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Extra Page🐾 食わねば戦はできぬ

深夜バイトがある日は夕ご飯を作る気になれない。
そんなことに時間を割くより私は仮眠の時間を大切にしたい。

という口実で私は週に2回ほど夕ご飯づくりをさぼる。月に自分で決めた食費の中で食材を買って、
その中で飽きないように献立を考えるのは容易ではない。
(世の料理をする方々には頭が上がらない)

まだ新しい環境に慣れていないからか、胃がキリキリ痛む。優しい味のするものが食べたい。
冷やし中華、パスタ、チキン南蛮弁当と横に目線を映していく。
しかし、どれもパッとしない。
ふと、視線を上げると「豚汁」の文字が。
ただのインスタントではなくて、具材がしっかりしているタイプのやつだ。

コンビニで豚汁?クオリティ低そうだな....
きっと味薄いんだろうな....
(開発の方々ごめんなさい)

そう思う一方で、私の舌は豚汁を迎える準備ができてしまっている。
「まあ、ちょっと試してみるか」そんな上から目線な気持ちでおにぎり一つと一緒に購入した。

家に帰り、クッションに腰をおろすと身体が鉛みたいに一気に重くなる。その重圧に思わず声が漏れる。

とにかく早く腹を満たさなければ。
その一心で豚汁の蓋を開け、飢えた犬のように腹の中にかきこんでいく。
豚汁が飛び込んできた瞬間、私は雷に打たれたような衝撃が走った。

まて、コンビニだよな....?

噛みやすいように柔らかくされた野菜からはほんのりごま油の香りがする。噛めば噛むほどその香りは強くなる。汁を一口飲めば、出汁とごま油の香りが調和して、なんとも言えない、あの懐かしさが込み上げてくるのだ。

このクオリティでコンビニ....?本当にいいのか...?

確かに、香りを引き立たせるための化学調味料は入っているだろうし、それ以外にも出されているものはあるのだろう。

しかし、そんなことはどうでもいい。
【美味い】以外の言葉が出てこない。
悔しい。コンビニのくせに。
私はこんなに美味しい豚汁など作れやしないぞ。

そう思う反面、この上ない幸福感で心が満たされていく。

たかが豚汁。されど豚汁。
私は" コンビニの豚汁 "に心も腹も満たされてしまったのだ。

2時間ほど仮眠した後、藍色に包まれた商店街を歩く。
これから私は戦場へ向かう。
一方で私はまるで、これから遠足に行く小学生のようだった。

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