グミが好き

金曜日が好き・ラジオが好き・銭湯が好き| #キナリ杯 特別リスペクト賞31「阿部広告太…

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金曜日が好き・ラジオが好き・銭湯が好き| #キナリ杯 特別リスペクト賞31「阿部広告太郎賞」https://note.kishidanami.com/n/nf4de4df3adec#fJ25b| #キナリ読書フェス【名作小説部門】最優秀賞

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拝啓、愛人のいた父へ

「パパ、愛人がいるの。」 僕が高校1年の時だ。母は泣きながらそう言った。愛人の「あ」の字を発した途端泣き崩れながらも、なんとか絞りだすように、言った。それは平日の真っ昼間。僕は不登校で、日中は母といつも二人きり。 兄と妹は普通に学校に行くまともな生活を送っていたが、僕はそんな生活が死ぬほど嫌だった。それなりに社交性があって、スクールカーストの中段くらいには属していて、友達という存在の素晴らしさを知っている人たちには、きっと楽しい世界なんだろうなと、社会からこぼれ落ちた底辺か

    • 『スケバン美玲』 第3話

      【本文】 ○山尾銀行・店内 呆然とする田宮と富永。 美玲、人差し指を田宮に向け、小さく手招きするポーズ。 田宮、慌てて金庫のある通路へ逃げる。 富永「総師範って……まじか」 ヨーヨーを拾う美玲。 富永に尋ねる。 美玲「なんでここにいるんだ」 富永「あ、DVD返せ!」 美玲「ふふ、気づかなかっただろ。なんかあったとき、置き去りにされちゃ困るからな」 倒れている川上が目を覚ます。 そっと、銃に手をのばす。 美玲と富永、それに気づかず、 美玲「でも必要なかったな。雑魚すぎ

      • 『スケバン美玲』 第2話

        【本文】 ○走る車・車内 高速道路を走る富永と美玲の車。 看板には『山尾』の文字。 富永、美玲を見て 富永「準備はいいか?」 美玲「はいよ」 富永「里子のもの盗むなよ」 美玲「当たり前だ。あんたみたいな悪党じゃないんだ!」 富永「金盗んだろうに……」 ○山尾銀行・表 黒いハイエース。 田宮たちを乗せた車が停車する。 田宮、里子、川上が降りる。 顔が見えないように、深々とフードを被っている。 田宮「行くぞ」 田宮と川上、店内へ入る。 里子は表で見張りをしている。 ○同

        • 『スケバン美玲』 第1話

          【あらすじ】 台湾出身の江美玲(こうめいれい)(25)は、『スケバン刑事』で日本語を覚えたことから、独特な喋り方をする。 彼女は日本で恋愛詐欺に合い、借金を抱えてしまったことから飛び降り自殺を図る。自殺を図ろうと屋上にいる美玲の下の階では、富永雄一(30)が会社の金庫から金を奪っている。しかし職員に見つかり逃げるように屋上に向かった先で、美玲と富永は出会う。 富永は美玲の自殺を思いとどまらせ、その後も美玲に一緒に行動するよう促していく。それは、美玲が富永の妹・富永里子(19)

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        拝啓、愛人のいた父へ

          『愛はときどきクルってる』 第3話

          【本文】 ◯オブラディビルヂング・教室 講師のジュードが元気よく話している。 ジュード「カツノリ式復縁術3!におわせ投稿!」 必死にメモを取る次郎。 ジュード「異性と遊んでる写真なんかを投稿しちゃうんです。相手の心をちょっとでもザワつかせたらこっちの勝ち!」 思い出したようにハッとする次郎。 奏のSNSの投稿を見る。 ジュード「でもこれ、本当に興味なくなったときにも使えるから、そっちに思われないように注意しなくちゃですよ!」 落胆してため息をつく次郎。 ◯英利大

          『愛はときどきクルってる』 第3話

          『愛はときどきクルってる』 第2話

          【本文】 ◯喫茶店・店内 向かい合って座る進と和枝。 注文をする二人。 進「じゃあアイスカフェラテ。あ、ガムシロ2つで」 和枝「じゃ、私もそれで。ガムシロも2つね」 進を見て微笑む和枝。 和枝「奏ちゃん、気を悪くしてないかしら?」 進「なんで?」 和枝「この前のこと……」 進「あいつは嫌なことは、次の日に残さねえからよ。酒みてえに。気にしてねえよ」 和枝「そう?ならよかった。大人げなかったから……」 進「いや俺も悪かったよ」 和枝「次郎にもちゃんと言っといたから。仲良く

