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評価制度の作り方

会社の成長に伴って「そろそろ人事評価制度を整備しなければ……」と考え始める方も多いと思います。一般的には従業員数が10人を超える規模で、社長が一人で全員の評価をし、給与を決めている場合などは、「評価基準が分からい」などと従業員から不満が出るケースが多いものです。
そのために評価制度、人事制度を作っていこうと考えるのですが、いざ制度を作るとなると、何から検討を始めればよいのか、どういったことに注意する必要があるのかなど、全体感を掴むことが難しいと思います。
そこで今回は、評価制度にポイントを絞って、どういった項目を検討する必要があるかについて、基本的な内容をまとめました。事前に押さえておくべきポイントを把握するため、参考にしてください。

人事評価の目的

まず、最初に考えることは人事評価の目的を明確化することです。何を重視して評価制度を設計するかの指針となります。会社の経営戦略や組織の課題などによって目的は異なります。ここでは代表的な4つの目的と、その考え方をご紹介します。

処遇を決めるため
まず1つ目は、給与や賞与、役職等の処遇を決定するために行う、という考え方です。
どうすれば処遇が良くなるのかという基準が曖昧であれば、従業員の不満が溜まり、離職の原因になります。処遇の良い従業員とそうでない従業員の差を明らかにし、その差を納得してもらうために評価制度が整備されていることが重要です。

人材育成のため
次に、人材育成のために人事評価制度を活用するという考え方があります。会社の中で、又は担当する職務において、会社が必要と考える能力や態度、姿勢などを評価制度によって明確化し、共通認識として持つことで、会社の向かう方向に合った人材を育成しやすくなります。

より良い採用のため
人事評価制度を整備し、会社が求める人材像(=どんな従業員が評価されるか)を明確化することによって、採用時のミスマッチを防ぐことができます。実際に採用が上手くいっている会社は、採用面談の際に自社の評価制度の詳細を説明し、どうすれば入社後に活躍ができるか、待遇が良くなっていくかというイメージのすり合わせを行っています。

企業文化を作るため
最後に、企業カルチャーを作っていくという目的です。企業独自の価値観や行動規範を浸透させるために、企業文化にマッチした行動を評価します。「バリュー」や「クレド」といった形で価値観や規範を明文化している企業では、そういった「バリュー」や「クレド」にどれだけマッチした行動を取ったかを評価しています。
例えば、成果を重視する場合であっても、成果を出すために必要な行動(コンピテンシー)を評価に活用すれば、単なる結果主義ではない企業文化を築くことができるでしょう。

「何を評価するか」

人事評価の目的が決まれば、実際に「何を評価するか」を決めます。主な項目は下記の3つです。

成果評価
成果評価は、主に売上や利益など仕事の結果を評価するものです。例えば、営業であれば目標売上に対してどれだけ売上結果が出たかを定量的に評価します。
仕事の結果が数値として出しにくい企画職や事務職では、「どういった課題が、どのレベルまでできたか」という評価基準にすれば、定量的な評価も可能です。

能力評価
能力評価は、求められる仕事を遂行するために必要な能力や知識、経験を保有し、実践しているかという視点で評価をする方法です。
能力評価に近い概念として、コンピテンシーを活用して評価をするケースも増えています。これは従来の能力評価が、どんな能力や知識を「保有」しているかを重視したものであるのに対して、コンピテンシー評価とは、高い成果を上げている社員の行動特性を定義し、評価に活用するものです。持っている能力ではなく、それを発揮するための行動を評価します。

情意評価
仕事に対する姿勢を評価対象にしたものが情意評価です。例えば、「チームの方針に合った行動を行い、チームに対して有益な情報共有を積極的に行う」という風に、仕事に対する責任性や周囲とのチームワークなど、仕事を取り組む上で理想的な状態を決め、どこまで近い取り組みができたかを評価するものです。

評価項目のウエイト設定
何を評価するかという評価項目を決定した後は、それぞれの評価項目のウエイト(比重)を決定します。ウエイトの配分は、等級や役職だけでなく、部署や職種ごとにもウエイトを調整します。等級や役職が上になると業績や成果で見られる比重が高まり、成果で図りにくいバックオフィスの部署や年次の低い社員に対しては、能力や情意面での評価を強めるなどの調整を行います。
最終的には、そもそもの評価制度の目的に沿うようになっているか、という視点を持つことが大切です。例えば「処遇を決めること」が大きな目的であれば、成果の基準を可能な限り明確化し、成果のウエイトは大きくなります。一方で人材の育成が大きな目的であれば、能力や情意の部分をしっかりと評価する必要があります。給与と賞与でその配分を変えることもあります。

まとめ

人事評価制度については、考慮すべき点がたくさんありますが、自社の将来のビジョンや価値観が大きな判断基準となります。
制度構築にあたり、ビジョンや価値観が明確化していないと感じた場合は、まずそれらについて社内で話し合う機会を設けると良いでしょう。また、最初の設計以上に重要となるのが評価制度の運用を継続し、ブラッシュアップすることです。良い評価制度のスタートを切れるよう、ぜひこれらのことを意識していただければと思います。

株式会社H&Mコンサルティング

中小企業の社外管理部

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