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業界も立場も超えて熱く対話!第2回GXスタジオは「サプライチェーン全体の脱炭素」をテーマに開催

GXリーグ参画企業のみなさんが対話を通じてフラットに交流する「GXスタジオ」が、2023年8月25日に2回目の開催を迎えました。会場のイイノホール&カンファレンスルームには約60人が集まったのに加え、オンラインからもたくさんの企業が視聴参加。屋外に負けず劣らずの熱い交流が行われました。


今回のテーマは「サプライチェーン全体の取り組みと課題」。サプライチェーン全体での脱炭素・持続可能化が急務となっている中、最終製品メーカー(ブランドオーナー)・需要家とサプライヤー企業がそれぞれの取り組み・課題を共有し、視座を合わせることを目的としています。

経済産業省 折口氏による開会のあいさつ

開会にあたり、経済産業省の折口氏は、「サプライチェーンの脱炭素化は社会全体で取り組まなければならないテーマであり、業種や立場が異なっていても共通する部分が多いのでは。今日は最終製品メーカーから中小サプライヤーまで、さまざまな企業が集まっている。この機会を活用して、それぞれの視点から課題認識を共有しながら、解決方法を議論する場としていただきたい」と、活発な議論を期待しました。

事前アンケートから課題感をインプット

事前アンケートから論点を抽出

テーマに関して、知りたいことや課題を事前にアンケートしたところ、最終製品メーカーからは「サプライヤー側の今後の取り組み・考えを知りたい」、サプライヤー企業からは「取り組みに対する価格転嫁が課題」「どのようなレベル感でのデータ開示を求められているのか知りたい」といった声が寄せられました。

こうした課題認識をインプットした上で、省庁からは中小企業庁、参画企業からはユニ・チャームとデンソーの2社が登壇し、それぞれの取り組みを紹介しました。

「Slido」のリアルタイム投稿機能を活用(写真は質疑応答の様子)

また、今回のスタジオでは、Webコミュニケーションツール「Slido」を活用。オンラインからも会場からもリアルタイムに投稿できるようにしました。プレゼンテーションの時間も双方向の“参加型”となるよう、質疑応答の際には質問やコメントをスクリーンに投影し、たくさんの意見を共有しました。

省庁によるプレゼンテーション

■中小企業庁

中小企業庁の小倉真紀氏によるプレゼンテーション

「中小企業のGX」をテーマにしたプレゼンテーションでは、冒頭に、中小企業の現状について発表がありました。アンケート結果によると、事業方針上のカーボンニュートラルの優先度は徐々に高まっており、グリーン分野への投資意向も高まってきているものの、取り組みにまでは至っていない中小企業が大半であるということです。
こうした現状から、中小企業庁では「パートナーシップ構築宣言」を推進しています。これは企業代表者名義で宣言するもので、サプライチェーン全体の共存共栄に向けて、新たな連携や取引の適正化を目指す取り組みです。

登壇した同省の小倉真紀氏は、宣言企業とその取引先に対して行ったアンケート結果を紹介。そこから見えてきたのは、発注側の大企業の半数以上が中小企業のサプライヤーに対してグリーン化(脱・低炭素化)を求めている一方で、中小企業側にはノウハウがなく、技術支援や情報提供を期待しているという実態です。小倉氏は、「サプライチェーン内での連携や協力はまだまだという段階。中小企業の投資意向は高まっているので、ものづくり補助金などの支援制度を活用いただくとともに、大企業のみなさんにはぜひ、中小企業への積極的な情報提供をお願いしたい」と呼びかけました。

参画企業によるプレゼンテーション

■ユニ・チャーム

ユニ・チャームの上田健次執行役員によるプレゼンテーション

2020年4月に発表した「環境目標2030」で3つの“0”(廃プラスチック0、CO2排出0、森林破壊0)を掲げるユニ・チャームは、GHG排出量削減に向けた可視化の取り組みを進めています。製品機能や品質を保ちながら排出量を減らしていくには、製品ごとの排出量の情報提供が欠かせません。同社では排出量算定を精緻化するため、2022年5月から12月にかけて、資材ごとの一次データ収集に全社を挙げて取り組みました。

収集にあたっては、交渉の中でサプライヤー側が抱える課題を把握し、それぞれの事情を整理して解決の方向性を検討。提供可能な粒度を選択できるようなフォーマットを作成するとともに、今後のコミュニケーションに役立つ定性情報の入手にも努めました。その結果、約9割の一次データを取得。グローバルなルールに合わせたCFP算定規定を整備し、同規定に則った算出システムの構築にも成功しています。

