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映画「誰も知らない」 無視される子供たち

あらすじ

都内に母(YOU)と父親が違う兄妹4人で住む幸せな5人家族。しかし家族には秘密があった。学校にも通ったことがなく、12歳の長男の明(柳楽優弥)以外の兄弟3人の存在は周囲に知らされてなかった。ある日、新しい恋人ができた母親は、メモと現金を残し家を出てしまう。この日から、4人の子供たちだけでの誰も知らない生活が始まる。

実際にあった事件をモチーフに、ネグレクトや無戸籍児童を題材にした映画。


内容と感想

なぜ無戸籍者が存在するのか?

なんと、現在の日本でも無戸籍者、戸籍を持たない”存在しないはずの人間”はかなりの数存在しているらしい。

無戸籍者が生まれる原因でいちばん多いのは、離婚したあと、新たなパートナーとの間にこどもができた場合である。

離婚後300日以内においては、遺伝上の父の子として登録できず、そのまま出生届を出すと前夫の子と推定されてしまう。
父親の子として認定されるためには、前夫からの申し立てが必要となるが、心情的に協力を求められない場合が多く、母親が出生届を提出していない状況が散見される。
しかし近年、全国法務局の働きかけもあり状況によっては家庭裁判所において実父による認知調停が多く認められ、離婚後300日以内であっても前夫の協力を得ることなく出生届が行えるケースが増加している。
               Wikipedia「無戸籍者」より


本当に「誰も知らない」のだろうか?

家賃が振り込まれて居ないことで、家に訪問してきた大家は、片付けられていない部屋の様子や、居ないはずの子供の存在に気づく。
「お母さんは?」
「仕事で大阪にいていません。」
「親戚の子?」
「はい。」
「...そう。」

長男の明が、よく買い物や公共料金を支払っていたコンビニがある。コンビニの店長(平泉成)は、母親の仕送りも途絶えてきた頃には、明の汚れた洋服や伸びきった髪から、おそらく異変に気付いていただろう。
明たちはろくな食事もできず、夏の暑いある日、幼い妹が死んでしまう。妹が大好きだったアポロチョコレートを大量に買いにきた明たちに店長は声をかける。
「みんなで遠足にいくの?楽しそうだね〜。」

違和感を感じながらも、見て見ぬ振りをするしかない大人たち。
当事者ではない大人たちに出来ることは限られているのだろうか。
「警察や児童相談所に連絡するのは?」と聞くコンビニの店員に、明は、「そしたら4人で一緒に暮らせなくなる。前にもそういうことがあって、大変だったから。」と答える。

コンビニの店員は、こっそり店の廃棄を明たちに渡しており、店長はきっと気づいていて黙認していたんじゃないかと思う。店長にとって見て見ぬ振りをすることが、明たちに唯一できることだったのではないだろうか。


モチーフになった実際の事件では、長男の遊び仲間が不良少年たちで、「家が不良の溜まり場になっている」という大家から警察への通報で、放置された子供たちの存在が明らかになっている。

自分への迷惑や害がなかったら、気づいても何もしないのだろうか。

きっと、警察や相談所に連絡するべきで、それが正しい。
こんな生活悲しすぎるし、外に出て、社会に触れて生活してほしい。
しかし、他人の人生に立ち入るのは簡単なことではない。
責任を負うべきは親で、育てられないなら産むべきではない。
そんな単純なことなのかな?
子供の父親に捨てられた母親は、なぜ「産まない」という選択をしなったのか?母親だけが悪いのか?同じく見て見ぬ振りをする4人の父親たちは?
異変に気付いていただろう周りの大人達は?他人であるから許されるのか?

誰が1番勝手なの?あんたのお父さん1番勝手じゃないのよ、ひとりで居なくなって。あたしは幸せになっちゃいけないの?


もし自分が、そういった子供を見つけてしまったら?

自分だったらどうするのか、何ができるのか、映画を見終わってからずっと考えているが、答えはまだ出ていない。

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概要

『誰も知らない』(英題:Nobody Knows)は、2004年に公開された、『海街diary』『万引き家族』などの是枝裕和監督の日本映画。1988年に発生した巣鴨子供置き去り事件を題材として、是枝裕和監督が15年の構想の末に映像化した作品である。母の失踪後、過酷な状況の中で幼い弟妹の面倒を見る長男の姿を通じ、家族や周辺の社会のあり方を問いかけた。主演柳楽優弥はこの作品でカンヌ映画祭で最優秀男優賞に輝いた。


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