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渡邊渚アナ

8月31日をもってある一人の女性アナウンサーがキャリアを終える。
フジテレビの渡邊渚アナだ。
コロナが日本中を襲った2020年に入社し、4年と5カ月のアナウンサー生活だった。

2023年の10月に投稿されたインスタグラムでは2023年の6月から体調を崩しており、入院生活を送っていること、食事もとれず、指も自由に動かせず、様々なものを失ったとつづっている。その姿はどこかやつれているようにも見えた。

入院から約1年が経過した8月23日、フジテレビが渡邊アナの退社あいさつ文を発表した。その中で気になる部分を見つけたので引用する。

アナウンサーとしてまだまだ未熟で、学びたいことがたくさんあり、病気を治して前のように働きたいと思っていた頃もありました。
でも、どうやっても完全に昔のようにはいかない現実が目の前にあって、それを受け入れるのにはとても勇気が必要でした。
現在も三歩進んで二歩下がるような日々ではありますが、最悪な状態は脱し、全てを受け入れて、これまでと違った生き方をしたいと思えるようになりました。

https://www.oricon.co.jp/news/2341495/full/

あくまで私の想像であるが彼女は「もう元の健康状態には戻れない」ことを悟り、覚悟を決めたのかもしれない。しかし、退社前にとあることが物議をかもしていた。

8月5日、彼女はパリにいた。オリンピックの男子バレーボール、日本対イタリア戦を観戦していたのだ。8月10日のインスタグラムには日本国旗を持ちながら満面の笑みを浮かべる様子を投稿していた。投稿文によれば、当初観戦する選択肢はなかったが、会社に報告をした上でチケットを購入したとのことであった。

この投稿に「病人が外国行ってバレーなんか見ていていいのか?」
などといった批判が上がった。ネットでは「責任を追及されて退社に追い込まれたのではないか」との声も上がったが、集英社ニュースによれば、数カ月前から退社の話はでており、円満退社だったとのことだ。

この批判については、やはり「健康でいる人」にはなかなか理解できない問題であろうというのが私の本音だ。例えば余命宣告をされている人に「病人は治療に専念して旅行・趣味は一切するな」というのはあまりにも酷といえよう。
病気治療のストレスはとてつもない。体の痛み、社会からの孤立感、同期が活躍していることへの焦燥、予後不良に対するいら立ち、死への恐怖・・・

その中で何か励みになるものがないと、心が折れてしまう。渡邊アナにとってはそれがバレーボールだったのであろう。学生時代にバレーボールを経験した彼女はVリーグなどをよく観戦していたようだが、病気のためここ最近はままならなかったようだ。冒頭でも述べたが、彼女は退社あいさつで「元の健康状態にもどれない」ことを示唆している。そんな状態の彼女にとって、パリオリンピックは一世一代の大イベントだったのであろう。後悔のない生き方を見せる渡邊アナに心より尊敬の念を示したい。

20代という人生で最も楽しい時期に病気を患い、キー局のアナウンサーという誰もがうらやむ職を手放すことになってしまったことは、本当に不本意なことである。しかし、プラス思考で考えるならば、彼女は同世代の女性ができない経験値を得ることができた。この経験値が彼女の新たなキャリアに必ずいかされることを願ってやまない。

渡邊渚アナのご快癒を心よりお祈り申し上げます。

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