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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2022年4月の記事一覧

『七姉妹の滝』後編・・・不思議な話。恋に破れた男を待ち受けている運命とは。

『七姉妹の滝』後編 スカンジナビア半島ノルウエーの沿岸部、フィヨルドと呼ばれる険しい渓谷の中にある小さな村を訪れた青年ヤンは、七姉妹の長女、エマの清楚な優しさに惚れ、求婚しましたが断られ、続いて港で男たちに混じって働く次女ソニアの逞しさに惚れて求婚しましたがやはり断られてしまった。 立て続けに振られて落ち込んでいるヤンを心配し、村人たちは教会に行くように勧めた。 そしてヤンの訪れた教会では・・・。 ×  ×  × 高いアーチ状の天井。美しいステンドグラスから降り注ぐ

「怪奇を暴け その5」・・・怪談。事故物件の裏側で。

「今、事故物件が話題でしょ。でも不動産屋の間では、事故物件よりも 怖い部屋があると、昔から言われているんですよ」 飲み屋で隣り合わせになった男が、声を潜めて話し出した。 「それはね。事故物件にならない部屋なんです」 「事故物件でなければ、普通の部屋という事でしょ」 「『ではない』ではなく、『ならない』、なんですよ。 つまり、普通なら事故物件だけど、法律上事故物件に『ならない』んです」 事故物件にならないとはどういう事だろう。私はその男の言葉に耳を傾けた。 「そのA

「帰宅」・・・怪談。少子化を感じさせない街で思い出した話。

昨日、少し離れた商業地域を歩いた。 若い街である。 子連れも多い。 この街は、住環境の整備や、保育所の充実などの施策が功を奏して、 流入人口が増え続けている。 知っている限りでは、それほど派手な事をしている訳ではない。 しかし、この町を歩くと、少子化問題などどこ吹く風である。 のんびりと、子供連れの母親を見ていたら、こんな話を思い出した。 ほんとうに短い、あっという間に終わる怪談。 『帰宅』 夕食の支度をしていると、リビングから3歳になる娘の声が聞こえた? 「パパ~

「喪失の向こうに」・・・失ってから。その後に続くものこそ。

『すがりつく女』 「来年も再来年も、一緒に誕生日を祝おうねって言ったのに 絶対に君を一人にしないって、あなた私に誓ったのに・・・」 彼女は夫の棺桶にすがりつき、泣きじゃくった。 葬祭場にいた参列者は、全員もらい泣きをしていた。 だが、私は知っている。彼女の「夫」の葬式は・・・ これで4回目だ。               おわり この短いお話は当初、不幸に絡み取られる女、 もしくは不幸を絡み取る女の話として書いた。 しかし、超ショートは、読む人の心の在り方で、全

「アザミの部屋」・・・怪談。呪われた部屋に泊まるのは・・・。

私のホテルは、高速の出口に近い三叉路から左に入った場所にございます。 街道沿いのファミレスやコンビニからも離れていて、ひっそりとした場所にあるので、人目を忍ぶカップルにはとても都合が良いようで、毎夜多くの方にご利用頂いております。 当ホテルは目立たない外観でありながら、内装は明るくおしゃれ、を心がけており、部屋はどれも同じ造りなのですが、「桜」「桃」「スミレ」など花の名前を付けて、毎回気分を変えられるようにも工夫をし、女性にもご好評頂いております。 ただ、一つだけ問題がご

「庚申の夜」・・・怪談。飲む・打つ・買う。三つの中で最も止めるのが難しいのは。

今はもう昔の話でございますが、禅寺の斎亮寺(仮名)の修行というものは、たいそう厳しいものとして知られておりました。 修行僧は、午前3時には起床し、 座禅は朝・昼・夜の3回、お勤めは朝・昼・晩の計3回行います。 日常生活のすべてが修行の場でございますので、 座禅やお勤めだけでなく、箸の上げ下ろし、食べる速度や片付けの位置方法など、それはそれは厳しく定められておりました。 もちろん食事中の私語はご法度。音を立ててもいけません。 この厳しい戒律に従い、3年間の修行を終えた者だ

「怪異はどこにでも」・・・体験談。怪談イベントで思い出した話。

毎年楽しみにしている、怪談師の「ありがとうぁみ」さんの渋谷怪談夜会。そのスピンオフとも言える「渋谷怪談女子夜会」が行われました。 出演はぁみさんの他、ちゃんももさん、怪奇サイトの編集長・角由紀子さんなど。 一夜のみライブなので、配信も行われず、DVD化もされない為、写真や動画、音声なども多く、他では言えない実際の地名や実名も出てきて、ある意味恐ろしさも充実していました。 その中に、「心霊スポットで撮影したガチでヤバいものが映っているビデをテレビ局に送ったら『あまりにも念が

