キミの(僕の)人生がつらい根本原因

キミの人生がつらい原因は、ひとことでいうと
 物語の喪失
である。

人生のツラさには、
人間の、生き物としての特性かかわってくる。

少し長くなるが、つきあってほしい。

ホモサピエンスの呪い


(以下の話は、ユヴァル・ノア・ハラリのサピエンス全史に影響を受けています)

なぜ、ホモサピエンスは、
ネアンデルタール人を打ち負かすことができたのか?

ネアンデルタール人は、個体ベースでは、ホモサピエンスより優れていた。
ネアンデルタール人は、ホモサピエンスより、脳が大きく、体もでかく頑丈だった。
 
ホモサピエンスに勝利をもたらしたのは、
”フィクション(ウソ)”を信じる能力だった。

フィクションを信じることで、大規模な集団でまとまった行動ができる
例えば、同じ神様を信じる者同士で、結束することができる
  俺たち、同じ祖先をもつ仲間だよな
  一緒に頑張ろう
  同じ祖先をもつ仲間だから、食料を分けてあげる、助けてあげる

フィクションを信じることで、敵と仲間が明確になる
戦争に強くなる
  あいつらが話す言葉はよくわからん
  話が通じない
  あいつらは、同じ人間じゃない
  だから、殺して奪っても、問題ない

フィクションがあるから、皆のために死ぬことができる
  みんなのために、危険を冒す
  お国のために死んでくる
  死後の世界で会おう
  先に逝くわ、あの世でまってるぜ・・・

フィクションをもたない人類は、
フィクションを信じる人類に勝てない。

例えば、
フィクションがなければ、陽動作戦ひとつできない。
自分を集団のために犠牲にできない人類では、敵を引き付けるおとり役をだれも引き受けない。
 俺が、敵を引き付けておくから、お前らはそのすきに、逃げてくれ!
マンガやゲームでよく聞くこのセリフは、ホモサピエンス特有の行動だ。
ネアンデルタール人は、まっさきに自分が逃げる。


ホモサピエンスは、フィクションに生き、フィクションに死ぬ。
言い方を変えれば、物語に生き、物語に死ぬ。

フィクションを大事にするホモサピエンスは、
その代償として、フィクションなしに生きることができない
呪いをもつことになった。


日本国の衰退


江戸時代以前~大日本帝国 農業主体の時代


明治時代まで、主な産業は農業だった。
人々は、土地に縛られた生活をしていた。
土地と物語はセットであった。
農業は簡単だ。
直感的に理解できる。

そして、人生の目的も簡単だった。
先祖から引き継いだ土地を、子孫に受け渡す。

ご先祖さまは尊敬の対象、神に近いものであった。
草葉の陰から見守ってくれている、神さまであった。

我々も、子孫をちゃんと残すことで、ご先祖さまとして祀られる。
○○家の永遠の物語の中で生き続けることが可能だった。

明治時代までは、民法に家父長制が規定されていた。
○○家の物語を守るための法律的な裏付けを、一族の長に与えていたのである。


第二次世界大戦の敗北  家族から会社への物語主体の変更


第二次世界大戦の敗戦は、とても大きかった。
いままで、信じられてきた「物語」は、古臭い悪とされた。
(もちろん、家父長を定めた旧民法も廃棄された)

新しくやってきた「物語」は、個人主義と自由主義
 古臭い習慣なんて捨てなさい
 古臭い先祖伝来の土地なんか捨てなさい
 古臭い家なんて、捨てなさい
 
 古臭い農業より、よりよい仕事が都会にあるよ
 古臭い田舎を捨てて都会にきなさい
 君たちは、選択の自由がある
 君たちは、自由な個人だ。誰も君たちに干渉すべきでない
 だから、古臭いしがらみを捨てて、都会で自由に暮らそう

高度経済成長の時代、大半の日本人が「田舎」を捨てて「都会」へ移住した。
「アカルイミライ」を信じて、先祖伝来の土地を捨てたのだ。
それは、同時に先祖伝来の物語を捨てることを意味していた。

1980年まで、日本国は「アカルイミライ」を楽しんだ。

昭和の時代、物語はちゃんと用意されていた。

家族、一族の代わりに
「会社」が物語を引き受けてくれた。

会社は、
 今日より豊かになる明日!
を約束してくれた。


1990 物語の喪失


1990年、バブルが崩壊した。
この時から、日本国は衰退の一途をたどる。

会社が物語を提供できたのは、一時的な話だった。

アカルイミライは、今日より豊かな明日が約束されている、
特殊な時代における一時的な現象だった。

バブル崩壊の本質的な原因は、ソ連の崩壊だった。

第二次世界大戦後の日本において、ソ連の存在はきわめて大きかった。
日本は、冷戦の最前線、アメリカ軍の不沈空母、最重要軍事基地だった。
日本国の存在そのものが、共産主義に対する防波堤だった。

