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上映表とキャラメル
幼い頃、カルチャーに興味のない母に代わって映画館に連れて行ってくれていたのは祖父だった。
寡黙で祖母達には気難しい祖父だったらしいが、孫の私には存外甘かったらしい。
初めて映画館に連れて行ってもらった時のこと。千と千尋の神隠しを、今はなきサティの映画館で見た記憶が一番昔の記憶だ。
初めての映画館。祖父がこっそりとポケットから6個入りのキャラメルの小箱を取り出す。キャラメルの甘さとあのスクリーンの広大さ。初めての興奮。
その後も何度か一緒に映画館に行っては、お決まりのキャラメル。帰り道は、映画に出てくるキャラクターの真似事をしてふざけ合う。熱も冷めず、帰ってからもリビングで2人で内緒話のようにふざける時間もまた映画を観た日の醍醐味だった。
母に内緒で映画館に行くスリルと、こっそりと取り出される小さなキャラメル。真っ暗なシアターの中、祖父と私だけの秘密ごとがそこにあった。
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