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なぜ市場導入期のプロダクトにはPRが重要なのか?

こんにちは。「メタップスクラウド」のマーケティング戦略を担当している成田(@nhiroyuki8)です。

マーケティングと聞くとマスメディアやデジタルにおける広告宣伝活動(以降、広告と表記)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかしながら、私が現在担当するマーケティング領域は、広告はもちろんPR(パブリック・リレーションズ)まで幅広く担当しています。

その理由は、現在展開するメタップスクラウドの市場が新市場になるからです。そのため、PRを通じて自分たちが解決しようとする社会課題を世の中ゴト化し、市場を作っていくと言った活動がどうしても必要な市場というわけなんです。

それから、もう一つ押さえておかなければならないのは、時代は広告からPRへ、移り変わっているということです。

これまでは、メディアを中心とした一方通行の情報流通であったため企業と消費者の間には情報の非対称性が存在し、広告効果を最大化させてくれていました。しかしながら昨今、SNSやブログなど消費者が起点となって情報を発信し、双方のコミュニケーションが生まれるようになったことで、これまであった情報の非対称性は無くなり、むしろ消費者側が多くの情報を持つようになりました。つまり、広告よりも第三者起点の情報の方が効果的な時代に移り変わっているというわけです。こうした背景から、この第三者発信の起点となるPRが現在プロダクトの成功を左右する重要な役割として一層注目を集めています。

以降では、そもそもPRとは何か?そして新市場におけるPR活動とはどういうものなのか?ついて見ていきたいと思う。

●広告とPRの違い

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米国PR協会(PRSA)はPRについて以下のように定義しているます。

「組織とそれを取り巻く社会との間に、相互に利益のある関係を築こうとする戦略的コミュニケーションのプロセス」

つまり、PRとは社会との関係性であり一方に利益があるような関係ではないとされ、これは言い換えると「企業やプロダクトに良い影響を与えるような第三者との関係性づくり」と捉えることができます。

一方で広告はというと、企業が主体となって自社のプロダクトをビジネス目的で世間に周知させることを指します。つまり「自分たちの商品を自画自賛する活動」と捉えることができます。

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自画自賛は相手を説得することが難しい場合がほとんどです。反対に、第三者からの評価は客観的で信頼性があり説得力があります。このような観点から第三者からの客観的な評価を促すPRは重要だということがわかります。

当然、広告も欠かすことはできない手法であることは確かです。特に市場が成長期・成熟期にあり需要がしっかりとあるような場合は、顕在化したニーズに直接訴求できる広告の方がインパクトは大きいです。そのため、広告とPRを融合したマーケティング戦略が重要と言えます。しかしながら今回フォーカスする新市場においては、市場を作り出す大きな役割を担うPRに重点を置いて見ていきたいと思います。

●未成熟市場(導入期)は需要が少ない

新たなプロダクトを市場に投入する際、そのプロダクトが市場のライフサイクル上どのステージに位置するかを把握する必要があります。なぜなら、参入する市場のステージによって戦略が異なるからです。

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今回フォーカスする新市場は「導入期」にあたります。以下が各ステージにおける項目別に見た詳細です。

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ここで注目するポイントは「需要」のところです。

新市場(導入期)は需要が少ないのがわかります。つまり、そのこの段階では、少ない需要に訴求する広告よりも、そもそもの需要を増加させるPRに重きをおき、市場を作る活動の方が求められると言えます。一方で、成長期・成熟期になると需要はある程度形成されてゆくため、この段階ではマスも含めた積極的な広告が効果的なステージと言えます。

つまり、市場に参入する際にそのステージをしっかりと把握することはもちろん、参入後も現在自分たちがいる市場がどのステージに位置するのかを常に把握することは、無駄なコストと糧食を抑え、効率よくプロダクトを成長させていく上で重要な活動と言えます。

●求められるのは統合型PR

PR会社「ビルコム」では統合型PRを以下のように定義しています。

「マスメディアやソーシャルメディア、オウンドメディアといったデジタル時代における多様なメディアを用いて、潜在顧客や採用候補者といった企業のステークホルダーの熱量を高めるコミュニケーション活動」

