見出し画像

[詩画集] ぼくは星の子・宇宙の子



1
ぼくはいま、たまたま人間やっています
たまたまほかの動物や
花や木だったかもしれません
もとをただせばみんな
この地球から生まれた兄弟なのです
この地球が母なのです

時の風にふかれて みんな
もとの土のかたまりに戻され
こねこね混ぜ合わせられて
ふたたび新しく登場します
そのときなんになるかは
造形家の気分しだいです

せっかく人間やっているので
うまいビールでも飲んで
今回の人間時代を愉しみます


2
ボクやキミや動物や植物
そして海、河、山や、月、太陽
満天の星々と無数の銀河・・・

それら全部集まったものが宇宙なら
ボクもキミも宇宙の一部、宇宙のパーツ
宇宙という巨大な立体ジグソーパズルの
ひとつのピース
砂粒よりもちっぽけなかけらだけど
ボクもキミも宇宙なんだよ


3
これはただの小さな小石です
でも地球46億年の歴史を体験しているのです
この宇宙のはじめのころ
無数の星屑が集まって地球になりました
そのころのさまざまな記憶が
この小石に刻まれています

考えてみればこの花もボクも
星屑からできたのです
だから地球46億年の歴史が
この花やボクのからだにも詰まっているのです

今、目にしているこの地球上のもの全部
大地や雲や山や海、家や車や最新のパソコンも
すべてみな星屑の子孫たちです


4
あるとき気がついたら
ぼくはぼくという人間でした
でもぼくのからだは
ぼくが作ったわけじゃありません
こんな複雑で不思議なものを作れる人などいません

ぼくには名前がつけられていました
この名前、この顔、このからだがぼくなのです
ぼくは
気づいたら乗っていた知らない飛行機の
パイロットのようなものです

飛んでいる飛行機を、とりあえず落ちないように
安定飛行させなければなりません
最新高性能の機体ですが、行先がわかりません
そもそも飛行の目的は・・・
残りの燃料はあとどのくらい・・・

すべて不明ですが、おなかがすいてきました
とりあえずお昼を食べながら考えようと思います
うまいコーヒーも楽しみです


5
あるときぼくは花だった
あるときぼくは虫だった
そしてあるときぼくは人間だった

この地球ドラマの作者はだれ?

ぼくはいま花になって咲いています
ぼくはいま虫になって飛んでいます
ぼくはいまちょっと人間やっています
ビールがうまいので
もうしばらく人間つづけます


6
この卵はボク10分前
10分後、ボクのからだになっている
この空気もボク10分前
10分後、ボクのからだになっている
10分前にはボクだった空気を
あの植物が吸っている

地球がボクになり、ボクが地球になる
ボクと地球はわけられない
だからボクと宇宙もわけられない
ボクは宇宙とつながっている


7
うごくものは すべてエネルギーでうごく
車も動物も もちろん人も
車は空気とガソリンがエネルギー
動物や人は空気と食物がエネルギー
人はからだだけでは生きられない

だからボクは からだ+空気+食物 で生きている
だからボクは からだ+空気+地球 で生きている
だからボクは からだ+空気+宇宙 で生きている

ボクは宇宙だ !


8
ボクやキミは地球から生まれた土人形
草も木も地球から生まれた土兄弟
コップや車やパソコンも
地球から生まれた土製品

すべてのものは時の風に吹かれて風化し
経年劣化し 土に還り 分解し
混じりあい 入れかわり
再び新しく生まれてくる
太古から続く果てしないくり返し

地球は増えもしないし、減りもしない
地球はめぐりめぐってエンドレス


9
目をつぶり、耳を澄ませば
聞こえる、聞こえる
この大地、地球の回る音
壮大で神秘的なスピン回転
この巨大ゴマを回したのはだれだろう?


