秋の瀬

夕暮れの鱗雲を眺め
綺麗 と 呟く
と 同時に
死にたい と 呟く
こころが
どこにあるのか
死にたいと言いながらも
わたしは
物を食べ
水を飲み
排泄をし
ひとを好きになろうとし
愛そうとし
触れようと
夜を泳ぐ
こころがどこにあるのか
わたしは
死にたい と 溢れ落ち
崩れた
言葉のかけらから
生きたい と 同等の重さを拾い集める
手のひらから
指の隙間から
輝かんとするそれらを
もう一度口に含もうと
必死になって
嘔吐く
日常の
花が綺麗だとか
空が眩しいだとか
知らぬひとが席を譲ってくれたとか
犬の舌先が濡れてやわらかいだとか
君がいとおしいだとか
そういった
脆く
あたたかく
醜くさが触れたら
亡くなってしまうものと
距離を測りながら
わたしは
なくならない陽を
探している

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