トロピカルな計算練習(4)
いろんなものをトロピカル化しようという野望をもとに今日も進めていきましょう。
前回はこちら
今日は総和総乗から行きたいと思います。
$$
\begin{array}{}\displaystyle\sum^n_{k=1} a_k &\overset{tp}{=}&\displaystyle\bigoplus^n_ {k=1} a_k
&=&\max(a_k)&(k\in\mathbf{Z},1< k < n)\\ \displaystyle\prod^n_ {k=1}a_k & \overset{tp}{=}& \displaystyle\bigotimes^n_ {k=1}a_k&=&\displaystyle\sum^n_{k=1}a_k\end{array}
$$
まあ単純ですかね。当たり前のものになった気がします。
無限まで和を取ることもありそうですし、総和に関しては$${\max}$$より$${\sup}$$が妥当かもしれません。$${\sup}$$とはなんぞやというのは調べればすぐ出てきますが、大雑把に言えば$${\max}$$だと本当にその値がないとダメなんですが、$${\sup}$$だとその値をちゃんと踏めなくても極限的にその値が一番大きいってのが表せます。
$$
\displaystyle\sum^n_{k=1}a_k\overset{tp}{=}\displaystyle\bigoplus^n_{k=1}a_k=\sup(a_k)
$$
トロピカル総和は1番でかい数が残るだけ、トロピカル総乗は普通の総和ですから、あまり特筆することがなさそうに思えます。
総和がこうということから予想できるかもしれませんが、積分もおおよそ同じ結果になります。
あとは階乗なんかも見ておきましょうか。
トロピカルで階乗はその数までの和になります。
$$
\begin{array}{}n! &=& \displaystyle\prod^n_{k=1}k&\overset{tp}{=}&\displaystyle\bigotimes^n_{k=1}k\\\\ &=& \displaystyle\sum^n_{k=1}k&=&\dfrac{n(n+1)}{2}
\end{array}
$$
こんな感じで、もちろん色々ある総和公式はトロピカル総乗に移植して使えます。
結果をあえてトロピカルに書いてみてもいいんですが、指数入り乱れる式になって、個人的に「だから?」という気持ちになったので書かないことにします。
逆に階乗を表すトロピカル計算は肩にひたすら数を積み上げる指数の式になるので、これもあまりキレイとは言い難いかもしれません。あえてトロピカルな指数計算を表す$${tp(;;)}$$を復活させて書くと、
$$
\begin{array}{}tp( n^{(n-1)^{(n-2)^{...}}}) &=& n\uparrow_t n-1\uparrow_t...\uparrow_t1\\\ &=& n!_{tp}\end{array}
$$
やはりこうしてみるとクヌースの矢印記号は使い勝手がいいですね。
以上の通り、トロピカルと通常の算数の対応物を探していくと、こんな疑問がよぎります。
「普通の世界で意味あって定義したものはどう(どんな理念で)トロピカルに移すべきなんだろう」
つまり、階乗でいえば、一個ずつ減った数を掛け算する「動作」が欲しいのか、一個ずつ減った数を掛けた「結果」が欲しいのかで、やるべきことが変わるのです。
積分も同様で、積分という「動作」をしたいのか、積分から面積体積という「結果」がほしいのか、それでやることが変わってしまいます。
どっちがトロピカル世界の住人にとって「面積」なのかは、トロピカル世界の住人がいない以上、外の世界、つまり我々普通の算数をしている人の感性(当たり前)で決めるしかないということです。
このことが結局、トロピカル演算をベースにした物理を考えることをどうも納得できない理由なのかもしれません。
忘れてるかもしれませんが、裃は物理屋ですから、はい。
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