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【エッセイ】夏の日常

夏の昼が嫌いだ。本を読んで、寝て、その繰り返し。

 夏の夜が好きだ。ベランダで深呼吸して出かける。電車や車の光を追いかけるように自転車で河原へ出かける。夏の草のにおいが好きだ。心に水が流れていく。


 国道沿いを走りながら妄想する。いつか緩やかな丘の頂上にある家に住み、窓を全開にして、八畳くらいの部屋に寝っころがって天井を眺めながら伴侶となる人とあれこれ話してみたい。できればくだらない事の方がいい気がする。イメージとしては私の好きな映画「ぐるりのこと」のラストシーン。

 土手に座り、目をつぶって音楽を聴く。いつも決まってHEATWAVEの「灯り」。憎んだり、悲しんだり、互いの遠さに悶えながらも一緒にいたいと願う気持ちを歌った歌。風が強くなってきたので家路に着く。

「ごらん この街にキラキラ輝く 暮らしの灯りがゆらゆら揺れているよ
そのいちばん小さな一つずつを僕と君は持っているじゃないか」



23時。腹が減って眠れなくなる。部屋の中をあさり、カレーを食べる。ラーメンは冬はいいが、夏は食べたくない。その点カレーは一年中食べたくなる、総合評価の高い食べ物だ。

100円ローソンで買ったカレーとご飯は常備してある。カレーを食べる時は温める時がちょっと手間を感じる。温めている際にラップがカレーの表面に張り付いて、密閉率が高くなり、ラップを取った時に湯気で火傷しそうになるし(学習能力がないと言われればそれまでですが)ラップにはカレーがくっついたままでちょっともったいない。


24時。むらっときた。スイーツ欲である。しかし、眩しいくらいに明るいコンビニの蛍光灯にさらされてまで欲しいとは思わない。店内の鏡に映った自分の姿なんて見た日には死にたくなってしまう。そこには猫背で腹が出た土気色のおっさんのような女が映っているはずだから。そんなときに便利なのが、家からすぐの家の前にある自動販売機である。だいたい買うものは決まっている。缶コーヒーとネクターとウーロン茶である。全部で350円。これらを部屋でちびちび飲むのが好きなのだ。ネットの世界を徘徊。少し仮眠。

夏と言えばかせきさいだぁ、だ。


深夜2時。TVをつける。ドキュメンタリーかNHK。その当時はやっていた音楽と映像が流れるいわゆる放送休止の状態が好きだ。何も考えずに身を委ねることができる。民放はテンションの高い通販番組ばかりで嫌いだ。もしもTVがいまいちならラジオ。ラジオはたいていNHK深夜便。やはり深夜三時台の音楽特集が好きだ。だいたい四時ごろ、うっすらと空が明るみ始めたあたりで睡魔をつかまえて眠る。

朝日はまるで、やたらと声のでかい生活指導の先生みたいなうっとうしさがある。目をつけられる前にバックれるに限る。目をつけられる以前に存在を気づかれもしない学生だったくせに。今でも学生を見ると後ろめたい気持ちになる。

Am7:30。働いていたころと同じ時間に目覚ましをかけても、だいたい二度寝してしまう。そんな時はたいてい嫌な夢で、じっとりと熱のこもった汗にまみれて目が覚める。あの人の冷たい目。あの人の罵声。あの時のいたたまれない空気。
追いかけられる、殺されかける。溜息が煙草の煙みたいだ。ベランダに椅子を出し、室外機に足を乗っけてぼーっとする。バカだ、バカだ、いましろたかしの漫画の主人公気取りか。パンク聞いて働け。生活でriot(暴動)!自分の自意識を破壊!破壊するのだ。destroy! 労働者こそ偉い。しかして、それはハローワークとは結びつかない。心の川はすぐに決壊しそうになる。

クレイジーキャッツみたいな気楽さが大事だよな・・。

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