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在日あれこれ

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在日韓国人三世として見たこと、聞いたこと、思ったこと、感じたこと。
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2021年9月の記事一覧

森本のおっさん

 民族学校に入る前、地元の韓国民団(在日韓国人団体)の支部の韓国語教室に通っていた。大きな支部ではないので子ども向けクラスがなく大人といっしょに学習するのである。先生は韓国に留学経験もあり韓国語教師としてのキャリアも長い在日韓国人の先生で教え方も上手かった。そんなかんじで、ぼろい支部会館の会議室で韓国語の基礎を学んだ。

 父親に文字を教えてもらっていたこともあって、入門ではなく初級クラスから勉強

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我が家の帰国運動

 久しぶりに祖母の家を訪ねた。大阪の北側、北摂地域でひとり暮らしをしているので、近くに用があったついでに寄ったのである。ばあさん孝行な孫である。母方の祖父母と父方の祖父がこの世を去ったいま、90近い祖母しか残っていない。幸いなことに、足腰以外は元気なので長生きしてくれるだろうと思うのだが、めったに顔を見せない孫がひとりで来たので後日「もう死ぬんかと思ったわ」などという話を父親にしていたそうである。

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日本語を生きた人たち

 もうすぐ100歳である。慶尚北道の山間部に住む、母方の祖父の姉のことだ。旦那さんも元気である。いちおう自分は民族学校で韓国語を学んできたが、母方の祖父の姉はあまりにも方言がきつすぎるため「マイルドな慶尚北道方言の通訳」を挟まないと話せないほどだ。いつも訪問すると手のひらに柿を持って包丁で切ってくれる。そして「食べなさい」とその切ってくれた柿を食べる。「食べなさい」は、母方の祖父の姉が、唯一知って

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韓国学校の青春②

 前回の続き。今回はカルチャー的なところというか、言語環境や学校行事などの紹介である。

特殊な言語環境 大学のとき、朝鮮学校出身の先輩たちによくしてもらっていたが、朝鮮学校卒業生は朝鮮語と日本語の混用がひじょうに多いことに驚かされた。「미안합니다 電車が止まってる때문에 少し遅れる입니다(すみません電車が止まっているので少し遅れます)」なんてのを聞いたときはたまげそうだった。女性は日本語で話すと

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韓国学校の青春

 高校生がもう10年前という年齢にきてしまった。じきに卒業して10年、入学したときの二倍の年齢、卒業してから二倍の年齢、と歳を重ねていくのだろうと思う。あのときフラれた女の子はもう結婚するそうである。

 中高生という多感な時期を韓国学校というなんとも特殊な環境で過ごしてしまった。特殊とはいっても、当の本人たちは普通の学校と比べようがないのだからそれが特殊かどうかはわからない。しかしあの環境がほか

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