同社執行役員の上田健次氏は、「消費者の理解・納得・共感を得るには、個社単独の取り組みではなく業界全体、社会全体に広げる必要がある」と強調。今後は、消費者の行動変容につながる表示・発信方法の検討を進めると同時に、主催する情報交換会などを通じて課題を共有し、業界連携を図っていきたいとしました。

■デンソー

デンソーの小林俊介氏によるプレゼンテーション

2025年に電力、2035年にモノづくりの完全なカーボンニュートラルの達成を目指し、省エネや再エネ自家発電の取り組みを推進しているデンソー。Scope3の排出削減目標として「2030年度までにサプライチェーン全体で25%削減(2020年比)」を設定し、2023年8月にSBT認定を取得しました。

この目標を達成するため、同社は「見える化」と「目標共有」をStep 0に位置付け、調達先の企業と積極的に対話。省エネのノウハウ提供、低炭素部材の採用、再生可能エネルギー導入など、できるだけ工数を増やさず、個社の努力が反映できるような手法で課題解決をサポートしています。そして、取引先と共にStep 1の「実行」に力を入れていく計画です。

同社安全衛生環境部 サステナブル環境戦略室の小林俊介室長は、「カーボンニュートラルは競争領域であり、自社製品の価値のひとつだと考えている。ただし、競争力を高めるには、協調していくことも大切ではないか」との認識を述べ、サプライチェーン全体で共通の目標に向かうことの重要性を主張。削減実行に最も注力すべきという考えのもと、再エネ化によるエネルギーコスト上昇分を省エネによって抑制するなど、戦略として合理的な手法を採っていくことが必要との考えを示しました。

サプライチェーンの脱炭素はどうしたら進む?グループに分かれて真剣に議論!

イベント後半は、10のグループに分かれてのグループディスカッション。最初に「自社の現状の取り組み」「課題だと感じる点とその理由」を付箋に書き出し、論点を抽出していきます。

参加者のみなさんの書く作業があまりにも真剣で、会場が一瞬静まり返るほど。ファシリテーターを務める事務局スタッフの呼びかけで、ワークシートへ貼り出し、自己紹介とともにディスカッションが始まります。順番に発言のバトンを回したり、立ち上がって俯瞰しながら話し合ったりと、グループそれぞれが自由な形で意見を交わしました。

20分ほど経ったころ、席替えをしてメンバーを変更。どこのグループもなかなか立ち上がれず、話し足りない様子でしたが、新たなテーブルで議論を再開します。1回目のグループで話し合ったトピックを持ち寄り、新たな視点を掛け合わせることで、ディスカッションがますます深まっていきます。中には、ルールに対する問題点を指摘したり、顔を寄せて踏み込んだ質問をしたりする姿も見られ、白熱した議論が繰り広げられました。


一体的な推進力を生み出していくには?

およそ50分にわたるディスカッションの締めくくりとして、各グループで話し合った内容や盛り上がったテーマを会場全体で共有。次のような意見が挙げられました。

「Scope3を中心とした課題は、コスト・教育・リソースの3つに集約される。解決には教育と啓発が不可欠。最初から完璧を目指すのではなく、長期的な目線で取り組む必要があるのでは」

「法律と現状がなかなか一致しておらず、ルールの解釈にも企業によって差があると感じる。法的拘束力も含めて、進むべき共通の道筋が示されるといい」

「サプライヤーにどう取り組んでもらうかが重要課題。一方的に伝えても活用されないので、双方向で情報共有しながら解決に向かう関係性が必要。そのためのリソース捻出がこれからの課題ではないか」

「CFP開示については、購入側と供給側が議論を交わしながらどうやって下げていくかが重要であり目的であるはず。算出して終わりではなく、継続的な取り組みが大切」


充実した交流の時間はあっという間に過ぎ、閉会の時間に。事務局の沼田より参加への感謝とともに閉会の挨拶を行い、「先進的な取り組みを共有できたと同時に、理想と現実が浮かび上がるものになりました。こうしたネットワーキングの機会はまだまだ貴重だと思いますので、個社から業界、日本、世界へと取り組みを広げていくためにも、ぜひ積極的に活用を」と呼びかけました。

GXスタジオは、参画企業同士がフラットな立場で自由に交流する場として、今後も定期的な開催を計画中です。参画企業のみなさまにお役立ていただけるよう、関心の高いテーマを取り上げてまいりますので、ぜひご意見をお寄せください!


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