          『愛はときどきクルってる』 第2話

          『愛はときどきクルってる』 第1話

          【あらすじ】 有名書道パフォーマーのレノン奏(32)。彼女は、有名書道家であった母の故・京子マッカートニーから、幼少期に異常なまでに厳しい書道の指導を受けたことがトラウマとなり、人から愛を受け取ることに恐怖を抱くようになってしまった。結婚を考えている鈴木次郎(31)にも、時折受ける愛を突き返してしまう。 次郎は鳥アレルギーを持つ鳥類学者で、ハクトウワシをこよなく愛している。ハクトウワシは生涯伴侶を変えない珍しい鳥。次郎も奏とそのようになりたいと願っていた。 しかし、奏の父親の

          『愛はときどきクルってる』 第1話

          『ファイティング・シンデレラ』 第3話

          【本文】 ◯日本美術大学・ホワイエ 文子、蛍原、田宮、高宮鈴音(21)を尾行している。 蛍原「あれがあの高宮鈴音ですか」 田宮「さすがキラキラしてますぞ。インフルエンサー」 文子「一人になったところを見計らっていくよ」 蛍原と田宮「ラジャー」 鈴音、一人で椅子に座る。 文子「今だ!行ってくる!」 文子、鈴音に声をかける。 ぶりっ子のように話す文子。 文子「あれーもしかして、鈴音ちゃんですかー?」 鈴音「あ、はい」 文子「やっと会えたー。ちょーうれしいですう」 遠く

          『ファイティング・シンデレラ』 第3話

          『ファイティング・シンデレラ』 第2話

          【本文】 ◯神社・参道(夜) 夜も更け、人もまばらになっている。 文子、早織、新田が歩きながら話している。 早織「いやー楽しかった」 新田「ね。アクシデントはあったけど、それはそれで」 顔を赤くする文子。 早織「文子も紘一郎と仲良くなったみたいで良かった」 新田「また遊びたいね」 文子「う、うん。また」 早織「文子も夏祭り好きになった?」  早織、笑みを浮かべ言う。 文子「もちろん。もとから好きだよ!」 早織「なら良かった」  ◯駅・改札前(夜) 文子が早織と新田に言

          『ファイティング・シンデレラ』 第2話

          『ファイティング・シンデレラ』 第1話

          【あらすじ】 UFOオタクで妄想癖の松本文子(21)は、孤児として育つ。 親なし、金なし、家なしの文子は、ラブホテルに住み込みながら、清掃員として働いている。 彼女は自分が不幸な人間だと思っている。大好きなUFOグッズに囲まれた部屋で、日夜、空想に浸りながら貧しい生活を紛らわす。 そんな文子の脳内が作り上げたパラレルワールドでは、少年のレオン・ラウド(16)とその守護霊サラ・レイス(25)が日夜悪魔と戦っている。悪魔の親玉を倒し、事故で亡くなった母親を救い出し成仏させなくては

          『ファイティング・シンデレラ』 第1話

          親愛なる君へ

          カムパネルラのような終え方をしたかった。 『銀河鉄道の夜』を読んで、なぜか高校時代の僕とを重ね合わせ、そんなことを思ってしまった。高校時代の僕が読んでいたら、間違いなくそう思うだろうと。 そしてその程度のことしか理解できないだろうということもある。 高校時代の僕は、絶望とともに毎朝を迎えていた。 無味無臭。モノクロの景色。パサパサの乾き切った心のフィルターから映る世界なんてそんなものだ。と何か悟ったフリをして、冷ややかに物事を見つめ、毎日神様に舌打ちをしていた。神様が目の前

          親愛なる君へ

          花は観手(みて)に咲く。

          花は観手(みて)に咲く。 花の美しさは、観る人の心の中に咲くということ。 つまり価値は、あなたが決める。 心に映る花は、人それぞれ。 色も、匂いも、大きさも、花言葉もそう、すべて。 そして誰も、それを否定することはないでしょう。 その花はすべからく美しく、唯一無二であるから。 生き方も、それに等しいと思うのです。 価値はあなたの心次第で、いかようにもなるものだから。 あなたは、あなたにしかなれない。 でもあなたは、あなたらしいから、すばらしい。

          花は観手(みて)に咲く。

          つながれる時代の、つながりについて

          「今日はもう、ボッコボコだな!」。神田川が近くで流れる、とある昔ながらの銭湯での話。生きのいいおじさんたちがジャイアンツの試合結果について議論しているのだ。きっと常連仲間なのだろう。僕は富士のペンキ絵を背に、口元ギリギリまで湯に浸かり、そんな会話を聞いている。他愛のない世間話が響き、勢い良く流れる湯の音と共に、ケロリンもカランコロンと踊り出す。それらは、極楽に浸る僕の耳にとても心地よく入ってくる。そんな銭湯が僕は大好きだ。 かたや普段の僕といえば、通勤など仕事の移動はほぼ地

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