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私とトラクター <自己紹介シリーズ>

トラクター

わたしの家には田んぼがある。
代々家が農業を営んでいたからだ。

私も父が稲作を行っていたのを見た記憶がある。

春先に自宅においてあるトラクターを運転して、自宅の裏にある田んぼで、田起こしという田んぼの土を耕す場面だ。

父から田起こし中は近づかないようにと言われていたが、それなりに離れていると思っていたのか、ゆっくりと後ろからついていった。たまにトラクターに掘り起こされた土からにょろにょろと顔をだすミミズを見つけて木の枝でつついたりして遊んでいた。

田起こしが終わるとトラクターはいつもの場所に戻っていた。

私はというと途中で飽きて家に帰り昼寝をしていた。
夕方頃に起きだし、夕飯までに少しだけ遊ぼうと家の庭に飛び出したが、そこには仕事を終えたトラクターが落としたであろう土が等間隔に線を描いており、線につられて私はトラクターのところに誘われた。

トラクターはオレンジ色なのだが、夕方の日差しと重なって太陽のような輝きを放っているように見えた。そしてそれはいつもより大きく見えた。補正がなくとも軽自動車より大きく、それだけで子供の私からすると、とても怖い存在だったが、動かしている時に一度だけ父が運転席に乗せてくれたことがあり、それからというもの恐怖心は消え自宅に停車しているトラクターは私の遊び道具となった。運転席に座ったり、大きいタイヤと格闘したりと夢中になっていた。

廃業

ある時、父は農家を廃業した。理由はわからない。
それからというもの、父の働く姿を見る機会は一度もなかった。

田んぼは荒れ放題で、マムシがでるというので近づくこともなかった。
トラクターは相変わらず私の遊び相手になってくれていたが、少しづつ塗装が剥がれはじめ、錆も増えてきた。それでもずっと静かなままだった。

長い間雨風にさらされ、トラクターの周りにも雑草が生い茂り、私も成長とともにトラクターに近づかなくなった。

かつての輝きを失い、自然に飲み込まれようとするトラクターを見るたびに目を背ける私がいた。


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