「法学部の都市伝説」・・・七不思議シリーズ 前日譚。

「本所七不思議は何罪?」 昨日アップした「最も罪深い妖怪」の物語には前日譚がある。 それは、「俺」がまだ、学生だった頃、有紀子と付き合う前だ。 その頃彼女については、大学始まって以来の才女が同期にいる、という噂を知る程度だった。 1回生の春、地方大学の法学部に通っていた俺は、同期の有村隼人、前田裕、由利薫と学食で話していた。 「司法試験の中に、『本所七不思議は何罪?』って問題がるって知ってるか?」 と、有村が言い出したのだ。 この大学で司法試験を受けるのは四回生がほ

「最も罪深い妖怪」・・・怖い話。あの冬見たことは決して話してはならない。

「そのドア開ける前に、ちょっとだけ良いかな」 俺は、マンションから出かけようとする有紀子を呼び止めた。 「何? アタシこれから友達と会うって言ったでしょ」 「大丈夫、すぐ済むよ。ウチの弁護士事務所で罪状が分からない事件があるんだ。法学部一の秀才と言われた有紀子に聞きたいんだ」 「ちょっとだけよ。で、何が聞きたいの?」 法学部一の秀才、という言葉が効いたのか、有紀子は一度開けかけたドアを閉じ、こちらを振り返った。それでも部屋の中にまでは戻ろうとはしない。だが十分だ。俺

「円盤を見た午後」・・・怪奇譚。飛行中のパイロットが見たものは。

「絶対に見たんだ。嘘じゃない! あれは空飛ぶ円盤だった!」 大通りに面したオープンカフェで、俺は宇江原と、妻の明子に言った。 だが二人とも、俺と目を合わせようとはしなかった。 「昨日からずっとこの調子なんですよ」 「大丈夫ですよ、奥さん。加納は少し働き過ぎで疲れているだけですから」 二人で俺を病人扱いしている。 「俺は疲れてなんかいない。一週間ぶりの物資輸送任務で嘉手納から班目まで飛んだだけで、どうやって疲れるって言うんだ。そんなやわなパイロットじゃないぞ、俺は。

「ネコという女」・・・怪談。旅先で、隣に座った女は。

『ネコという女』 「ねえ。あなた名前は?」 「ケン」 俺はとっさに嘘を言った。 旅先で知り合った一夜だけの女に本当の事を言う必要はない。 女も同じ考えのようだ。 「アタシはネコ」 ネコは、布団の中で自分の足を俺のそれに重ね、頭を俺の肩に預けてきた。 あの時もそうだった。 下鴨神社へ向かうバスの中で、ネコは俺の隣の席に座った。 バスの揺れが気持ちよかったのだろう、大した時間も経たないうちに ネコは俺の肩に頭を乗せて眠ってしまった。 席を立つときに、起こさないように

「笑い占い」・・・ホラー。落ち込んだ友人を励ますために連れて行った先は。

ネットで一風変わった占いを見つけた私は、友達の可乃子を誘ってみることにしました。 可乃子は最近、長く付き合ってきた彼氏と別れたいと言い出し、ひどく落ち込んでいるのです。相手が誰なのかは知りませんが、彼氏があまり大事にしてくれないと聞いていたので、 「良いじゃん。そんな奴とは別れちゃいなよ」 と言っていたのですが、彼女は踏ん切りがつかないようでした。 仕事にまで支障が出そうになった可乃子を放っておくわけにもいかず、 何か励ます方法はないかと探していた時に見つけたのが、

「何名様ですか?」・・・怪談。心霊スポットに向かった仲間たちは・・・。

学生時代。スピリチュアル好きだと言うB男の誘いで、 A子、B男、C美、D恵、と私の5人で、湘南の少し入りくんだところにある心霊スポットを探検することになった。 B男の運転する乗用車で、たどり着いたのは、山をくりぬいたトンネルだった。側道からさらに入った山の中にあり、あまり車も通らない。 この中を明かりを消して通過すると、トンネルの中程にずぶ濡れの女が立っているのが見える、という噂があるのだとB男は言う。 「じゃあ。行くぞ」 B男は、わざわざトンネルの入り口で車を止め、