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私と剃刀 <自己紹介シリーズ>

カミソリ

近年では技術の発展のおかげなのか、刃が剥きだしのままのカミソリを見なくなった。

私が良く見るカミソリは、ほぼ毎日お世話になっている髭剃り用の「T字のカミソリ」やこれまた髭剃り用の電気シェーバーだ。ちなみに電気シェーバーも「電気かみそり」としてカミソリの一種になる。

では、刃が剥きだしのカミソリがどんなものかと言うと、床屋さんで髭剃りをしていただく時に使っているあれをイメージすると分かりやすいかと思う。
女性の場合は、化粧用のカミソリをイメージしていただくと良いかと。
調べてみると、貝印というメーカーのピンク色のカミソリが昔からあり、趣がある。


実は、私にはカミソリで自分自身を傷つけた過去がある。

深夜の出来事

それは私が1歳のときだった。調べてみると1歳から2歳のころは親など人の行動やしぐさを真似する時期だそうで、産まれた時は視力が悪い赤ちゃんも脳が成長して細やかな動きを見分けることが出来るようになってきたということなのかも知れない。

私はあまり寝ないタイプの赤ちゃんだったみたいで親は寝かしつけに苦労したそうだ。ただ、その話については疑わしい点が一つある。

なぜなら、私の後頭部は絶壁頭なのだ。寝相と絶壁頭は無関係とも思われるが、そうではないようなのだ。気になった方はWikipediaで”絶壁頭”を調べていただくと良い。

さて、ある夜のこと、誰もが寝静まった後に「ザッ・・ザッ・・」と畳を這うような音が聞こえてきた。明らかに人の歩く音ではない。

あるのは常夜灯の灯りのみので、それは1メートル先も良く分からないほどにぼんやりと仄暗く、得体のしれないものへの警戒心なのか、私の両親は寝ている体勢のままであったが覚醒して、意識を集中し周囲の状況を感じ取ろうとしていた。

その時、突然、「あ” ア”あア”ぁあぅあア”」という泣き声が聞こえてきた!
それは私の泣き声だった!
明らかにいつもとは違う泣き声に対し両親は飛び起きた!
私に危険が迫っていると感じていたのかもしれない。

飛び起きると両親はすぐさま白熱灯を灯け、泣き声の方を見ながら私を探した。

するとそこには頭から血を流して泣いている私の姿があったのだ。
両親は私に近づき、頭のどこから出血しているのか注意深く観察しながら
傷口を見つけると、すぐさま近くにあった豆絞りで傷口を覆う。

豆絞りはみるみる赤色に染まり、このままではまずいと思ったのか、母は父にタオルを濡らして持ってくるように指示した。

父から濡れたタオルが届けられると、母は豆絞りで傷口を覆う担当を父に代わり、血で汚れた私を丁寧に拭いていく。傷口は平行線を引いたような形で、母はその2か所だけかを父に確認し、今度は乾いたタオルを持ってきて、傷を押さえるように覆った。

その間も、両親は痛みと自身から流れ出る血を感じながら泣いていた私を落ち着かせようと、必死に笑顔を見せ、明るい声を掛けていた。

声を掛けながら父は私の右手に化粧用のカミソリを見つけると、その瞬間、私が自分で頭を切ったのだと理解した。

状況の整理と応急処置ができたところで、父と母は私を車に乗せT病院まで急いだ。事前に電話を掛けていたものの誰も出なかったため、半ば押し入りのような状態だ。私が父の立場であったとしても、おそらく同じように行動した気がする。

T病院へ着くと、夜勤のお医者さんが応対してくれたものの、診察・治療は難しいとのことで、翌朝もう一度、来院するように諭されたそうだ。

お医者さんからは「血が止まっているので、大丈夫だろう」というある意味無責任な発言を言質をとったこととし、私たちは帰路についた。
念のため、消毒をし、ガーゼとテープで傷口を保護してもらったそうだ。

翌朝再びT病院を訪れると、担当のお医者さんが「血が止まっているので大丈夫です。」という昨晩と変わらない対応で、ちょっと拍子抜けしてしまった。再び、消毒をしてテープとガーゼを新しくし、最後に小さめのスパイダーネットを私の頭にすっぽりと被せたのだ。
(スパイダーネットには幾度かお世話になっており、それはまた別の機会に)

そもそも、赤ちゃんには糸が成長を妨げたり、いびつなカタチになったりするので、縫合などの処置はしないのが普通なんだそうだ。

「再び、血が出てきたらまた来てください」と医者に言われ、
私たちは帰宅の途についた。

かくして、深夜の出来事は終わりを迎えたのだった。

カミソリ凡人

当時の傷は、今も私の頭に残っています。

物心ついた後に、髪の毛が生えていない場所を見つけたことがあったのですが、10円ハゲのように若くても部分的にハゲる現象があることを知っていたので、自然にハゲたのかな?程度に考えていました。

ハゲを親に相談したときに、深夜の出来事のことを聞いたのです。
少し脚色しましたが・・・

一つだけ気になったことは、なぜ私が自分の頭を切るというそのような行動をとったのかです。

真実は誰にも分りませんが、父が言うには、みんなで寝ていたところ、私がハイハイで布団から抜け出し、鏡台の上にあった母の化粧用のカミソリを手にして自傷に及んだのだと。それは昼間に櫛で髪を梳かす母の姿を見て、真似したくなったのだろうと。

ただ、そうすると一度目に頭に傷がついたときに泣くのではないかとも思うのです。傷が2か所なのは少し違和感があります。

しかし、カミソリの刃は鋭いので痛みがあらわれるまで時間がかかり、その間に2か所目の傷がついたという説明もまぁ不自然ではない。

ともかく、他の動機が思いつかないのでこの説が有力となっているというわけです。

誰か、同じような経験をした方はいないでしょうか・・・・??

とまあ、自分で自分を傷つけるという凡人らしさを赤ちゃんの頃から発揮していた私ですが、すこしだけ悔しいので言い方を変えてみようと思います。

頭の切れる人物のことを「カミソリ○○」などと渾名することがあるのですが、これに倣いこれから「カミソリ凡人」と自称することにします。
いや、しません。

とにかく、彼岸に行かなくて良かったです。自傷行為で自死した最年少記録にでもなっていたかもしれませんが、笑えません。はい。
ちなみに、ひがんばな(彼岸花)の異名は剃刀花というそうです。




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