見出し画像

スポーツ選手・フリーランスが知っておきたい契約とは(第2回)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

一般的な民事事件・刑事事件全般のほか、スポーツ選手・団体の法務や、SNS利用のコンプライアンス講師、テニス練習会の主催なんかをしています。

今日は、スポーツ選手・フリーランスが知っておきたい契約とは(第2回)というお話をします。

前回の復習

契約とは、2人以上の人が、裁判所に訴えられるような類型の権利や義務について、合意することを指します。

合意が有りさえすれば良いので、契約書は必ずしも要りませんし、絶対に金銭絡みでなくても構いません。

ここまでが、前回の復習で、本日は「じゃあなんで契約書がここまで重要視されるの?」という点をご説明します。

前回の詳細はこちらから!

契約書のない場合ある場合

あなたは契約書を作ったことがありますか?

普通に暮らしているだけだとなかなか機会がないかもしれません。

スーパーで牛乳を買うときに、『売買契約書』を取り交わすことはありませんし、電車に乗る際に、事前に『旅客運送契約書』なんて作成しません。

他方で、もう少し重要な時には、作ったことがある方もいると思います。

賃貸マンションを申し込んだ時に、やたらとたくさん文字が書いてある書面を読み聞かされ、署名押印したことありますよね?

あれ、賃貸借契約書(と、重要事項説明書)です!

会社で契約を取り付ける担当のお仕事の方は、契約書慣れしているかもしれませんね。

企業間の契約だと、ある程度の頻度で、『契約書』にしていることも多いと思います。
継続的に取引する相手とは、『取引基本契約書』という契約書を使って、最初の1回のみカッチリした契約書を取り交わし、後の個別注文は、発注書と請書で済ませるところもあるかもしれません。

契約書を作る理由

こんなにまでして、みんなが契約書にこだわる理由は、万が一、相手が契約を守らない時に、「こういう約束だった」と言うための証拠を確保するためです。

契約書には一般的に、次のようなことが書いてあり、その逐一を、合意したのだと言うことを証明するには、契約書を用いるのが1番いいのです。

・商品はどんな物
・金額はいくら
・支払いはいつどうやって
・振込手数料はどっちもちか
・所有権はいつ移転したことにするか
・商品に不具合があったらどうするか
・商品が第三者のせいで滅失したらどうするか
・一方が支払能力に欠けたら解除できるか
・契約違反によって相手に損害を与えたらどうするか
・どちらかが期限遅れした時に解除できるか
・定めてないことが起きたらどうするか
・期間はいつまでとするか
・揉めた場合裁判所はどこにするか

そして、最も重要な点は、『契約書』には、当事者全員の署名(記名)・押印があることです。

裁判実務では、3人が、1枚の契約書にハンコを押している場合、とある特殊な数え方をします。

3人の意思表示が3つある

とカウントするのです。

契約書1通に、3人が、第1条〜第30条までに書いてあることをそれぞれ意思表示したものが、宿っていると。

つまり、この1通を出せば、3人の意思表示が「合致した」ことも立証できるんです。

逆を想像すればわかります。

契約書がない場合には、担当者同士のメールのやり取りがよく出てきます。

A社「メロン500個、50万円でいいですね?」

B社「ご連絡ありがとうございます。検討してお返事いたします。」

だけしか残っていなく、肝心のその個数と値段で🆗の部分は、電話したということが結構あります!

そんなまさかぁとおもいました?

超絶あるあるです。今でも電話で🆗とかは、たーくさんあるんです世の中に。

こうなると、B社が「応諾の意思表示をしたか」は、証人尋問で担当者それぞれから話を聞き取るほかありません。

契約書があれば、応諾したところまで1通の文書で一撃必殺です。

裁判のルール

裁判では、原告(訴える側)が、契約書のとおり約束を守れ!という場面が多いと思います。

その場合には、原告が、契約の内容はこうだったと主張し、立証しなければなりません。

仮に、立証を尽くしても、裁判所が、「うーん、契約があったかもしれないし、なかったかもしれない。50:50くらいだなぁ」という心証の場合にはどうなるか。

原告の請求が棄却されます。
(原告が敗訴します。)

裁判所が、「うーん、たしかに契約はあったようだ」と判断できて初めて、原告の請求が認容されるというルールです。

なので、契約書なしパターンの先の例では

A B双方の担当者の話を聞いてもなお、「契約はあったみたいだね」と思えなければなりません。

当然、 B社の担当は、「応諾なんてしてませんよ!」と言うので、これを排斥するのは結構難しいのです。

こんな時、A社の弁護士は、必ず、「あぁ。契約書さえあればなぁ」と思うはずです。

文章読むのはめんどくさいあなたへ

実は、今日の話は、パデル協会の選手向けに講義していて、こちらからご覧いただけます。

動画ではあるものの、スライドなしでも耳だけで聴けるように喋っていますので、「ながら」で聴いてみてください。

今まで法律を勉強したことがある方は、1.5倍速まで速めても大丈夫。

倍速にすれば10〜15.分くらいで聴き終われますから、お洗濯物を畳みながらどうぞ。

以上、スポーツ選手・フリーランスが知っておきたい契約とは(第2回)のお話でした。

では、また!

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。