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北欧在住雑記#1:Stockholmの大晦日

スウェーデンに移住してからも、年末年始は日本に帰国して実家で年越しをしていたのだが、2023年の大晦日は事情があり、初めてスウェーデンで過ごすことになった。

事情というのは、海外生活とは切っても切り離せないvisaの問題である。私の場合はスウェーデンの研究所に雇用されているのでvisaの中でも居住許可/労働許可となるのだが、その許可期間が2023年末日に切れることになっていたのである。

スウェーデンでは、日本のように役所仕事が早くはないので、期限が切れる前に延長を申請したとて、前の許可証の期限末日までに新しい許可証が届かないなどということは普通に起こることである。とはいえ、延長の申請さえしておけば、新しい許可証がなくとも、その申請の決定が下るまでの間スウェーデン国内に留まることは許されている。ただし、国外に出た場合、再び入国することが許可される保証はない。

つまり、新しい居住許可証を交付されていなかったため、古い居住許可の有効期間である2023年12月31日までにスウェーデンのどこかしら、あるいはシェンゲン領域内のどこかの国に入国している必要があったのである。

実は、この入国、居住許可延長申請周りでもいくつかトラブルがあったのだが、それはまた記事をあらためて書くことにして、今回は無事入国した後の楽しいお話の方、初めて経験したスウェーデン流の年越しについて書いていこうと思う。

年越しの花火

さて、先述の通り、私自身、実際に大晦日、元旦をスウェーデンで過ごすのは初めてだったのだが、同僚から話を聞いて、"スウェーデン流大晦日と元旦の過ごし方"については知識としてだけは知っていた(スウェーデン暮らしももう3年目だしね)。

スウェーデンの年越しにはある恒例行事がある。

それが大晦日の夜中に始まる花火。

大晦日のストックホルムの夜景

もちろん、他にも大晦日のコンサートだとか、色々と年末年始の行事はあるのだけれど(かく言う私も王立オペラ劇場'Kungliga operan"でシュトラウスを楽しむ予定だったのだが、フライトの変更で公演時間に間に合わず残念な思いをした)、今回は年越しの花火に絞って話をしたい。

年越しの花火

花火といえば日本では夏の風物詩だが、スウェーデンでは冬の風物詩。特に大晦日の夜を象徴するとさえ言える行事である。

大晦日の深夜0時近くなると至る所で、花火が打ち上げられる。
もちろん年末年始でなくとも、若い子達が道で花火で遊んでいるのをたまに見かけたりもするが、やはり大晦日の花火は別格で、特にストックホルムのような都心となるとその規模はとんでもないことになる。

実際、私が今回体験したストックホルムの花火は話に聞いていた以上に凄まじいものであった。深夜0時が近づくと、どこからともなく破裂音が聞こえ始め徐々に花火が打ち上げられ始める。そして、0時をまたぎ新年を迎えると本格的な打ち上げが始まり、ストックホルムの夜空を数百、数千では収まらないほどの花火が次々と彩る。そして1時間もするとパタリと止むのである。

ストックホルムの花火は非常に有名である種"名物"とも言えるものなので、せっかく大晦日にストックホルムに滞在するのだから、少し奮発して花火鑑賞に良さそうなホテルの川向きの部屋を確保した(ホテルの話はまた改めて)。

こちらがホテルの窓から撮影した大晦日のストックホルムの夜空(2分30秒及び8分20付近で打ち上げのピークあり)。

ちなみに、たしか年齢制限はあったはずだが、スウェーデンではルールさえ守ればちょっと危険に思うくらいの特大サイズの打ち上げ花火でさえ誰もが購入、打ち上げることができる。

なので、年越しのタイミングが近づくと、それぞれが思い思いに大量の特大花火を色々なところから打ち上げ始めるわけである。まあ、私はストックホルムに住んでいるわけではないので、この花火の全てが個人が打ち上げているものなのか、市としてある程度の量打ち上げているのかはわからないが、とにかく見事である。

ただし、残念なことに、花火の”ルール”には後片付けまでは入っていないらしく、翌日ストックホルムの街の路上には少なからず花火のゴミや酒の空き瓶などが打ち捨てられている。

そうは言っても、あの花火の量を考えれば放置されたゴミの量もさほど多くはないのかもしれないが…。

とにかく、花火を打ち上げるくらいなのでスウェーデン人にとっての年越しは文字通り"お祭り"であり、冬の澄んだ静寂の中 除夜の鐘を聞きつつ 粛々と新年を迎える日本とは大分と趣が異なる。

ストックホルムの街は夜遅くまで人で溢れ、車も渋滞していた。

こんな夜中にみんな車でどこに向かうのだろうか、とも思ったのだが、そもそも彼らの目的地がストックホルムの市街なのだと後から気がついた。きっと皆 車の中から花火を見ているのだろう。そして、もしかすると、その後どこかしらに遊びに行くのかもしれない。

感心するのは、午前1時を回って花火が止むと、人も車も一斉に掃け、午前2時頃までには一転して街も静まりかえっていたことである。あれだけ街に溢れかえっていた人々はどこに行ったのだろう?お酒でも飲みに行ったのかな?
まあ、そもそも人が多いとは言っても、スウェーデンの全人口が東京の人口よりも少ないのだが。

そうそう、花火といえば…。

今回、私はストックホルムの中心街に宿を取ったのだが、アーランダ空港からストックホルム中央駅(Stockholms Centralstation)へ向かう電車の中でも花火を持っている人たちを見かけた。しかも、そのうちの1人の女性は、電車から降車するや否や、おそらく別れたばかりの友人に向けての挨拶のつもりなのだろうが、ホームで徐に鞄から花火を取りだし、火をつけ、電車に向けてその花火を掲げていた。

正直な話、その女性の手元から火がのぞいた瞬間 私は内心ドキッとした。もちろん、すぐに手持ち花火だとはわかった。同時に いかに小さな手持ち花火とはいえ、電車の駅のホームで花火に火をつけて大丈夫なのだろうか、という心配も一瞬 よぎったのだが、まあ、大晦日だし そんなものなのだろうな、とすぐに思考を放棄した。きっと現地の人からすれば、この程度は身慣れた光景なのだろう。

ちなみに、渋滞する車の中で大騒ぎし、車の窓から花火を打ち上げていた若者もいたが….、そういう若者はどこの国にもいるものである。


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