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「笑いの神通力」・・・柳家小三治師匠逝去。またも時代を担った偉大なる芸の人が亡くなった。



「十代目 柳家 小三治」

江戸っ子の切れの良い語り口が心地よい、真に楽しめる落語家だった。


噺も絶品だったが、近年は「まくら」の名手として有名になっていた。

初めて独演会で40分に渡る「まくら」を聞いた時は、本当に驚いた。
これでもか、これでもかと笑わせてくれる。
気が付くと40分も経っていたのだからすごい!


あざとい形で笑わせるのが好きではなく、
客が思わず笑ってしまう、のが噺だと信念を持っていたという。

最後までその信念で高座に上がられていた。

先月、紀伊国屋ホールでの「桂八十八襲名披露公演」でのこと。

これが私が見た最後の高座になってしまったのだが、
襲名披露は、襲名する方のために、他の方は軽いネタをやるのが通例で、
この時も「道灌」をやろうと思っているとおっしゃっていた。

ところが一向に始まらない。
しかし観客は、その雰囲気とまくらや世間話に「思わず笑って」しまうのだ。
結局「道灌」には入らず、「まくら」だけで語り切った。
もちろん、観客は大満足。文句を言う奴などいない。

何と言っても、「え~っとねぇ~」と言ってしばらく考えている風を見せるだけで、笑いが起こるのだから、もはや「神通力」と言っても良いだろう。


その後の口上の席で、上方では押しも押されぬ人気落語家の桂南光師匠が、

「いやあ。自分も早くあの域まで達したい」

と言っていたのが印象的であった。

今夜はCDの小三治全集を頭から聞こう。
そして、「思わず」笑い明かそう。


おわり







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