実際には、隣の韓国で冷戦の最前線が止まったため、日本は戦争を経験することはなかった。日本が平和だったのは、韓国が頑張ってくれたおかげと、共産国家との間に、物理的な障壁(海)が存在したおかげである。

それでも、共産主義に対抗する最前線基地であった日本国には、
アメリカが大量の支援をくれた。
  為替レートを円安で固定? いいですよ!
  国が経済に介入する護送船団方式? いいですよ!
  国による法規制? 日本国のややっこしいローカル規制なんて、アメリカの会社が締め出されるやん・・・でも、いいですよ!
  一方的な対日貿易赤字? 共産主義に対抗するコストですね、、いいですよ!
  朝鮮戦争、ベトナム戦争で大儲け? 第一次世界大戦と同じ戦争で儲けるパターンですね・・・ いいですよ! 分け前よこせなんていいません。
  技術の模倣(パクリ)、、、仕方ないですね、いいですよ。


ソ連が崩壊し、共産主義の脅威が去ったことで状況は一変した。

アメリカの態度も一変した。
  もう、日本を甘やかす必要ないですよね!
  日米半導体協定! 日本の半導体は潰します!
  日米自動車協定! 日本の自動車も潰します!
  プラザ合意! 円高にします! 日本の製造業は、潰します!
  規制緩和! 日本のお役所はシャラップ。これからは、アメリカの企業も日本で商売させてもらいますで!
 
 
世界の覇権国、アメリカから
 調子乗んなゴラァ!
と言われてしまった。

それまでは、ソ連がいた手前、日本に大甘だったアメリカが、
日本に気を使わなくなった。

それどころか、調子こいた日本を、しばいたろ!
と、日本の産業を潰しにかかったのである。

結果、ものの見事に日本の産業は壊滅した。
いや、30年後の2020年代においても、現在進行形で壊滅しつつある。


アメリカさんにしばかれて、
日本の産業は空洞化した。

空洞化の結果として、日本では働き手が余剰になった。

1990年から、2010年くらいまで
”リストラ” がずっと行われていた。

2024年からみると信じられないが、
1990年代は、
  教師になりたくても教師になれない大学生
  国立大学を出ても正社員になれない大学生
  正社員が、ある種のステータス
  就職に困らないために、進路を決める高校生
といった、”就職” をめぐるたくさんの悲劇があった。

会社はもう、物語を背負うことはできなくなった。

今日より、豊かな明日はもう存在しない。


氷河期世代 ロストジェネレーション

氷河期世代は、
 物語を喪失した最初の世代
 世代間格差が、相互理解が不能になるまで拡大した最初の世代
 日本国の終わりの始まり

運よく、会社に就職をして
今日より豊かな明日を手に入れた人たちもいる。

一方で、物語から脱落した人たちが大量発生したのが、
この氷河期世代である。

彼らが信じて、そして裏切られた物語とは?

氷河期世代が子供のころ、お母さんはこういった。
  いい大学に行って、いい会社の就職するの。
  そうすれば、人生安泰なんだからね。
  だから、今がんばって勉強しなければいけないの。

ある子供は頑張って勉強をした。
頑張って頑張って、地方の国立大学に合格した。
でも、時代は就職氷河期
就職活動をするも、大企業に就職できませんでした。
フリーターとして、職を転々とする日々
気がつけば50代になっていた
こんなはずじゃなかった・・・・・

ある子供は頑張って勉強をした。
頑張って頑張って、東京大学に合格した。
就職活動でも頑張って、大企業に就職できた。
そのあと、仕事がキツくて、病気になってしまった。
休職と復職を繰り返したのちに、会社に居づらくなってやめた。
それから、実家に戻って引き込もる日々をおくる。
こんなはずじゃなかった・・・・・

ある子供は頑張って勉強をした。
頑張って頑張って、大阪大学に合格した。
就職活動でも頑張って、大企業に就職できた。
仕事はキツかったが、それにも耐えて、耐えて、仕事を頑張った。
ひたすら仕事を頑張ってきた。
気がつけば、独身50代になっていた。
結婚する選択肢がなかったわけじゃない。
でも、お見合いや婚活パーティーでは、
趣味や休日の過ごし方を聞かれて困ってしまう。
なぜなら、休日も仕事や仕事に関連する自己啓発をしていたから。
そのことを女性に告げると、ツマラナイ男、、、(キモイ、キモイ、)と言われてしまった。
ちょっと豪華なレオパレスで一人暮らしを続ける。
仕事をして、預金通帳の残高は増えていく。
同時に、むなしさも増えていく。
こんな金、あったところでどうしようもない・・・・
こんなはずじゃなかった・・・・・

いい大学に行って、いい会社の就職する。
この物語が終わった境目の世代、
氷河期世代、
ロストジェネレーション
あなたたち、騙されちゃったんです。
おかわいそうに・・・・


