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【メモ・感想】McCormack, Mark, Liam Wignall, 2017, "Enjoyment, Exploration and Education"


・読んだ。かなり自分の関心に近く、面白かったので、超簡単に紹介する。

・McCormack, Mark, and Liam Wignall, 2017, "Enjoyment, Exploration and Education: Understanding the Consumption of Pornography among Young Men with Non-Exclusive Sexual Orientations," Sociology, 51(5): 975-91.


・ポルノグラフィは、1970~1980年のフェミニズムに端を発して、Negative Effects Paradigm(悪影響パラダイム)で研究されてきた。

・しかし、ポルノの悪影響は、ラボでの実験でしか確かめられていない(Society for the Scietific Study of Sexuality 2007)。つまり、ポルノを消費する社会的コンテクストを考慮した影響を考えなければならない。

・Attwood(2011)はポルノ研究のパラダイムシフトを主張している。またAlan McKee(2012)は、エンターテイメントとしてのポルノ、という捉え方を主張している。

・そこで本研究は、レジャーとしてのポルノ消費を理解するためのフレームワークを提供するための予備調査を行う。

・アメリカの北東にあるエリート大の、non-exclusive orientations(要するに100%ストレート、100%ゲイではない)18~32歳の35名の男性にインタビュー調査を行った。性的指向の指標には、キンゼイの9段階指標を用いている。ポルノ研究は主眼ではなく、non-exclusive orientations研究のプログラムの一部。

・インタビュイーの語りからいって、ポルノはStebbinsが論じているカジュアル・レジャーの特徴6つを満たしている。

・そして、性的欲望を探求する、新しい性的行為を探索する、自分の性的アイデンティティを理解するという教育的な効果がポルノにはある。



・本当に簡単な紹介だな。

・まあでも、英語が超苦手な自分でも頑張れば読めるぐらい簡単な英語で書かれているし、HTML形式で全文公開されているので、最悪DeepLみらい翻訳にでも突っ込めば誰でも何となく読めると思います。


・感想。

・要するに、自分がヘテロなのかゲイなのか、みたいなものを確認したくてAVを観ることがある、ということ。赤川学『性への自由/性からの自由』で論じられている「性的主体化の装置」としてのポルノグラフィ、という理論枠組みの実証研究として読める。それってかなり難しいと思うのだが、こういう調査をすればよかったのか……と気づかされた。

・が、とはいえ彼らはnon-exclusive orientationsなわけで、自分の性を固めようとしても、いつまでもぐらついているわけで、そここそが面白いのだと思う。赤川先生も、ポルノは性の不断な再認を迫ると書いていた。

・「僕はストーリーのあるポルノが好きなんだ。ストレート向けはたいてい背景が十分語られない。ゲイポルノでは男同士の間のやりとりが見られるんだよ。ある種の関係性とか、なぜセックスするのかっていう土台があるんだ」(p. 983)とか、ゲイ向けは「リアル」なんだ、っていう語り。
ここでのインフォーマントは、ストレート向けも観ればゲイ向けも観る男性たちなわけだが、日本のストレート男性向けも観ればストレート女性向けも観る女性たちの語りとかなり重なって面白い。


・「女友達について論じながらフレイザーは、『暇でやることがないときは、世に知られてない(obscure)ポルノを一緒に観るんだ。観るだけさ。たとえば日本の触手モノとかね。ヤバくてキモいよ。アトラクションっていうよりはコメディっていう感じかな』と語った」(p. 983)

・「リチャードは、肉体から分離した(disembodied)大きすぎるペニスに焦点を当てた日本のポルノの一種について語った。『フタナリ、dick girlsだよ。僕はホントにホントに好きなんだ。でも何故なのかわからない。ペニスそれ自体が好きだからなのか、それが女性らしさという文脈のなかにあるからなのか』」(p. 986)。

・なんか知らんが日本のポルノが彼らの役に立ったようで誇らしいよ。




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