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ダブル(ハーフ)の子供のIdentity

まず最初に、イギリス在住歴22年ですっかり浦島太郎状態の私は、昨日初めて、日本ではハーフのことを今はダブルという言い方に変わりつつあるという事を知りました。言葉は生き物のように変化していきますね。言葉の進化、変化には大変興味深いものがあります。

私はロンドンのある日本企業で秘書をしていた時(かれこれ18年前)、産休間近に、ある同企業の日本から来ていた駐在員の男性にこう言われました。

「知ってる? アメリカで生まれた日本人とのハーフの子が書いたエッセーをまとめた本を読んだんだけど、ハーフの子って自分のIdentityについて一生悩むらしいよ。自分が何人なんだかわからず、自問自答を繰り返しながらいきていくらしいよ。ハーフってかわいそうだよね。」と。

(Identityは国籍や人種だけが影響するものではありませんが、今回は自分のルーツはというところのIdentityに注目しています。)

男性駐在員数名と昼食をとっていた時に突然そう言われたので、周りの駐在員もちょっとその発言に少し動揺している様子で、その皆さんの反応を見てしまった私も返す言葉に困り、「そうなんですね~」ぐらいに返しておきました。

初めての子育てに悪戦苦闘している中、そんな彼の言葉も脳裏の奥の奥に入っていましたが、同時に、なぜか忘れれない発言として記憶のどこかに残っていました。

子どもがイギリスの小学校に通っていた時、案外、国籍やらIdentityなんてみんな気にしないで付き合えるもんなんだと思ってみていました。まぁ、親同士の間ではやはりイギリス人の中には他国人お断りみたいな雰囲気の壁を作っているグループもありましたが、子供間の間ではそういう国籍・人種をベースとした固定された友人関係というものは存在していなかったように記憶しています。

娘が中学生の時も、特に何か差別や違和感を感じて困ったという風でもなく、例の駐在員の言ってた話も時々思い出しながら、アメリカの話なんだろうな~ぐらいに思っていました。生徒間で、特に人種や国籍に関して何か線を引くようなところもない為、自分がイギリス人であるというひとつの枠でくくられていたのだと思います。小学校よりは線というより点線ぐらいになりはじめていたのかもしれませんが。

娘が日本で言う高校に入ったぐらいからでしょうか、彼女のIdentityに関しての発言やら、娘の日本に対する興味の持ち方が急に変わりました。そして彼女が日々、自分のルーツについて色々考えるようになったようです。彼女曰く、ユーモアのセンスのベースが日本的なものであるので、仲良しのダブル(ハーフ)のお友達といることが一番楽しいし、楽。なぜなら笑うツボが似ているから、なのだそうです。「やっぱりお母さんの影響が私には大きいから、どちらかと言うと、私は日本人っぽいところが多いのかも。」という発言もするようになりました。

「日本で生活してみたい。」という事を言い出したのも、この1,2年です。年齢を重ねるにつれて、自分について考える機会が増えているようです。彼女はメディア関係の創作活動をしているのですが、その創作作業にも自分が日本人であると意識する場面に遭遇する度に、自分の日本人のルーツというものに興味が増してきているようです。今のところ、日本人であることに大きな誇りを持っているという感じで自分のIdentityを受け止めているようですが、これから大人になるとあの駐在員の人が読んだ本に寄稿した方たちのように、その誇りという気持ちからIdentityの不透明さに苦しんだり悩んだりするのかな?と、特に良い人だったというわけでもない駐在員だった彼の事を思い出したくもないのですが、彼の発言について考える機会が最近多くなりました。娘は日本語は理解もできますし、話すこともできますが、まだ流暢に話せるというわけでもありません。そんな彼女が日本で生活したら、自分のIdentityについての考え方もかわるのでしょうか。

時々SNSで、日本在住のダブル(ハーフ)にインタビューするというReelを目にしますが、日本で生まれ育っているダブル(ハーフ)の方たちは、Identityに関し考えさせられる様々な経験や想いというものがあるようですね。育った環境というのが子供たちの生き方、考え方に大きな影響を与えるのは間違いないでしょう。

日本はいまだに二重国籍が認められていませんので、形式上は、あと数年で娘も国籍の選択をしないといけません。イギリスの大学入学を希望している事、彼女がイギリスで生活する可能性の方が高いことを考えると、日本国籍を失う選択をしないといけないのかなと思うと、本人も母親の私も悲しくなります。せっかく自分のIdentityに関して色々考えたりできるようになったと思ったら、まだこの先の人生の方向性もはっきりしない年齢で国籍を選択するという制度に関して、とても残念に思います。(少し話は変わりましたが。)

これを書いていて思いました。なんだかんだ言って、例の駐在員だった彼が臨月だった私に向かって言った言葉に、実はかなり考えさせられていたのだと。18年近くたって気づきました(笑)


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