見出し画像

経営理念と経営戦略~理念はいかにして生まれるのか

先日、(並び)幹事をしている「アート思考研究会」で登壇の機会をいただきました。テーマは
◆アート思考で創造する 経営理念と経営戦略~理念はいかにして生まれるのか

一昨年から「経営戦略」についてお話しする機会を何度かいただいていました。そのたびにほぼ半分の時間を「経営理念」の話に費やしてきました。理念と戦略は切っても切れない関係だと思っているからです。今回はそこから一歩踏み込んで、理念はどうやって生まれてくるのか、その過程を「アート思考」として捉えてみようとする試みでした。

■戦略と戦術

本題に入る前に必ずする話があります。それが「戦略と戦術」の違いです。日本では、このふたつが区別なく「戦略・戦術」の形で多く使われます。さらに言うと、ビジネスの場面ではほとんど戦術という言い方はされず、なんでもかんでも「○○戦略」と名付けられてしまうでしょう。営業戦略・財務戦略・製造戦略・マーケティング戦略etc・・・・・・ 本来は戦術レベルで考えないといけないことも「戦略」で括ってしまっています。
日本語では似たような言葉になりますが、英語では、戦略=strategy、戦術=tactics、になります。

いろいろな説明の仕方があると思いますが、戦略はWARの勝利を、戦術はBATTLEの勝利を目指すもの、というのが一番簡単かもしれません。

たとえば、太平洋戦争を例にすれば、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦といった局地戦に勝つために立案するのか戦術、太平洋戦争そのものの勝利を目指して立案するのが戦略です。あるいは、プロ野球のペナントレースを例にとれば、今日、目の前の対戦相手に勝つために考えるのが戦術、ペナントレースを制して最終的な優勝を目指すのが戦略、と言ってもいいと思います。

もちろん、局地戦の勝利の積み重ねが最終的な勝利に結びつくわけですから、両者が無関係であるはずがありません。セットで考える必要はあります。しかし、レベルが違うというか、両者の関係は同等ではありません。戦術は「戦略を達成するための手段」です。戦略の成果がはっきりと示され、正当な評価を得るまでに長い時間がかかる場合が多いものです。昨今のスピード重視、短期での業績を優先する風潮では、本来の戦略は敬遠されてしまい、戦術レベルのことを戦略と言い換えてしまっているのではないか、というのが、僕が感じていることです。

■経営理念と経営戦略

戦略を達成する手段が戦術であるなら、戦略は理念を達成するための手段である。理念と戦略の関係を僕はこのように考えています。特に経営理念と経営戦略ではこの関係性が顕著であると思っています。

経営者は「自分の会社の存在意義」を考えているはずです。創業者であればなおさらにそうでしょう。想いを持って創業されたはずですから。ただ、想いであるだけに、往々にして不合理なものになってきます。別に合理的に考えて想いが生まれてくるわけではないからです。不合理である想いだけで突っ走れば、うまくいかなくなるのも当然のことだと思います。だからこそ戦略が必要になります。

時に主観的で不合理な経営理念を実現するための、客観的で合理的な準備・計画・運用が経営戦略なのだと考えています。

■経営理念はいかにして生まれてくるか

では、その時に主観的で不合理な経営理念はいかにして生まれてくるのですか。これをアート思考として捉えてみるというのが、今回の講演の最終的な狙いでした。

アート思考について、ここで細かく説明はしません。アート思考研究会のホームページにアート思考の定義と歴史が載っているのでそちらを参考にしていただければと思います。

そこで僕は、

「アート思考とは、アーティストがアート作品を生み出す過程で使われる感情や論理をヒントにして、アート作品以外のものを生み出すための手がかりとする思考法」

と定義しています。

アート思考の定義はいろいろとあり得るのだと思いますが、今の時点で共通しているのは自分起点、まず、自分の感情を深掘りすることから始まることだと思います。

画像1

まず自分の中にある感情に気づき、自分と世界の関係を捉えるべく考え、発見し、理解する。これがアート思考の出発点になります。そしておそらくは、経営理念も自分の感情を深掘りし、自分が本当にやりたいことを発見することから生まれてくるのではないか。そう考えています。

そう考えるとことで、理念の誕生とアート思考は結びつくのだと僕は思っているのですが、ただこれはまだ生煮えです。今回は仮説として提示したものですから、今後、考察を深めていきたいし、議論も積み重ねていきたいと考えています。それはアカデミックな部分での成果につながることもあり得ますが、それ以上にこれを考えることは「自分自身の人生の理念(ミッション、パーパス)」を見つめ直すことにつながると信じているからです。

■(半分おまけですが)3C分析について

今まで述べたことを踏まえると、3C分析を「顧客(マーケット)」から始めろといわれることに違和感を覚えます。「自社」から始めるべきではないか、というのが僕の年来の持論です。まず自分がなにもので、どんなことができて、何をしたいのか、それを考えずに「顧客(マーケット)」分析に走るのは、「儲かるならなんでも良い」という振る舞いになりかねないと思うのです。
このあたりの考えをあるコラムに書いたので、参考にリンクしておきます。

■本当におまけとしての告知です

ここに書かれたような内容について、当ブログの母体である「企業内診断士の輪を拡げる『楽しい』チーム」の定例会で発表する予定です。おそらくは5月になるでしょう。自分の診断士としての理念(ミッション、パーパス)は何か」を考えるきっかけにしてもらえればと思っています。

もし興味がわいたい人がいれば、我がチームは、「中小企業政策研究会」内のチームになるので、まず、中小企業政策研究会に参加していただく必要があります。4月の全体定例会は13日火曜日にZoomで行います。テーマは人によっては絶対知りたいと思うであろう

人生が豊かになる! 【1冊30分で読む速読法】

です。見学は無料だと思うので、とりあえず参加してみてくださいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?