宇禰 日和

無感覚なままで生きているんです。心躍る出来事のない生活というものがこんなにも単調でこんなにも平和的でそしてこんなにも穏やかなことを知りませんでした。わたしは、
声が出ているんでしょうか。
仕事はどうですか、と聞かれるたびにどう答えて良いのかわからずに笑う癖をお辞めなさいと、言ってあげたかった。泣くのを、堪えたまま、笑うのは、情けのない、気持ちになります。岩石みたいなチョコレートケーキで誤魔化して、どこまでも行けるのなら、どこまでも息のできる場所を探して行きたかった。何もできぬまま答えの出せないわたしをどうか許してください。窓辺に、
すずらんが3鉢あります。
取り寄せたものではありますが美しいすずらんです。家には誰ももう来ないから、
わたしだけのためにある小さな可愛い最後の薬です。全身が冷えるので暖房をやっと入れました。風が身体の中を通り抜けてばかりいて、今日も明日も寒いです。だれかに、
愛されたかった、のではなくて、だれかに、
抱きしめて欲しかっただけのようにも思います。春を、
売るほど柔らかくもなく醜いだけの肉塊を
束ねただけのわたしです。
言葉がもうあまり出てこなくなってきてこれはもう、生きているのでしょうか。
健康で文化的な最低限度の生活とは曖昧なもので、文化とは、心を殺さぬための礎であったはずかと、そう記憶しておきたかったのですが、わたしは、
 腕、と
 掌、
 ばかり求めて、
知っていますか、赤ん坊は
抱きしめたりあやしたりしなければ心と身体が育たないということを。幾つになっても何もかも育たぬまま植物ばかりを育てています。葉が少しばかり開くとこんな自分でも命をひとつ育むことができるのだと安堵するのです。明日は冷蔵庫の中にあります。わたしはこのまま眠ります。濡髪のまま、
落ちていくだけの夜です。

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宇禰 日和
詩を書きます。