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アメリカ旅行記③ The Grand Circle(前編)

アメリカ旅行記③の舞台はThe Grand Circleだ。

(今回は移動中のお話がメイン、キャニオン観光は後編です。)

後編のリンクはこちら

The Grand Circle(グランドサークル)というのは、アリゾナ州とユタ州の州境にあるパウエル湖という巨大な人造湖を中心に描いた半径 230 キロメートルの円に含まれる地域を表す。

これには有名な観光地が多数含まれる。グランドキャニオンやアンテロープキャニオン、ザイオンなどもこのうちの一部だ。

今回訪れたのはグランドサークルのほんの一部で、ホースシュー・ベンド、アンテロープ・キャニオン、グランド・キャニオンの3つだ。

自身が一番楽しみにしていた地域であり、今回の旅行で最も衝撃を受けた地域でもある。

ただ、あれ程のスケールを文章で表現できるかは些か不安で、自信はない。

アメリカ4日目・ラスベガス出発

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(↑もちろん全員運転できるよ)

アメリカ4日目、ラスベガスを発つ日だった。3時間の睡眠から目覚め、まずはレンタカーを借りに行かなければならない。睡眠というか、仮眠だ。

チェックアウトまで時間があったため、とりあえずレンタカーだけを借りに行き、大量の荷物等は宿に置いていくことにした。

Lyftを呼び、空港に向かった。

今回のレンタカーはマッカラン国際空港(ラスベガス)で借り、ロサンゼルス国際空港で返すという、ロングドライブだ。ここからの旅は、基本車で移動となる。荷物も積みっぱなしにできるため、移動が非常に楽だ。

レンタカーの貸し出しカウンターでは、やる気のないスタッフがテキトーに対応してくれる。オプションのカーナビは部品が足りなかったし、グローブボックスはゴミだらけだった。

アメリカでは、25歳以下がレンタカーを借りる場合、ヤングドライバーフィーという追加料金が掛かる。これがかなり大きく、1人あたり1日20$程度だと聞いていたが、なぜか全員・5日間で100$程度だった。非常にツイていた。予定では500$掛かるものが100$で済んだのだ。

久々の左ハンドル右車線だったが、アメリカの道路は非常に気持ちがよかった。

借りた車はDODGEのgrand caravan。ハイパワーなアメ車は踏めば踏むだけ豪快なエンジン音と振動、馬力を出してくれる。非常に気持ちがいいが日本車とは桁違いにガソリンが減っていく。エコの時代にこんな車に乗ってアメリカを駆け抜けるのは最高の気分だった。

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(↑seven-elevenでストリート朝食、眠そう)

宿に戻る前に、コンビニで朝食を取る。安心のクオリティ、セブンイレブンだ。このころあたりからコンビニの食事にも慣れてきた。

てっきり日本企業だと思っていたが、セブンイレブンのルーツはテキサス州のオーククリフという小さな町の氷屋だそうだ。日本での生活にすっかり馴染んでいたコンビニのルーツがテキサス州にあったのは驚きだ。旅行中、友人の1人がこうしたうんちくをよく披露していた。うんちく博士だ。

コンビニの駐車場で朝食を食べている間だけでも多くのことが起きた。タバコをくれと言う浮浪者、絶対に通れないであろう路地からクラッシュしながら出てくる巨大な車、目があってピースサインを送ってきた青年。いるだけで感情が豊かになりそうな国である。

コンビニの駐車場でストリート朝食を済ませて我々は一旦宿に戻った。明け方に一生懸命干した洗濯を取り込み、荷物を整理する。チェックアウトの際に会った清掃員との会話はところどころ聞き取れない英語が散りばめられていた。

バンに5人分のスーツケースや荷物を押し込みジャンケンで席を決めた。この旅行はかなりの意思決定がジャンケンによって為されている。自分はジャンケンがとてつもなく弱い。

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(↑キマッてるウォールアート、車で隠れて残念)

ラスベガスを出発したのは昼ごろ、まずはホースシューベンドを目指した。まずはラスベガスのはずれのマリファナ屋さんを訪れてみた。いかにもヤバそうなウォールアートの建物だった。

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(↑もう一方の壁で記念撮影)

中にはマリファナの歴史展示やガラス張りの工場などがあり、普通に観光スポットのようになっている。あとなんかすごく臭い。

マリファナ屋さんで記念にお土産(笑)を買いこみ、ようやくラスベガスを発った。

都市を出るときはいつも感傷的な気分になる。必ずまた来たいと思うのだが、もう一生訪れないかもしれない可能性だって大いにある。

今回の旅路はサンフランシスコからラスベガス、グランドサークルを経由しロサンゼルスと、一方通行だ。都市に入れば必ずそこを出て次の都市を目指す。その繰り返しだ。戻ることはなく進み続ける。

一方通行の旅路はその地その地での思い出を色濃く、刹那的に印象付ける。矛盾したような表現にも感じるが言葉にするとそういった感じだ。自分の表現はまだまだ乏しい。勉強不足だ。

アメリカ4日目・ラスベガス〜ホースシュー・ベンド**


ラスベガスを出発して内陸部に向けて進むと景色はどんどん静かになった。主張の激しいビルやホテル、ネオンはなくなっていき、そこには自然が静かに佇んでいた。

徐々に開きだす景色の遥か彼方に山が見える。いくらアメ車で飛ばしたって山は近づかない。

しばらく走ってやっと山が近づいたと思うと、今走っている道は山へと吸い込まれていく。山の断面を走りぬけるようなその道は凄い迫力だった。

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(↑写真で伝えきれない。悔しい。)