10
天空に浮かんでいる月
巨大な物体が空に浮かんでいる不思議
どうして月は静止しているのだろう
まわりに支柱や固定機材もないのに

じつは月は支えられている
見えない無数のロープで
地球や太陽や宇宙すべての星々と・・・

それは引力というロープ

ボクやキミも結ばれている
この見えないロープで
地球や太陽やすべての遠くの天体と・・・

宇宙のすべてのものは
お互いに結びあっている
どんなに小さなものでも・・・

だからボクたちは宇宙と兄弟


11
星をながめるとき
星もまた
ぼくをながめている
なにか
話しかけているようだ
あの星にも
相談したい悩みがあるのかな

だれが自分を作ったのかとか
なぜ自分は存在しているのかとか
なんのために自分がいるのだろうかとか

このぼくも
おんなじ悩みをもっているなんて
どうしてわかったのだろう

あの星は
この大宇宙が
もともとは
砂つぶよりも小さな
点だったなんて
想像したことあるのかな


12
新車を購入しました 休日のドライブが楽しみです
パソコンも最新型です 快適な反応です
新居の二階のリビングからは 満開の桜がみえます

しかし

車もパソコンも 新居も桜も さようなら・・・

現代の 最新の機器に囲まれて
明日も明後日も
ずっと変わらぬ快適な毎日と思っていた日々・・・

世界はおもしろくて おいしくて 楽しくて
そんな生活があたりまえで
いつまでもずっと続くと思っていた日々・・・


13
「ある日」車がこわれた
・・・もう走らない

「ある日」パソコンがこわれた
・・・もう映らない

そして「ある日」ボクがこわれた
・・・もう明日はこない

ある日とつぜん その日はやってくる
明日かもしれない「その日」


14
人生という旅は途中下車で終わる
思いもかけない見知らぬ途中駅

キップはまだ残っているけど・・・
カメラはまだ撮影できるけど・・・

ある日とつぜんゲームオーバー

まだ見てない所があるのに・・・
まだ予定は残っているし
おみやげも買ってないのに・・・

人生は有限
人生は未完成という完成の旅


15
キャンプとは不便を楽しむもの
人生とは有限を楽しむもの

人生は期間限定・賞味期限付の
地球体験旅行

行先は自由です
目的なんかありません
なにをしてもかまいません
あとでレポート提出なんてありません

さあ、もう
退屈しているひまはない
人目なんか気にしてられない
どうでもいいことなんかしないで
一番好きなこと
一番やりたいことをして
今回の、しばしの滞在時間を楽しむ


16
絵や写真で見るオランダの風車は
障子の桟のようなすかすかの羽根
あれじゃ風が筒抜けじゃないかと
ながねん不思議におもっていたが
最近その疑問が氷解した
あの上に布を被せるのだそうだ
模型飛行機の翼に紙を貼るように

現代の風車は白くてシンプル
しかし世界中みな同じような形
3枚羽根を6枚羽根にして、
棒のように細い羽根をもっと巾広くしたら
パワーが増えるんじゃないのか

どうもそう簡単な話でもないらしい

もしこの地球上に風というものがなかったら
帆船の歴史もヨットも生まれなかっただろう
カティサークの紅茶運び競争もなかったし
南北戦争では風と共に去れなかった
風雲児信長や風林火山がなかったら
歴史ドラマはちょっとつまらない


17
この小さな植物は太陽を意識し
宇宙を感じて生きている

二枚の葉は極小の受信アンテナ
緑のまなざしで光の方向を向き
命のめぐみを受けとる
8分前、太陽を出発し
広大な宇宙空間を横断してとどく
毎日の定期便

天空はるかで燃える巨大な火球と
この地上の目も耳もない小植物との
超遠距離コミュニケーション
・・・神秘のつながり


18
一枚の葉っぱはひとつの宇宙
無数の細胞でできた小さな宇宙
細胞は無数の分子、原子のあつまり
その原子はさらに小さな素粒子のあつまり

宇宙のなかの無数の星々
その無数の星々のひとつひとつに
また無数の宇宙
その無数の宇宙のひとつひとつに
さらにまた無数の宇宙・・・


19
人は見えるものに名前をつけた
でも山、河、海たちは、
自分が山、河、海だなんて知らない

人は自分が考えたものにも名前をつけた
地獄、極楽、天国などを創作し
恐れ、喜び、待望した

しかし
秋、紅葉して落ちる木の葉たちは
地獄、極楽、天国など知らない

ただ静かに大地に還り
母なる地球の胎内で
再び木となって生まれてくる日を
夢想しているだけ


20
花はまぼろし
すべての生命もまぼろし
生命は虹のようなもの
生命は
ひとときの甘い香り

この世ならぬ
宝石のような美しい輝きを
いっしゅんだけみせて
夕日のように消えてしまう

写真や映像に残しても
もう
さわれないし香りもない
デジタルメモリーという
無味無臭の情報という存在
重さもかたちもない
数字の羅列


21
植物は目がないから
昆虫を見れないし
もちろん人も見れない
山も空も雲も見れないし
自分自身も見れない

太陽や月や地球が丸いことや
風が見えないことも知らない
歩くこと、動くことが理解できないし
夜空の星々や宇宙なんて想像したこともない

しかし
この地球の上に生きていることは知っているし
花を咲かせる喜びも知っている
太陽の暖かさに幸せを感じ
朝露の心地よさも知っている
生物学なんて知らないが
地球の大地と気候を楽しんでいる


