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NO.2の育て方⑮自己犠牲の葛藤を乗り越える

NO.2論によく登場する概念として、自己犠牲があります。皆さんは自己犠牲と聞くとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「滅私奉公」、「自己満足」、「搾取」、こんなところかと思います。

今回は自己犠牲をテーマにNO.2の心得を少し掘り下げてみます。

■NO.2は自己犠牲が必要となる

繰り返しになりますが、NO.2の仕事は社長を陰で支えることです。また、NO.2の要件としては「能力があり、かつ、人に仕えることができること」ともお伝えしてきました。

人に仕えると言ってもNO.2の仕え方は一般社員の意識や行動とは大きく異なります。ある意味、社長の熱狂的信者です。だからこそNO.2としての職責を全うできる訳です。

誰もはっきりと言わないことですが、NO.2は自分を犠牲にしてでも、社長の気持ちや考えに応える、こうした覚悟が求められていることが現実です。

覚悟が違うからこそ、社長からの信頼が厚く、裁量も与えられ、待遇も他の社員とは異なります。

その覚悟の背景には自己犠牲がありますが、自己犠牲には先に述べたような滅私奉公や搾取といった悲壮感を伴ったネガティブなイメージがあります。

NO.2本人も覚悟をしつつも、人間ですから時としてそうした気持ちに囚われてしまうことも当然あります。特に、内心では自分の方が社長よりも優れている部分があると感じている場合には尚更です。

時に生まれるそうした心情と上手く付き合いながら、NO.2は社長に仕えなければなりません。それがNO.2というポジションの役割だからです。

■似て非なる献身と自己犠牲

ところで、自己犠牲という言葉に似た意味の献身という言葉があります。相手に尽くすという意味では同じではありますが、尽くす側の人間の心持ちで使い方が異なる言葉です。

【自己犠牲】 自分の利益のために相手に尽くすこと

【献身】   損得勘定なしに相手に尽くすこと。

大雑把に言えば、こうした違いがあります。NO.2が自己犠牲が過ぎると苦悩する時に心中ではどんな気持ちが発生しているのでしょうか。「自分はこれだけのことをしてやってるのに報われない」、「自分の能力を発揮して周囲から認めてもらいたい」、簡潔に言えばこんな気持ちです。

自分の欲求に応えてくれる、満たすことができれば仕えるという条件付きでは、社長の熱狂的信者とは言えません。

ですので、NO.2はNO.2としてどう在るべきなのか、自分がNO.2の適性を持っているのかを深く自問自答しないといけないのです。

自己犠牲だと感じれば心がもやもやし、きっと長くは仕えることができません。

社長が好きだからこそ敬意を払い、自分の思い違いや自惚れを修正し、社長を信じて愚直にNO.2としてやり続けること。これが自己犠牲を昇華させた献身の境地であり、本当のNO.2の姿です。

■秩序とは上下関係を保つこと

NO.2が自己犠牲を憂う気持ちで派生する心情としては、社長と自分の優劣を競い、自分の方が優れていると感じるというものもあります。

仮に社長が自分より能力的に劣っていると感じても、社長は社長です。厳然とした上下関係が存在します。この上下関係が秩序であり、秩序を保つためにはNO.2は主観的な見方や傲慢な考え方を改める必要があります。

社長はどうやって今まで会社を継続してきたのか、自分が知らない社長の苦悩は何か、社長の突出した能力は何か。

あらゆる主観を捨て、客観的に考えてみると、NO.2は社長としての責務は遂行できるはずもありませんし、自分の決めた尺度で社長を評価したところで、社会における社長の客観的価値は何も変わりません。

上下関係をわきまえない言動というのは、会社における秩序を混乱させることでもあります。NO.2は扇の要と言われますが、要が混乱を招いてはいけません。

言ってみれば社長もNO.2が見えていないところで自己犠牲を払っている訳ですし、社長が全くの無能であることもありません。この点を見落として、自分の方がより優れているなどと考えるようではNO.2の資格がそもそもないということになります。

世の中には時として理不尽なこともありますし、全てが自分の思うようにはなりません。けれども、そうした理不尽や道理に合わないと感じることがあっても、そうした感情を身をもって経験することで自分が鍛えられ、人の気持ちが理解できるようになります。

NO.2も社長の部下であると同時に他の社員にとっては上司でもあります。秩序を維持し、部下である社員にとっても思うようにならないことがあっても腐らずに前向きに頑張る気持ちにさせることもNO.2の仕事です。

■まとめ

今回はNO.2の心の内にフォーカスしてみました。読み手の立場によって感想はさまざまかもしれません。

NO.2である人、NO.2候補者の人にとってはそういう心の葛藤があるんだなと参考にして頂ければと思いますし、社長にはNO.2はそういうことを感じたりするものなのだと知って頂きたいと思います。

一方だけが利益を享受する、優劣をつけようとする。この状態では社長とNO.2の関係は上手くいきません。

結局、重要なことはお互いの立場や役割を尊重し、お互いに慮る気持ちを持つことです。

最後までお読みいただきありがとうございます。