、キャンペーンでご支援いただいた皆様のお陰様で、地元事業者さんから、一社も倒産を出すことはありませんでした。

キャンペーンの内容の話は、このくらいにして、なぜ「さのちょく」が特別なのかをお伝えします。
Amazonキャンペーンは「さのちょく」で実施したことは先ほどお伝えしましたが、キャンペーンへの参加条件として、「さのちょくへの会員登録(=泉佐野市からのお知らせの受け取り)」の承諾をいただくようにしていましたので、「さのちょく」会員は、今でも約80万人いて、寄附者のアドレスも約80万人分が紐づいています。
「さのちょく」では、このアドレスを活用し、シティプロモーションやふるさと納税など、様々な発信ができるため、特設サイトの運営上課題になるセールスプロモーションについて、それなりに実施でき、それなりに寄附が入ることから、本市では、特設サイト「さのちょく」の運営を引き続き実施している次第です。
「それなり」がどれくらいの規模かということ、正直、「さのちょく」のシュアは、10%にも満たないです。その10%を得るためにかなり手間暇をかけてやっているので、本市のようなメルアド80万件みたいな特別な事情が無い自治体さんには、特設サイトの開設は、あまりオススメできないと思っています。

5.特設サイトの活用法

ボロクソ言ってしまっている特設サイトですが、活用法もあります。

例えば、寄附者の中には、ポータルサイトへの手数料が高いとか、問題だと感じている方もいて、自治体に直接寄附をしたいという方もいらっしゃるので、そういう方の受け皿にはなりえます。

あと、ポイント制を布いているJTBの「ふるぽ」や、ふるさとチョイスのポイント制もそうなんですが、ポイントに有効期限があります。
平戸市のポイント制もそうだったと思うんですが、自治体が開設する特設サイトのポイントは有効期限を設けないところが多いので、ポイントを積み立ててもらえれば、普段もらえない高額な返礼品をもらうこともできるので、そういったメリットを訴求することができます。

それと、歴史があったり、技術が高いなど、まちが誇れる事業者を紹介するなど、特産品を深掘りしてPRすることができると思います。
「さのちょく」でも、「いてまえ!泉佐野」というコーナーを作って、積極的に事業者のご紹介をしています。

▶事業者紹介をしている特設サイトの事例
・泉佐野市ふるさと納税特設サイト「さのちょく」→furusato-izumisano.jp
・磐梯町ふるさと納税(ふるさとベーシック)→aizubandai.jp

これらだけでなく、いろいろと活用例はあると思います。
本市でも、シティプロモーションの施策を実施する際のプラットフォームとして、特設サイトを活用しています。もちろん、その為には、会員登録数が一定数無いと効果は限定的になりますので、会員登録数を増やすこと、まずはこれが必須になります。

特設サイトは、ポータルサイトのようにテンプレートに縛られず、ある程度カスタマイズができるので、先ほどもお伝えしたように、ポータルサイトで出来ないことがやれるということがメリットかと思います。
なので、本市は、まだ成功の方程式は編み出せていませんが、そのような自治体さんが出て来るかも知れません。

6.まとめ

本市の「さのちょく」が良く見えるのか分かりませんが、特設サイトを作るようにと指示される首長さんが多いようですが、実際のところはこんなもんです。
結論として、ほとんどの自治体さんに特設サイトが必要無いと申し上げたのは、このようなことが理由になります。

寄附を沢山集めるには、優先順位が大切だということは先にお伝えしたとおりで、特設サイトが絶対必要無いとまでは言いませんが、特段の事情が無い限り、同じ手間暇をかけるのであればシェアの大きい、「楽天」や「さとふる」にエネルギーを割くべきですし、特設サイトに注力しても、上手くいかなければ、サーバー代も捻出できないという残念な結果になってしまうので、なかなかポータルサイトでも芽が出ないからといって、一か八か特設サイトに賭けるのは危険だと思います。

私も過去にFBで、「特設サイトを成功させることができたら、全国の自治体さんにノウハウを提供します!」と言ってしまったのですが、残念ながら成功できていませんので、目的が寄附を増やしたいということであれば、特設サイトの開設は、積極的にはオススメしません。


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