22
もし地球に人間がいなかったら
山はない
山と名づける人間がいないのだから
ただ 地球の一部が高く盛りあがった部分

川もない
川と名づける人間がいないのだから
ただ 地球の長い溝に水がながれているだけ

山も川もそれを決めて名づけなければ
ないのとおなじ 地球と分けられない

地球上のあらゆるものは
名前をつけなければ 分けられない

すべてはそのまま まるごと地球
地球そのまま ただひとつ


23
ぼくがひとつの星をみつめたときは
その星の光が、ぼくのこの目に
たった今とどいた瞬間

はるか昔、星を出発した光
ぼくと星の間にはさまれた
はてしない宇宙空間を横断し
はてしない時の流れを越え
ただひたすら走りぬけて
今到着した星からの光

ぼくの網膜、視神経を通過し
脳細胞で静かに停止した
星からのメール
「ぼくたちは 兄弟」


24
月をみるとき
ぼくと月のあいだに
さえぎるものはなにもない
ぼくと月がはさんだ透明な宇宙空間

星のうしろの深い空をみるとき
ぼくと深い空のあいだに
さえぎるものはなにもない
ぼくと深い空がはさんだ透明な宇宙空間

星のうしろの深い空
深い空は宇宙の果ての永遠
この地球という小さい星から
透明な宇宙空間をはさんで
ぼくは永遠をみている

ぼくたちは
夜空いちめんの永遠のなかにいる


25
銀河をこえ
星雲をこえ
また銀河をこえ

はてしなく宇宙をつきすすんで
ボクのスペースシップは航行した
ワープとトンネル効果をくりかえし
時間と空間の法則も飛びこえて
とうとう宇宙の外に出た
やれやれ一生かかったぞ
さてこれからどうするか

そのときボクは気がついた
あと一本ビールが残っている


26
夜空の無数の星々
太古から続く悠久の宇宙
ときおり流星が天空をよこぎる

宇宙は巨大なプラネタリウム
だれかがどこかで
3Dプロジェクターを操作している

「今回の宇宙は終了します
またの機会をお楽しみに」

宇宙のはてから
とつぜん事務的なアナウンスが聞こえ
天から大きな幕が下りてきた
ボクは残りのビールを飲みほし
ゆっくり立ちあがった


27
パソコンは外も内も多くのパーツが
プラスチックでできています
つまり元は石油で
そのもっと前は化石だったのです

人が寝静まった深夜
時間がとまったようなだれもいない室内で
パソコンがそっと点いていることがあります

画面からとび出した太古のシダの森
森のかげからのぞく巨大な恐竜
遠くひびきあう不気味な咆哮
プラスチックたちの古代の記憶が
いま よみがえって
深夜の同窓会をやっているのです

翌朝 パソコンを開いた時
いっしゅん 大きなかげが映ったら
それは恐竜の足跡です


28
月は地球の衛星だけど
緑の植物は1本もなさそうだ

火星の衛星フォボスやダイモスも
緑には縁がなさそう

私は地球の衛星を3個もっている
どれも緑の太陽パネルが美しい
高度0m
地球の自転と同一速度で回転
大地に乗った超小型の衛星

それは私の庭の3個の盆栽
丸い鉢底にはゴロゴロ岩
その上に良質の土
H2Oが毎日宇宙からそそがれる

モミジの林
ドングリの森
ハゼの小山
どれも手の平にのる豆盆栽


29
遠くの星から地球をみれば
そこは宇宙のまんなか
無限の星々の中のひとつ
宇宙空間に浮かぶ小さな青い星

その宇宙空間に包まれて、きょう、今、
キミもボクも草や虫も生きている
家の内も外も宇宙空間
わざわざロケットにのって
宇宙に飛びださなくても
公園の森や池もりっぱな宇宙

ここは宇宙県地球市北東区南西町1-5


30
地球はひとつの生命体
動物、植物、人間は地球の細胞
地球は生きている
地球は見ている
地球は考えている

この自分って何だろう
この宇宙って何だろう
なんのためにこの宇宙はあるの
なんのために自分はいるの

地球もたまにはビールをのんで
このくるくる回りを休んでみたい


31
全宇宙には1000億個以上の銀河
天の川銀河はその中のひとつ
天の川銀河には2000億個の恒星
太陽はその中のひとつの恒星
太陽系は天の川銀河のはずれ
太陽系の8つの惑星のひとつが地球
地球は星屑が集まって誕生した
 
ぼくはこの地球から生まれた
だからぼくのからだは星屑からできている
きみや花やチョコレートも、
山や川や雲も、
パソコンや車やマグカップも、
みんな元々の材料は星屑


32
分子や原子は老いない
化学の教科書は古びても
分子や原子は歳をとらない 
しかし分子原子の集合体は老いる
経年変化し、経年劣化し
分解して
もとの分子、原子に戻り
別の集合体に生まれ変わる

集合体はたえず変化し
たがいに入れ替わり
あるときは雲や山になり
またあるときは花や猫になる 

ぼくも集合体
星のかけらと
花びら一枚と
恐竜のしっぽの先が
たまたま組み合わさって
いまのぼくができあがっている
あしたは何になっているかな


33
ボクは 
星から生まれた星人間
青い星の上を ボクは歩く
散歩に疲れたら
宇宙空間にひたって昼寝

目覚めたら
しばらく人間お休みして
青い山になって 雲をながめたり
緑の湖になって 魚とあそぶ
それもあきたら
赤い花になって 蝶を誘う

そろそろ日も沈んできたので
また星人間に戻り
家に帰ってビールの時間



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?