ここで示されている「ステークホルダー」とは、プロダクトの直接的な顧客はもちろん、プロダクトに関わる社員や取引先、投資家や担当記者などあらゆる利害関係者を指しています。つまりPRとは、単にプレスリリースを発信する活動だけを指すのではなく、SNSやオウンドメディアを通じてプロダクトに関係するステークホルダーと双方向のコミュニケーションを行い、自分たちが解決したい社会課題や世の中へのインパクトの大きさを認識してもらい、その課題を世の中ゴト化することで、新たな市場を作り出し、良質な評判を形成しプロダクトの競争優位を高める活動であると言えます。

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SNSをはじめコミュニケーションチャネルが多様化した現代において、自らのプロダクトの存在意義を世の中に伝え、共感を得るには、マスメディアはもちろん、SNSやオウンドメディア、イベントやカンファレンスといった多様なチャネルを駆使し、戦略的にメッセージを発信し続ける必要があると言えます。

●戦略的なメッセージの発信

新市場における統合型PRは、カバーする領域が広範囲ある上、新たな競合の参入による環境の変化が目まぐるしい市場ステージと言えます。こうしたステージにおいて求められるのは、環境変化に合わせた適切な発信メッセージの変更です。そのためにはまず、自分たちの戦略を立てる必要があります。あらかじめ予測、あるいは期待できる環境変化やイベントを洗い出し、向こう1年間の発信するメッセージを戦略的にスケジュールすることが望ましいです。

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●具体的にやること

先ほど作成したスケジュールをもとに今度は、具体的なメッセージの発信方法を考えます。PR活動はなるべく早くに始めることが望ましいです。というのも、新市場における市場創造は即効性はなく、長期的な活動となるからです。そのため、発信すべきメッセージが決まれば、後はなるべく早くに取り組むことが望ましいです。

以下はその具体的な取り組み内容を取り上げたものになります。

①SNSによるメッセージ発信

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SNSと言ってもTwitterをはめじ、FacebookやInstagram、最近だとTikTokといった様々なSNSが存在しています。ターゲットユーザーの特性に合わせて取捨選択するのが望ましいですが、ここでは多くのプロダクトで活用が見込めるTwitterを例に見ていきたいと思います。

Twitterの特徴は、情報がリアルタイムに発信でき、フォロワーとの双方向の対話が生まれ易いというのが挙げられます。プレスリリースでは出しきれない、細かなアップデート情報や、現在取り組んでいること、それからたった今起きた出来事などを発信し、「いいね」や「コメント」によるリアルな反応を見てプロダクトの改善につなげるなど、顧客エンゲージメントの向上に加えてプロダクトマーケットフィットに向けた顧客フィードバックの蓄積にも役立ちます。

<SNSの影響範囲>
・ファン層の形成につながる
・顧客の生の反応が見える
・プロダクト改善につながる
・集客につながる
・売り上げに影響する
・社内活性化に活用できる
・求職者との接点になる
・株価への影響

実際に以下のような影響を与えた事例があります。


Twitterに限らずSNSの影響力はフォロワー数に比例します。そして、ひとたび築いたフォロワーは長期に渡りその影響力を保持してくれます。もちろん、フォロワー数は一朝一夕でどうにかできるものではないです。そのため、なるべく早くにアカウントを開設し、毎日少しづつでも継続的なメッセージ配信をすることが望ましいです。

②オウンドメディア、ブログによる想いや考えを発信
SNSに続いて外せない発信ツールにオウンドメディアがあります。最近ではnoteのようなブログを活用してメッセージの発信を行っている企業も少なくありません。

SNSとの大きな違いは、発信するメッセージの分量の違いと想いにフォーカスして訴求できる点です。オウンドメディアの主な役割として、自社を”指名”で選んでもらうための情報発信ツールがあげられます。自社を”指名”で選んでもらうためには思いや考えに共感してもらいファンになってもらうことが大切です。こうした共感を呼ぶ情報発信ができるのはSNSにはない大きな特徴と言えます。

また、発信した情報が中長期的に活用できる企業の資産となるのも特徴の一つと言えます。オウンドメディアを通じて、自社が取り組む社会課題を発信し、その姿勢や想いに共感してもらい、ファンを形成することができます。
そして必要になったタイミングで”指名”で選んでもらうと言った一連の流れを生み出す土台となるのがこのオウンドメディアやブログを活用する大きなメリットと言えます。


