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数字を避けてボケの仕組みを表現したい

あ、カメラのレンズの話です。
内容は間違えている可能性があるので、時々見直しを行い、誤っていれば正しい情報に書き換えたいと思います。
また、もし誤りがありましたら、お手数ですがコメント欄でご指摘いただけますと幸いです。

写真を撮るときに、主題以外をぼかしたい、と思ったとき、カメラマンが考えることは主に以下のふたつがあげられると思います。

  • 絞りを開く(≒F値の小さいレンズを使う)

  • 焦点距離の長いレンズを使う

なお、主題と前景・背景の物理的距離を離す方法もありますが、位置関係を変えられない場面もあるので、今回は機材(金)さえあれば採用可能な方法で考えていきたいと思います。

そもそも、どうやってピントを合わせるのか?

MFの単焦点レンズで考えたときに、レンズには絞り環(フォーカスリング)がついていて、これを回すことにより、遠くは無限遠から、近くは最短撮影距離(最短距離はレンズにより異なる)までの範囲でピント(の中心)が合う。
フォーカスリングを回すことで、一つの製品としての単焦点レンズの筒の中にある、レンズを構成するパーツとしての一枚一枚のレンズのうちの一部、もしくは最大で全てのレンズが前後する。このレンズの位置調整により、センサ(もしくはフィルム面、即ち像面)に写る像のピントを調整している。
どのレンズを動かすかにより、全群繰り出しだとかインナーフォーカスだとか、呼び方が付いているのが四種類くらいある。

以下、(製品としての)レンズを簡略化して、1枚の凸レンズと見做す。
また、いろいろ細かいことは気にしない(幾何光学というらしい考え方をする)。

あるレンズにおいて、像面でピントが合う任意位置にある被写体とその像を図に表すと、図1のように表現できる。

図1. 像を結ぶ状態

この被写体の位置を基準に、レンズに対し、より離れた位置にあるものを被写体とする場合、図2のように、像が結ぶ位置はレンズに近づく。

図2. レンズから少し離れた被写体の像が結ぶ位置

これをまとめると、図3のように、被写体が遠くなればなるほど、像が結ぶ位置は焦点に近づき、最終的に焦点の真上に結像するとき、被写体からレンズに入ってくる光は限りなく光軸(図中ではレンズの中心を通る横方向の破線のこと)に平行になる。これを近軸近似、というらしいが覚える必要は無い。

図3. 被写体の位置と像が結ぶ位置の関係

さて、現代において市販されているカメラボディは基本的にフランジバックが決まっている。言い換えると、像面は固定されている(カメラによっては結像させたい位置に像面を動かす方式の物も存在する)。
よって、像面で結像させるための手段は、レンズを動かすしかない(写ルンですなど一部の商品は、レンズも像面も固定だが、後述の被写界深度を深く撮れるように設計することで、一定距離以遠でのパンフォーカスを実現している)。
実際に、レンズの撮像距離を無限遠に設定すると、多くの単焦点レンズは、全長は最も短くなる。

図4. 遠くにある被写体を像面で結像させた状況

理想的には、ピントを調整しても画角(即ち焦点距離)は変わらない。しかし、実際には画角は変わってしまう。例えば全群繰り出しのレンズの場合、無限遠の場合は画角が狭くなる(狭くなる、というかこの状態での焦点距離がレンズの焦点距離、とどこかで読んだ気がするがソース不明)。
後の方で記載する焦点距離とボケ方の話で出てくる図を少し曲解するとこの話が伝わるかもしれない。

ボケるとはどういう状態か?

ボケる、とはピントが合わない状態だろ、と思われる方がいらっしゃるかと思う。
事実です。
ですが、どの程度ピントが合っていれば、ボケていないのか。

極端な話で考えると分かり易いので、まずはこう考える。
理想的なカメラシステムがあり、ある被写体からの光を完全に唯一の画素に集光でき、センサ内外部での光の乱反射や画素が離散的であることによる折り返し歪み等全てを無視できたとしたら(この辺の条件はボケとは関係ないが)、撮影した写真の被写体にボケは存在しない(ただのドットになる)。
この話は極端すぎるため、もう少し現実的に考える。
ある一定の部分に光を集めることが出来ればボケない、という範囲を考えると、その範囲に光が集まっていればピントが合うし、その範囲に集まらなかった光はボケる。
この範囲を許容錯乱円と呼ぶ。趣味として写真撮影を楽しむうえでこの単語を覚える必要は無いが、この記事ではあと何回か出てくるので揮発性記憶領域にでも置いておいてください。

