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初代チャンピオンを目指して【WEリーグ】日テレ・東京ヴェルディベレーザvs三菱重工浦和レッズレディース

女子サッカーのプロリーグであるWEリーグが今年からスタートしました。意外なことにこれまでのなでしこリーグはプロリーグではなかったそうですね。今回は開幕節で1番のビッグゲームとなったベレーザ対レッズレディースのレビューをしていきたいと思います。

レッズは昨シーズンのなでしこリーグの王者で昨シーズンレッズを優勝に導いた森監督は総監督となり、今シーズンは楠瀬監督が試合で指揮を執ります。一方のベレーザは昨シーズンにレッズに優勝を許し、なでしこリーグ6連覇を阻まれてしまいました。新たにスタートしたWEリーグで再びチャンピオンに返り咲き、黄金時代を復活させたいところです。

スタメン

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ベレーザは4-3-3(4-1-4-1)のフォーメーション。オリンピックではベレーザから清水、宮川、北村、三浦、遠藤、木下の6人が招集された。北村はベンチスタートとなったが、強力なメンバーがスタメンに名を連ねた。

レッズは4-2-3-1のフォーメーション。レッズからは池田、南、塩越、菅澤の4選手が招集された。菅澤はベンチスタートとなったが、他の3選手は先発となり、代表経験のあるベテランの安藤がトップに入った。

試合内容

昨季のなでしこリーグ女王と皇后杯覇者の注目の一戦。33分、味方のロングボールに反応して抜け出した#9植木理子が#10小林里歌子とのワンツーで日テレ・東京ヴェルディベレーザが先制。三菱重工浦和レッズレディースも反撃に転じます。49分、後半から途中出場の#9菅澤優衣香が、低いクロスをニアで合わせ同点とすると、87分にはこぼれ球に反応した#19塩越柚歩が右足を振りぬきゴールネットを揺らします。後半に2得点を奪った浦和が逆転勝利を収めました。

引用:【東京NBvs浦和】塩越柚歩が試合終盤に逆転ゴールを奪い、注目の一戦は浦和が勝利【マッチレポート Yogibo WEリーグ 第1節】

・試合ハイライト動画

・試合スタッツ
(緑:ベレーザ、赤:レッズ)

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ハイラインプレス

レッズの1つの特徴として前から激しくプレスにいきボールを奪いにいきます。下の図のように2トップがアンカーの三浦を挟んだところから、1人がCBにプレスに行くのがスイッチとなり、中盤の選手がどんどん前に出て相手をハメに行きます。

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・プレス時のハイライン、ボールサイド圧縮
プレスをかけた時には下の図のようにDFラインがハーフラインまで上がり、SHはボールサイドに圧縮するのでとてもコンパクトな陣形になります。

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試合の立ち上がりはレッズの激しいプレスによってベレーザのビルドアップを封じる場面が多くなりました。


・ハイラインのデメリット
ベレーザも徐々にレッズのプレスに慣れて順応していきます。そしてベレーザはアンカーの三浦が前半の半ばくらいから最終ラインに加わり、ビルドアップの形を変化させました。この三浦の動きはチームとして意図的にやっているというよりは、三浦が気を利かせて状況を見て下りたような印象でした。

そして三浦が最終ラインに下りたところから得点が生まれました。得点のシーンでは植木が背後に抜け出したところからゴールが生まれましたが、三浦の動きが大きく関わっています。三浦がCBの右に下りてきたことで猶本が前に出てプレスにいき、右SBの清水に対して左SBの佐々木が縦にスライドしてマークしに行きました。清水が幅を取るので右WGの遠藤は内側に絞ります。遠藤に対して南が前に出て捕まえに行ったことで、背後に広大なスペースができました。そのスペースに三浦から良いパスが通り植木に裏を取られてしまいました。

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ベレーザがどれだけ意図的にレッズの選手を引き出したのかは微妙なところですが、ハイラインのデメリットとして背後のスペースが空いてしまうという点をベレーザはこの試合で執拗に狙っていました。レッズとしては背後のスペースは警戒していたとは思いますが植木の背後への抜け出しはとても質の高く、この試合だけ数回背後に抜け出されてしまいました。


最大の課題

個人的にレッズの1番の課題だと感じた点はビルドアップです。この試合でほとんど組織的にビルドアップが上手くいって前進できた場面が無く、前進できたシーンでは選手の個人技で無理やり何とかしたような状況でした。

下の図のようにレッズは両SHが極端に内側に絞り、両SBが幅を取るので2-4-3-1のような陣形になります。それに対してベレーザは左IHの小林を前に出して4-4-2の陣形でプレスをかけてきました。プレスに行く時はアンカーの三浦と右IHの中里でレッズのボランチを捕まえます。レッズはDFラインでボールを持っている時に数的優位が作れないのでCBのところで蹴らされるか、SBのところでハマってしまう場面が多かったです。