③メディアによる第三者発信
新市場においては、解決したい社会課題をメディア経由でステークホルダーに届け、世の中ゴト化することで市場を徐々に形成していくことが不可欠です。

これを実現する上で、メディアが取り上げたくなる要素を確認することが重要です。そして先にあげた戦略的なメッセージ配信で練った内容をもとに情報を開発・発信することが求められます。以下が一連の流れになります。

1、記者リレーション・取材機会の最大化

 オフライン:メディアキャラバン、記者クラブ投函
 オンライン:ニュースリリース配信、コンテンツ企画の提案

ここで気をつけなければならないのは、メディアキャラバンは決して売り込みではなく「パートナーになること」が重要であるということです。そのためには、まずターゲットとなる媒体を選定し、その中で対象となる記事を書いている記者について研究することが重要です。そして、記者の関心をクローズドで聞き、適切なタイミングで適切な情報を提供できるようなパートナー関係を築くことが重要と言えます、

<事前に押さえておきたい項目>
・特集記事の予定
・記事の採用基準
・記事化のプロセス
・お困りごと
・他の担当記者

2、メディアが興味を持ちそうなニュースコンテンツの開発

ファクトをベースとした情報の提供

新市場においてメディアが欲しい情報の一つにファクト情報があげられます。これはターゲットユーザーに対してアンケートを行い見えてきた社会課題となり得るデータがまとまった調査レポートになります。ここで重要となってくるのは、その情報が世の中にまだ明示されていないデータであるということです。そうした情報は、メディアを通じて社会課題を発信する上で、取り上げてもらいやすく有効なな方法と言えます。


④インフルエンサーとのコラボレーション
インフルエンサーとは世間に与える影響が大きい人物を指します。

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影響力のピラミッドで見た場合、インフルエンサーとは「トップインフルエンサー 」と「マイクロインフルエンサー 」の2つが該当します。そしてインフルエンサーマーケティングの手法は、SNS上だけのものにとどまらず多様化しています。

・共同開発
・イベント出演
・クリエイティブ製作
・コンテンツ共創
・SNS投稿

ターゲットユーザーによってどのインフルエンサー の層が効果的で、どのような手法を用いるかはプロダクトによって異なります。そのため、インフルエンサーの起用にあたっては、そのインフルエンサー が保有するフォロワーの属性、発信するコンテンツの傾向を調査する必要がある。

そして忘れてはいけないのが、新市場におけるインフルエンサーの起用の目的は市場の創造であるということです。目の前に存在する需要を刈り取るためのクリエイティブ製作やコンテンツの共創は、費用対効果が合わないどころか未成熟なプロダクトを無理やり提供することでかえって悪い印象を与え、将来見込めるはずの優良顧客を早い段階で失うことにつながります。
そのため、こうした市場ステージにおいては共同開発に参画いただいたり、プロトタイプのテスターとして意見をもらったりとプロダクトを一緒に作り上げてもらうような起用が望ましいと言えます。その他にも、インフルエンサーが運営するYouTubeやブログ、Podcastなどで露出するなどのコラボレーション施策も有効的な方法として考えられます。

●まとめ

こうしてみると、新市場(プロダクト・ライフサイクルの「導入期」)においては、いかにPRが重要であるかということがわかります。

テクノロジーの進化が加速し、働き方の多様化が進む今、今後も新たな社会課題とそれを解決するための新たな市場は次々と生まれてくること予想されます。そうした中、企業は既存事業の推進と共に、新たな市場を常に開拓していくことが求められていくのかもしれません。そうした中、今回ご紹介した新市場におけるPR活動の考え方がお役に立てたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。今後も「マーケティング」「PR」「テレワーク」「SaaS」などを様々なキーワードを軸にnoteを定期配信させていただけたらと思います。引き続きどうぞよろしくお願いします。

●メタップスクラウドについて

メタップスクラウドは増え続けるSaaSの複数導入を背景に生まれた、お金・時間のムダを改善する「SaaS管理」とセキュリティリスクを抑える「ID管理(IDaaS)」、の2つの機能を備えたSaaS一元管理ツールです。
*公式サイト: https://www.metapscloud.com/

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