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GXを加速するビジネス創発へ!スタートアップ企業との交流イベントを開催

2050年カーボンニュートラル実現には、ビジネスによるGX加速が欠かせません。GXリーグから社会を動かす新しいビジネスを生み出すことを目指し、「ビジネス機会創発の場」を2023年8月2日にLIFULL Table(東京都千代田区)にて開催しました。

GXリーグでは昨年度、 カーボンニュートラルが実現した未来の社会像からビジネスの可能性を検討する「未来像策定」の取り組みを行い、6つの事業機会と20の洞察を発表しました。本イベントはその検討を生かしつつ、GX加速化につながる新たなビジネス創発を後押しするため、関連分野のスタートアップ企業と、関心のある参画企業によるネットワーキングの場として新設したものです。

初開催となる今回は、サステナビリティ分野のスタートアップからバイオーム、ハルモニア、ピリカ、DATAFLUCTの4社を招き、パネルディスカッションと、課題解決の糸口を見出すワークショップを行いました。パネルディスカッションはオンラインでも配信し、参画企業から関心の高い企業が会場、オンラインにそれぞれ約30社参加しました。


スタートアップ4社によるパネルディスカッション

開会の挨拶を行う経済産業省の折口氏

開会の挨拶には経済産業省の折口氏が登壇し、企画意図を説明。「優れたスタートアップ企業の得意領域などを踏まえて意見交換し、ビジネスにつなげてほしい」と、積極的な交流を呼びかけました。

続いて、スタートアップ支援を行う東京大学 FoundXディレクターの馬田隆明氏をモデレーターに迎え、登壇4社の代表者によるパネルディスカッションへ。Webコミュニケーションツール「Slido」を利用し、リアルタイムに質問や意見を拾い上げながら進行します。

パネラー:
バイオーム 取締役CTO 源六孝典氏
ハルモニア CEO 松村大貴氏
ピリカ 取締役 村越隆之氏
DATAFLUCT becoz事業責任者 吉岡詩織氏
モデレーター:東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明氏

消費者の意識・行動をどう変えていくか?

ひとつ目のテーマは「日本における消費者行動変容の課題と解決策」。アプリやサービスを通じてB to CやB to B to Cの事業を行う各社が、取り組みを踏まえながら意見を交わしました。

バイオーム 取締役CTO 源六孝典氏

生物多様性に着目し、リアルタイム生物データを活用した調査やソリューションを提供するバイオームでは、身の回りの動植物の写真をAIで判定するアプリ「BIOME」を展開しています。取締役CTOの源六氏は、「グローバルな課題のスケール感では自分ごと化しづらい。個人が咀嚼できるサイズにブレイクダウンしていく必要がある」と述べ、ゲーム要素やSNS連動など楽しめる仕組みを取り入れつつ、身近な生物から環境問題を考えるというアプリのアプローチに効果を感じているとしました。

ハルモニア CEO 松村大貴氏

ハルモニアCEOの松村氏は、「企業が消費者の便宜を尊重しすぎているのでは」と指摘。同社が取り組む食品ロス問題においては、夜間でも弁当や惣菜などの品揃えを良くしておくことなどが結果としてロスを増やしており、実態はなかなか改善されていません。欧州では国や業界単位でロス削減を働きかけていることから、「売り手側の責任として、消費者のライフスタイルを変えていくことにもっと能動的になるべき」との考えを示しました。

ピリカ 取締役 村越隆之氏

ごみの自然界流出問題に取り組むピリカでは、自治体やNPOと連携し、ごみ拾いSNS「ピリカ」を活用した清掃活動促進を行っています。これまで100カ国以上で3億個以上のごみを回収してきましたが、参加者の動機づけや定着化に難しさを抱えているといいます。「インセンティブは有効だが、過剰に付与すれば目的が変わってしまう」と取締役の村越氏は言い、普段の行動がインパクトを持つことを丁寧に伝えていくことが大切だとしました。

DATAFLUCT becoz事業責任者 吉岡詩織氏

CO2削減に向けた生活者の行動変容実現を目指す「becoz」事業を行うDATAFLUCTの吉岡氏は、消費者にとって環境問題が“ついで解決”になる向き合い方が理想的だと発言。同社では地域のサッカーチームのサポーター活動にCO2排出量の可視化を掛け合わせることで、無関心層へのアプローチにも成功しています。吉岡氏は「学校や地域のお祭りなど、取り組みのコミュニティをいかにローカルにしていくか」をポイントに挙げました。

モデレーターの馬田隆明氏

「各社の取り組みから “人はお金では動かない”ということがわかる」と馬田氏。「定着化のカギとなる、経済合理性に訴えないインセンティブをどう設計していくか、ワークショップでも参加者のみなさんと考えたい」と総括しました。