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結局、上手くプレスを回避して前進できた時は、ボランチをスキップしてトップまたは2列目に浮き球のパスを通せた場合と、ボランチがマークされながらも個人技でボールをキープしながらパスを供給した場合だけでした。今後、勝点を積み重ねていくにはどうやってビルドアップするのかを考えなければいけないと思います。ボランチが下りて数的優位を作ることやSBが幅を取って相手のSHをピン留めして中央のスペースを広げるなど工夫が必要かなと感じました。


ベレーザの隙

ベレーザは守備時にラインコントロールがしっかり行われて、コンパクトな布陣を保っていましたが得点のシーンではレッズが上手くベレーザの隙を突きました。

レッズの1点目のシーンではベレーザからボールを回収し、右CBの高橋がかなりサイドに流れてボールを受けました。その結果ベレーザの小林から距離を作ることができたので小林が寄せきれない状況が生まれました。清家が幅を取ったのでベレーザの左WGの木下がサイドに引っ張られます。そして高橋がベレーザのSBとWGの間にスルーパスを通し、安藤が背後に抜け出しました。多分あのパスは安藤へのパスがズレたのではないと思いますが、結果的に素晴らしいパスとなりました。安藤が持ち味のスピードで背後に抜けるとGKとDFラインの間にダイレクトでクロスを入れて、後半から出場の菅澤がストライカーらしく飛び込んでのゴールでした。

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このシーンでは右SBの清家が高い位置を取れたことで最終ラインが一時的に3バックになり、ベレーザの2トップのプレスを回避できたので良いボールを配給することができました。そして安藤もしっかりとハーフスペースに流し込まれたスルーパスに反応し、菅澤も安藤が背後に抜け出した時にスピードを上げてゴール前に飛び込んだことでゴールにつながりました。どれだけ意図的に3バックになったか、どれだけ意図的にハーフスペースを使えたのかは不明ですが良い攻撃でした。

そして試合終了間際に塩越のゴールが決まりますが、あのゴールはベレーザがパスミスを南がカットしたところから攻撃が始まりました。ベレーザは攻撃に出ていこうとしていたので、南がインターセプトした時には守備の陣形が整っておらず、南が奪ったボールをダイレクトでハーフスペースにいた塩越へと繋ぎました。塩越が前を向いた時にはベレーザは4バック+アンカーという状況で菅澤が内側から外側へ流れるような動きで背後を取ることができました。ゴール前で混戦となり最後は塩越が強烈なシュートを決めましたが、塩越は右足も左足も強烈で正確なキックを持っているので質の高い選手だなと感じました。この得点はベレーザが攻め立てようとバランスが崩れたところを上手く突くことができました。

この試合でレッズはビルドアップに苦戦し上手く前進することができませんでしたし、ビルドアップからほとんどハーフスペース使えた場面がありませんでしたがが、カウンターやボランチを飛ばして2列目やCFに浮き球のパスで前にボールを運べた時には良い攻撃ができていました。


最後に

正直にこの試合ではベレーザの方が組織的に上手くいっている場面が多く、決定機もベレーザの方が多かったと思います。ベレーザはビルドアップでは三浦が気を利かせることができる選手なので、スムーズにボールを運べることが多かったです。また、WGが内側に絞りSBが上がれるスペースを確保するので自然にハーフスペースと幅を使った攻撃となっていました。CFの植木はスピードがあり抜け出す動きが上手いので何度も背後に抜け出されてしまいレッズにとっては脅威でした。

でも、サッカーは内容が良いチームが勝つというわけではないので、苦しみながらも勝利を手にしたレッズはなでしこリーグの王者の力を見せたのではないかなと思います。レッズは中盤の選手が様々なポジションをこなせるので、かなり流動的に中央でポジションを変えながらボールを保持していました。2列目までボールを運ぶことができると、選手が良い距離間で持ち前のパスワークを発揮できるので面白い攻撃に繋がりますが、2列目までどうやってボールを運ぶかが今後の課題となりそうです。菅澤や安藤、塩越といったテクニックもあり身体能力の高い前線の選手は相手にとって非常に嫌な存在だと思いますし、中盤も柴田や栗島、猶本など技術の高い選手が揃っています。チームとしてビルドアップのオーガナイズがされるとより威力を発揮できるのかなと感じました。個人的にこの試合で1番評価しているのは右CBの高橋で上背がありフィジカルが強く、背後のスペースのカバーも行い、何度もチームのピンチを救っていたのでレッズの守備には不可欠な存在だと思いました。

新たにスタートしたWEリーグ。プレーの質も高く、強度も高いと感じました。今後はどうやって注目を集めていくのか、どうやってプロモーションしていくのかというところが問われてくると思います。個人的にもレッズレディースは合間を縫って追っていこうと思っているので、WEリーグとレッズレディースの今後に期待です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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