左右の山が今にも道に覆い被さってきそうな勢いで迫り出している。森の道に覆い被さるように生える樹木を想像して、山に置き換えるようなイメージだ。スケールが狂っている。

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(↑山の抜けかけのところ)

そんな山を抜けると一気に荒野に放り出される。日本ではありえないレベルで見渡す限りの荒野で、地平線の果ての方に、雲のように山々が連なる。

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アメリカでは広大な土地や地形に加え、低い湿度がその視界の奥行きをさらに深める。我々は日本に慣れているのでその効果がさらに大きくなるのだ。

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(↑休憩スペース、というかただの駐車場。)

ハイウェイにはだいたい30分〜1時間おきくらいに町があり、ジャンクションで降りて休憩することができる。たまに路肩に駐車場もある。

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荒野に急に出現する町は人間がいる安心感を与えてくれる。何もない荒野の果てしない一本道は人間の世界を出てしまったかのような不安な気持ちになることがある。電波が通じないことも相まって完全に隔離されてしまった気持ちになることがあるのだ。

我々は途中トイレ休憩とドライバー交代を兼ねてSt.Georgeという小さな町のガソリンスタンドに入った。アメリカのガソリンスタンドは大抵コンビニに併設されている。

車内で座っていたみんなのエネルギーは駐車場で一気に放出された。静かに座っていられる集団ではない。鳥と一緒にスナック菓子を食べた。

小さな町に寄って休憩するのはロードトリップの醍醐味だ。その地その地の雰囲気を楽しめる。だがこうして寄り道を楽しみ続けたことがこの後多大な負担になることを考えもしていなかった。

ここからはほとんどノンストップでホースシュー・ベンドを目指した。荒野に陽が沈んでゆく様には言葉を失った。自然というか、地球を感じた。大袈裟に聞こえるがそうとしか表せなかった。丸みをおびた地平線に夕日が沈んでいくのを荒野にポツンと走るバンから見たときに人間は小さいと今までになく強く実感した。

陽が沈んでからの荒野のハイウェイは更に不安を増した。果ての無い闇に包まれ車を走らせた。

ここでガソリンが切れかけるという、ベタな問題が発生した。暗闇の荒野で立ち往生は本当に笑えない。だが町は暫く現れなかった。ということは、電波も通じないのだ。減っていくガソリンメーターから顔を上げると巨大な月が輝いていた。暴力的に綺麗な月をみて不安を忘れてしまった。

ガソリンメーターが1目盛を切るくらいの頃、小さな町が現れた。まさにオアシスだった。

現代の旅でこれなのだから、古代に羅針盤やコンパスを頼りに大陸や大海を旅した偉人は想像も絶するような不安と苦労を重ねてきたのだろう。偉大な先人の冒険によって現在の世界は便利になったのだ。そんな素晴らしい偉業を自分も為せたらどれだけ誇らしいことだろう。

寄り道のツケと出発の遅さがここに来て致命的なダメージとなった。日没前にホース・シューベンドに辿り着けなかったのだ。日程はこれで一つ、後ろ倒しになる。

アメリカ4日目・日程変更、ページ宿泊**


この日は気を取り直して、ホースシュー・ベンドの最寄りの町まで進み、ステーキでも食べようということになった。

この日我々は泊まったのはホースシュー・ベンドに程近い、Pageという町のモーテルだった。夜だったこともあり人気(ひとけ)はほとんどなかった。

我々は落ち着いた雰囲気の、歴史あるステーキハウスを訪れた。料理は高く店員の態度は悪くて微妙な味だったし、近くに座った夫婦は泣きながら会話と沈黙を繰り返した。なんて日だ。

ステーキハウスを出てから予約したモーテルは激安で、朝食まで付いてきた。

近くの駐車場で輪になってラスベガスで買ったお土産をキメこみ、部屋に戻った。モーテルの一室は愉快な空間となっていた。騒ぎ疲れるとみな順番に眠りに落ちていった。

1番騒いで最初にダウンした友人はチキンの骨を握りしめたまま眠りについた。ベッドから洗面台が50メートルくらいに感じ始めたあたりで、自分も横になって意識を飛ばした。

この日は6時間くらいは寝れた気がする。この旅行の平均睡眠時間は多分3時間ほどだろう。

翌日にはホースシュー・ベンド、アンテロープ・キャニオン、グランド・キャニオンと、この旅の目玉である渓谷三兄弟が待ち構えている。

日程的に寝坊は絶対に許されなかった。アンテロープ・キャニオンに至っては1人50$以上かけて予約までしたのだ。(アンテロープキャニオンはツアーを予約しないと入れない。)

次の日の日程は大物観光スポット3つ、寝坊したらロサンゼルスの日程はほとんど無くなる。

そういえばこの旅を共にした友人を紹介していなかったが、紹介しだすときりがないので完全に主観で大げさな一言で紹介すると、下記のような4人だ。

・圧倒的コミュ力マン(よく動く)
・朝も強い全能系マン(たまにサイコパス)
・デカい陽気な関西人(若干アホっぽい)
・イケメン留学生(たまに残念)

大体朝起きるのは自分ともう1人(上を見たらわかるだろう)の役割だった。殆ど寝れないこの旅行で、朝起きなければスケジュールが終わる危機感は正直キツかった。なら早く寝ろよ。そのとおりである。

はたして250$をむだにせず、渓谷3つを巡れるのだろうか。運命のグランドサークル2日目は後編に記そうと思う。

アメリカ旅行記④に続く



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