抜本的な変化を起こすために

事業の将来性や今後の展望について話題が及ぶと、パネラーの皆さんは一様に危機感を口にしました。各業界が脱炭素化に向けて努力・実践しているものの、現状のペースでは2030年、2050年の目標は達成できないという見方です。奇しくもこの日(8月2日)は、地球環境が生み出す1年分の資源を人間が使い果たしてしまう日を示す「アース・オーバーシュート・デー」。資源枯渇のスピードは確実に速まっています。

「気候変動、生物多様性の分野では、残された猶予は決して大きくない」と源六氏。多くの日本企業が早期からTCFDやTNFDに注目する中、消費者の意識の低さが足枷になりかねないとし、意識を変えた上での行動変容を喫緊のテーマに掲げました。そして、同社を含めたB to B to Cプレーヤーが企業と消費者のギャップを埋め、人を動かす役割を果たしていくべきだと意気込みました。

これに同調した松村氏は、持続的な行動にしていくための構造変革が大事だと強調。「スタートアップが行動変容のモデルケースをつくり、より大きな企業が実践し、政府がルール化して、続けられる構造をつくることで、社会全体でバトンをつないでいく必要がある」としました。

加えて、率先的に取り組む企業・団体に金銭コストがかかっている現状についても問題提起したのが村越氏です。「ごみの分野はトレードオフが難しい。回収・再生したプロダクトなどに付加価値をつけて流通させ、利益を得られるような構造ができるといい」とし、“ごみの地産地消”ともいえる取り組みをプロジェクトレベルで進行中だと明かしました。

コストという点では、CO2削減目標達成には一般家庭でもEVや太陽光パネルといった設備投資が不可欠になることから、「金融ソリューションを組み合わせたサービスを模索しているところ」と吉岡氏。海外の実績を参考に、ローカライズしながら取り入れていきたいと述べました。

70分にわたるディスカッションは、発言の最中にもSlidoを通じて質問やコメントが次々に寄せられ、インタラクティブな内容になったと同時に、危機感や課題を再認識する場にもなりました。「これから本当に行動を起こして、大きく変えていかなければならない段階。大企業とスタートアップがタッグを組んで、GXリーグから新しい動きにつなげていけるといい。ぜひ、一緒に社会を変える力を生み出していきましょう」と馬田氏が締めくくり、幕を閉じました。

行動変容をテーマにワークショップ

短い休憩ののち、イベント後半には4つのテーブルに分かれてワークショップを実施。パネラーのみなさんも加わり、パネルディスカッションで得られた視点を踏まえて、課題解決の糸口やビジネスのアイデアを話し合います。

各テーブルには無地のワークシートと付箋が用意され、3色の付箋に「行動変容についての取り組み」、「取り組みを進めるにあたっての課題)」、「課題解決・事業機会のアイデア」をそれぞれ記入し、貼り出しながら議論を広げていきます。

各テーブルでは、自己紹介も早々に話し合いがスタート。カーボンニュートラルという共通の目標を持ちながらも、業種や携わる業務は異なります。それぞれが立場を尊重し、一人ひとりの発言に聞き入りながら、笑い声あり、共感の相槌ありのディスカッションは徐々に盛り上がっていきます。パネラーの方々に踏み込んだ質問をしたり、取り組みが思うように進まない状況に対してアドバイスを求めたりする様子も多く見られました。

参加者のみなさんは、現状を変えていく手立てを見つけようと、熱い思いを持って集まった方ばかり。普段社内でもなかなか話しづらい悩みや、苦慮されていることを打ち明け合いながら、内外に向けたさまざまな行動変容の促し方について意見を交わしていました。

およそ35分後、席をシャッフルし、新しいメンバーでディスカッションを再開。発言を促し合い、付箋でいっぱいのワークシートを使いながら、さらに議論を深めていきます。話し合いは発展し、年代ごとの価値観の違いに適したアプローチ方法や、削減貢献量の見える化、人材育成といった話題にまで広げながら、スタートアップ企業と具体的にどのような連携ができそうかを探るものとなりました。

前後半合わせて1時間を超えるグループディスカッションは、あっという間に終了。時間の都合で全体共有はできませんでしたが、とても建設的な議論になったようです。


会場の熱が冷めやらぬ中、イベントの締めくくりとして、事務局の佐藤より挨拶を行いました。「今日の話題にも上がった非経済的インセンティブは、まさにGXリーグとして取り組んでいきたいところ。こういった交流を大事にしながら、ぜひみなさんと実現していきたい」と述べ、GXリーグの枠組みの積極利用をはたらきかけました。

新たな取り組みとしてスタートした「ビジネス機会創発の場」は、盛況のうちに終了しました。今後も改善を図りながら、GXリーグ発の事業創出を目指し、新たなテーマでの開催を計画しています。

【参考リンク】
当日の内容をハルモニアCEO 松村氏のnoteでもご発信いただいています。ぜひご覧ください!


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