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読者ターゲットは ”あの頃の自分”


パンデミックで何度も中断し、やっと刊行できた
「新世代のビジネスはスマホの中から生まれる」


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コロナ禍で潮目が変わってしまったものがある。

今回のパンデミックの時期は、
将来どんなふうに評価される(振り返られる)だろうか・・・。

マイナスな、ネガティブな側面は数え上げればキリがない。
しかし、それまでの慣行ではなかなか変えられなかった、
あるいは時間がかかったことを可能にした側面もあったと思う。

たとえば「リモートワーク」。
働き方改革が声高に叫ばれ、
働き方の選択肢としてずいぶん前から言われていたのに
「社員の仕事を管理できない」などの理由で
進まなかったリモートワークが、一気に進んだ。

結局、障害だったのは管理する側の「意識」だったのかもしれない。

たとえば「無人決済」。
スーパーなどのレジの精算の機械化が進み、
金銭のやり取りを、店員を介さずに行うことが当たり前になった。
これに伴い、スマホ決済なども一気に進んだ感がある。

以前から「AIに奪われる仕事」の1つと言われていたものだが
新型コロナウイルスが促進役となった。

そして「ショートムービー」も
この2年間で一気に拡大したと思う。

YouTubeの牙城にTikTokが食い込んできたのが2019年。
App Storeなどでのダウンロード数で年間一位を獲得し、
縦型の動画視聴の習慣が進んでいたが、
コロナ禍で友人・知人に会えなくなると
ツイートやインスタに変わる伝達手段としても市民権を得てきた。

現在ではインスタグラム・リールスも登場し、
ますます手軽にアップし、楽しめるショートムービーが
さまざまな場面で登場するようになった。
(残念なことに軍事侵攻で苦しむウクライナの映像なども)

TikTokはMAUが10億人に到達したソーシャルメディアアプリとして、史上最速。
フェイスブックの約5倍、インスタの約2倍のスピードで達成した。

私はこの「TikTok」がわからなかった。

何が面白いのかさっぱり理解できなかった。
リップシンクという口パクで踊る高校生を見る、という固定観念から、
そうした「レッテル」をビシバシ貼っていた。

話題になった時にダウンロードして、
少し見て驚いて(だっていきなり動画が始まるのだ!)、
慌ててアプリと閉じてしまったまま、
半年近くが経った。

その後、2019年の春に、
偶然、TikTokの方のセミナーを聞く機会があり
そこで話している内容に衝撃を受けた。

自分がいかに理解していなかったか・・。
まるで世の中から2〜3周、周回遅れしている気がした。
そこで行われているマーケティング手法の巧みさに、
人々が熱狂するシステムに、
考え尽くされた操作性に、
そのとき初めて気がついた。

「わからなかった」のではなかった。
「見ていなかった」のである。

自分が衝撃を受けた10代のメディア利用頻度のグラフ。
新聞やテレビがこんな存在になっているとは・・・。

周回遅れを取り戻すべく、
TikTokの運営会社に(無理矢理)コンタクトし、
「わからない自分でもわかるような本を作らせてください」
とお願いした。

本をまとめる「基準」、つまり対象読者は
”わかっていなかった、向き合っていなかった自分”にした。

話し合いの末、著者は偶然にも、
自分がすでにバイブルのように読んでいた「シェアしたがる心理」「SNS変遷史」を上梓している天野彬さんに決まった。
(個人的には「運命的!」と思っているが著者はもちろんそう思っていないだろう)
ここから私は「ショートムービー沼」にハマることになる。

だが事はそう簡単ではなかった。

ここから大きなうねりのようにハプニングが続く。
まず某国大統領が「TikTok排除」を声高に宣言する。
(もちろん「大統領選の道具」という意味もあった)
これで取材が一気に進まなくなった。

そして、それと同時に始まったコロナ禍生活・・・。

ある時期に突然、
環境が変わる、
やり方が変わる
そしてそれに伴い「考え方を変える」必要性が生じた。

短期間でこれほど色々なことが変わることはそう起こらないだろう。
しかし現実に起こったのだ(みんなそうだろうが・・)。

そんな中にあっても、TikTokは元気だった。ひたすら元気だった。
数々のヒット商品がTikTokを起点に誕生した。
まず2020年の5月あたりから瑛人の「香水」が流行り出す。
2019年春の私なら「どうして流行ってるの?」と思っていたはずだ。

だが、その頃の私は理解できるようになっていた。
それ以降の多くの「ヒット商品」が
次から次へとスマートフォンから「生まれた」原因も
しっかり”見える”ようになってきた。

売れっ子のTikTokerさん(皆さん本当に努力家で、頭が下がります)
TikTokをいち早く活用した企業の方々(モノの見方が柔軟で驚きました)
TikTokの運営会社の方々(個性派集団です)
実に多くの方々にオンライン取材をさせていただき、
多少なりとも「裏側」も覗けたことで、
紹介できるエピソードやノウハウもたくさん盛り込めた。
読者の方にもできる限り「見える化」したつもりだ。


なかなか理解できなかった情報の拡散構造。TikTokerさんたちはこの構図をよく理解していた。


TikTokを中心とするショートムービーが
現在のコミュニケーションとして、
いかに定着し、活用されているのか、
そして今回のパンデミックが
この「新しいコミュニケーション」手段のスピードを
一気に進めたこともわかってもらえるはずだ。

パンデミックは大型の台風ではない。
通り過ぎるのをじっと耐えて待っていても
”台風一過”は訪れない。
もはや台風前の景色には戻らないのだと気付かなければならない。
※「アべンジャーズ」でサノスが「指パッチン」した後も世界は動いていたことを思い出そう・・。いまは指パッチンで消えている時間ではないのだ。

「どんな世の中になるのかを見る」のではなく
「どんなふうに世の中を見るのか」のほうが
ずっと大事なのだと本書を編集していて気がついた。

そんな気づきが読んでくださった方にも生まれたなら
周回遅れの恥ずかしい "あの頃の自分" にも
意味があったと思えるかもしれない。


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