物語の引き受け手の不在

氷河期世代は不幸である。
裏切られた。

ただ、その後の世代が幸せになれるかというと、そうでもない。

「会社」の後継者が存在しなかったのだ。

ホモサピエンスは、物語を求める。
でも、物語を与えてくれる存在が、消えてなくなった。

大家族は、第二次世界大戦の敗戦で、大日本帝国と一緒に捨てられた。
会社は、1990バブル崩壊から、物語の主役を降りた。

自由主義の物語らしきものは、存在しているが、自由主義は破壊しかしない。何も与えてはくれない。

 ジコセキニン、ジコセキニン
 タセキ思考は悪、自責思考しないと成功しない
 ジコセキニン、
 ジコセキニン


例外としての東京物語

21世紀の日本国にも、実は物語は存在している。
ただし、1990年までに存在した、万人向けの物語ではない。

東京エリート 物語、
選ばれしエリートだけが参加できる、特別な物語。

東京に行き、成功して、大金持ちになる。

成功の仕方は、多種多様。
 IT企業を起業して、大金持ちになる
 ゲーム企業をつくって、大金持ちになる
 株のデイトレードで、大金持ちになる
 マルチビジネスで、大金持ちになる
 情報商材を売って、大金持ちになる
 Youtube でインフルエンサーになって、大金持ちになる

最終的には、シンガポールやパリに移住する。

新しいエリート階級に参画するのである。

具体的には、丸の内OLレイナ氏やDr.ヒロ氏などである。
彼らは、ホリエモンやヒロユキみたいな、”例外” ではなく、
ある意味、等身大の人間にもかかわらず、東京で大成功を収めて、大金持ちになって、そしてエリート階級として、日本国を捨て海外に移住している。


とはいえ、やっぱり
彼らには、若い女性とか、マルチ商売でのトップセールスになった経験 など、明らかに、一般人が持つことができない
”資本”を持ってる。

だから、
東京成功物語は、万人向けの物語にはなり得ない。



キミの、僕の、人生がつらい原因


僕たちの人生がつらい根本原因は、物語を喪失したこと。

大日本帝国の時代までは、一族がいた。
土地と一族、祖先と子孫と親戚と、、
暮らす土地で、ずっと永遠に続く(はずの)、偉大な物語の中で生きることができた。

バブル崩壊までは、会社があった。
この会社で頑張っていれば、今日より豊かな明日がくる。
子供をよりよい大学へ行かせて、よりよい会社に行かせて
一族のなかで、永遠に続く(はずの)、偉大な物語を生きることができる、、はずだった・・・

バブル崩壊により、物語が消えた。

この世界で、いったいぜんたい、何を信じたらいいの?

ジコセキニンと言われたって、
自分で決めろと言われたって、
現実問題、信じるにたる物語なんて、どこにも存在しないじゃないか!


ネアンデルタール人と同じ運命


物語を失った、ホモサピエンスは、ネアンデルタール人と同じである。

それどころか、脳の容積や、骨格の大きさなど、ネアンデルタール人より一段階劣った存在である。

滅びを待つだけの存在

物語をもたないネアンデルタール人は、
物語を生きるホモサピエンスに勝てやしないのである。

目下、日本国は侵略されている真っ最中である。

戦争しているわけではない。

物語を喪失した日本人は弱くなった。
子供を産まなくなった。

そして、老人の世話をするための人が足らなくなった。

だから、移民を受け入れた。

物語を喪失した日本人たちは、日本国を、自ら明け渡した。

移民たちは、それぞれの物語をもっている。

中国系の移民たちは、土地を失っても一族の物語を維持している場合が多い。彼らは一族のために、祖先と子孫のために頑張ることができる。
イスラム系の移民たちは、イスラム自体が強力な物語である。
ベトナム系の移民たちは、今日より豊かな明日を信じているのかもしれない。

いずれにせよ、物語のないホモサピエンスは、飛べない鳥。
飛べない豚は、ただの豚。
物語を失ったホモサピエンスは、、、、死んでないだけのゾンビなのかもしれない。


僕たちはどう生きるべきか?

もし、君が10代~20代であれば、唯一残されている東京物語に参加する権利がある。
険しい道で、参加者のほとんどが脱落する残酷な物語だが、参加しない手はない。

厳しいのは、40代を超える氷河期世代の皆さんである。
ほとんど詰んでいる。
氷河期を引き受けてくれる物語がない。

であれば、
であれば、、、、、

物語なしに生きなければならないこの苦痛を、
”何か”で緩和するしかない。

依存である。

思うに、
 ネット
 ゲーム
 Youtube  
 マンガ
 (あとポルノ動画)
これらは、麻薬と似ている。

これらは、強い刺激で人間の脳をハックしてしまう。
そして、ほかのことを考えられなくしてしまう。

21世紀の日本では、
麻薬は禁止されているが、
ゲーム、ネット、Youtube 、マンガ、そしてアルコールは、合法である。

これらを、うまく使って苦痛を緩和しながら、
その日その日を生きる。

これしか、現実的な選択肢はない。




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