図5. ボケる、ボケないの境界線

この円は半径0より大きいので、焦点を通過した光が斜めに入る場合がある。よって、一定の範囲では焦点が合うことになる。本来は象面に垂直な範囲にピントが合う範囲が存在するはずはないが、意味合い的には象面に垂直方向でピントが合う。この範囲を、覚えなくていいが、焦点深度と言い、それを(レンズの屈折率等で距離感は大きく変わるが)被写体の周囲の光の位置関係まで辿っていくと、カメラシステムから見て一定の奥行範囲においてはピントが合うことが分かる。この奥行のことを被写界深度と呼ぶ。この単語は覚えておくべき頻出単語。
図の通り被写界深度は被写体を基準に遠近方向で等しくはならず、遠い側の方が広くなる。

絞りを絞るとボケない理由

絞りを絞るとピントがあう範囲が広がる。
これは、被写界深度の話の続きとして考えると良い。絞り羽根により、レンズに入ってくる光の通路の範囲(これを有効口径という)を狭めることで、許容錯乱円に収まる光の量が増えるため、ボケない範囲が広がる。

図6. 絞り込んだ場合の光の経路

こうやって考えると「絞りを絞る」とか「絞り込んで撮る」とか「頭痛が痛い」と言ってしまう理由が分かる。
光を絞り込むための羽根だから、絞り羽根。たぶん。
でも芸術的な動きをするあの金属の部分に対して「羽根」っていう発想はなかなか出ないと思う。分解すると絞り羽根を構成する一枚一枚の金属部品は羽根に見えなくもないかもしれないが。だから、「羽」ではなく「羽根」?

…ともかく、そういうわけで、絞り込んでいき光軸に対し限りなく平行な光が入ってくるようなピント位置と絞りの関係にすることで、カメラシステムから見てある一定の有限距離離れた地点より遠くは(近似的に)全ての範囲でピントが合うことになる。これがパンフォーカスの原理。

図7. MFレンズにある距離表示

MFレンズの場合は、レンズ自体に、どの範囲ならピントが合うのか、を書いてくれている。
このアナログな表記が直感的で分かり易いので、MFレンズはやめられない。
むしろAFよりも便利だ、とさえ思えてしまう瞬間さえ、ある。図7の例では、F値は11なので、少なくとも5mより遠く無限遠までのピントが合うことが分かる。ストリートスナップ等で少し絞り込んでおけばだいたいにおいて撮りたい瞬間をちゃんと撮れるのはそういうところからだと思う。

焦点距離が短いとボケない理由

MFTがなぜフルサイズよりボケないのか、の話にも通じるが、焦点距離が短いとボケない。
先ほどの許容錯乱円の話を使って説明できるのが一番スマートだとは思うが、ちょっと作図がめんどくさいので、もとい、もっと直感的に表現したい。とは言え間接的には許容錯乱円や焦点深度の部分の説明に準じていると思うので、人騙しのような説明ではないと思う。

焦点距離が長いレンズの場合は、被写体と、その近くにあるピントが合っていない物体の光の入り方の差が大きい。図8では「ボケの程度」という危険な表現をしているが、像面の広い範囲に光が分散する。

図8. 焦点距離が長いレンズで撮影している状況

一方、図9のように、焦点距離が短いレンズを使って撮影した場合には、像面の狭い範囲に光が集中する。このようにして、広角レンズの場合はボケにくいことが分かる。

図9. 同じ撮影距離で、焦点距離が短いレンズに付け替えて撮影している状況

マイクロフォーサーズ(MFT)はイメージサークルが半分なので、35mm換算した焦点距離がフルサイズセンサ用のレンズと同じになるMFT用レンズは焦点距離が半分である。レンズ自体の焦点距離は半分なので、35mm換算した場合に、MFTシステムはフルサイズのシステムよりボケにくい。

まとめ

ぼかしたいときは、焦点距離が長い、もしくは開放F値が小さなレンズを、もしくはその両方に当てはまるレンズを選べば良い。
ただ望遠で且つ開放F値が小さいレンズは所謂ブルジョワな方々が買うものなので、庶民には高嶺の花である、ということは敢えて明記しない(した)。

逆に、MFで動きモノを撮ろうとすると、ボケという写真表現の要素とのトレードオフにはなるが、絞り込むことでピントを気にせずに構図だけに注力して写真を撮れるようになる。

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